保育の実践記録を募集中2016/08/12

同じ時期に小学館と学研から、保育実践の記録と共有に関する本が出ました。



森眞理(著) 「子どもの育ちを共有できるアルバムーポートフォリオ入門」 小学館、2016.4
秋田喜代美・神長美津子(監修) 「園内研修に活かせる実践・記録・共有アイディア~『科学する心』をはぐくむ保育」 学研プラス、2016.4
送られてきた2冊は表紙の雰囲気がずいぶん違います。
表紙の好みで選ぶと自分に合う本を選べると思いました。

ピンクの本の元ネタであるソニーの幼児教育支援プログラムでは
8月15日から9月13日まで論文を募集しています。
テーマは、「科学する心を育てる~豊かな感性と想像性の芽生えを育む~」です。
対象は、幼稚園・保育所・認定こども園(おもに3~5歳児の活動)

小学館の「新幼児と保育」でも、「わたしの保育記録」を募集中。
保育に関する実践記録エッセイの募集です。
対象は、幼稚園・保育所・認定こども園・児童館・特別支援学校・乳児院などの保育者。
締切は9月9日です。

このような実践の募集によって、
現実とファンタジーの世界を行き来する幼児期独特の実践や、
幼児の世界から現実の世界へと誘う実践など
多様な実践を読むことができるようになりました。

今年も素晴らしい実践を読めることが楽しみです。

教材や活動選択の根拠2016/08/04

ゼミの学生たちが絵本を選ぶブログを読んで、
選択の基準ってあるのでしょうか?」と質問をいただきました。

私が園を見学させていただくときに必ず写真を撮るのが各クラスの絵本棚です。
各クラスの絵本棚には、そのクラスの保育内容が現れます。


また、絵本棚には、保育の専門性も現れています。
よく勉強している先生は、絵本棚に置く本のバランスが見事。

でも、何千冊とある絵本、
それも学童向けや大人向け絵本も多いなかで
選ぶのは難しいですね。

保育は、教材を体系化した教科書や
教師向けのガイドもなく、
保育者の自由度がとても高い仕事です。
保育者にもし専門性がなければ、
「私がいいと思うから」「私が好きだから」と
自分の好みや主観で教材を選ぶことになります。

極端な例ですが、その昔、先生の好みで、
キャンディーズの歌ばかり歌わせるクラスがありました。
親なら何の問題もないけれど、園の場合はちょっとまずい。
また「子どもを喜ばせたい」と偏ったメニューを作る栄養士
がいたら困りますね。

保育者は、大切な子どもたちを預かり
大切な乳幼児期の教育を行うため、
園でどんな教材を選ぶか
どの活動を優先するか、
専門職として選択の基準があります。

保育には、
「遊びを通して行う」「環境を通して行う」という
二つの大原則があります。

その他に方法原理として、
「発達の原理」
「経験の原理」
「自発性(主体性)の原理」
「個性化の原理」
「関係性の原理」
「相互作用の原理」
など、研究者によって分け方が異なりますが原則があります。
そしてこれらは、指針の「保育の原理」や、要領の「幼児教育の基本」に
文章で示されています。

園での時間には限りがあります。
そのため保育者は、
発達に合うもの、直接体験、身体感覚が伴うもの
自発的・主体的な活動、一人ひとりの個性が発揮できるもの、
人や物との関わりが生じるものなど、
保育の原理に合ったものを優先することになります。

指針の保育の目標には
「子どもが現在を最も良く生き、
望ましい未来をつくり出す力の基礎を培うために」
とあります。

大人が提供する文化である絵本や歌も
繰り返しその文化にふれることで何を経験するのか、
その後、どんな遊びが広がるのか、
そこで子どもたちがどんな価値を身につけるのかを
保育者は想像して選ぶことになります。

保育環境の研究でも、
意図的に環境を構成している園では、
保育者に「なぜこの人形ですか」
「なぜこの絵本ですか」と質問すると、
専門知識に基づいて根拠を説明することが特徴的でした。
「なぜ、その絵本ですか?」と尋ねられたときに、
「子どもが喜ぶ、好き、うける」以外の根拠がどれだけあるか、
そこが保育の専門性だとインタビューで学ばせていただきました。

でも最初は、
この本がこの発達段階の子どもに合っている
なんてわからなくて当然ですから、、
学生には、まずは学習を薦めています。
「保育と絵本」(瀧薫)など質の高い参考資料を読むことや
こどものとも社のカタログの年齢別お薦め絵本を参考にして
絵本をまずは読んでみることを薦めています。

こんな感じで質問の答えになったでしょうか?
ご質問、ありがとうございました。

研修の環境構成2016/07/17

仕事柄、ホテルに泊まっても、お店でご飯を食べていても、気になるのが環境構成。
ホテルでゆったりと朝食、なんてときにも、
「ここの動線を変えると人の流れが変わるなあ・・・」、
「あそこは並びなさいというアフォーダンスだな」
なんてブツブツ思い、くつろげません。(人のことはよくわかる、悪い癖です)

最近、写真を撮り始めたのが、研修会場の環境構成です。
職務から離れた集合研修は、翌日からの学びと保育の質向上のきっかけ。
全員が目を通すであろう研修案内の内容が、すでに研修です。
研修受講者への思いをもって運営されている研修会は、
入口の案内、イスの距離や向き、演台の位置、空調や照明など環境の構成に気を配っています。
保育室に保育者の思いが現れるように、研修会場にも運営者の思いが現れます。

ある市では、運営を担当する方が無認可の園にも案内を配り、
当日は、参考資料とともに
先生方の手作り玩具が会場にずらりと並べられていて、
(地域全体の保育の質を高めていこう)という責任感の強さに感動しました。
休憩時間には、それらの写真を撮る先生方が多くいらっしゃいました。
(私は写真を撮り損ねました。開始前に撮っておけばよかった・・・)
来場者への心遣いにあふれる研修運営にふれると、会場を後にしてからも感動が心に残ります。

ロビーのウエルカムボード。大分のこどものとも社さんの研修会です。


種類別に並べた玩具やごっこ遊びのコーナー、保育環境の写真の展示もありました。


保育環境を改善するために必要な資料を並べていただいています。

研修は、翌日からの保育を変えるきっかけです
研修講師にできることは、専門職として専門性を自ら高める、そのお手伝いにすぎません。
そのため、研修で新しい人、新しい参考資料と出合うことが欠かせません。
研修内容に関連する参考資料は、研修会場で参加者が手に取って選び、持ち帰れるようにしたいものです。

様々な園の先生方が出合い交流するつながりをつくる工夫は、日本保育協会さんの研修会が参考になります。
300人や500人の研修会であっても、講師には演習を必ず入れるように依頼があります。
司会の方が、講義開始前にお互いの自己紹介を促して、場をあたためてくれることもありがたい。
研修で人がつながりあい、お互いに高め合うことを大切にした運営を行っておられます。

私も、自分が講演会を運営するときには、本屋では目にしにくい参考資料を会場に並べました。写真は16年前。
 保護者向けの「子育てが楽しいまちってどんなまち?」講座で、会場に情報を展示しています。


「私たちひとりひとりにできること」を参加者にポストイットに記入してもらい、報告書を作成し関係各所へ配布しました。

研修会の主役は、参加者。
運営者と講師は、参加者のエンパワメントをめざして講座をつくります。
保育者が、子どもと保護者のエンパワメントをめざしていることとも似ています。 

研修内容は、翌日からの保育の質を高める内容と方法を考えます。
保育で、絵本や新しい活動を提供する際には、
子ども自身の経験と、翌日からの遊びへの影響を考えることと同じです。

研修参加者への思いを、研修運営として展開する先生方は、
きっと子どもの保育でも、同じように思いを形にしていらっしゃるのだろうと想像します。

オープンエンドの活動を考える2016/06/23

今年も、幼稚園教育実習の訪問の季節がやってきました。
実習訪問は、大学の教員にとっては、現場から様々な学びを得る時間でもあります。
学生の指導を行うことが最も重要な職務ですが、同時に園長先生のお話を伺い、各クラスの環境や先生方の指導、壁に飾られる絵などから、多くのことを学びます。

「父の日」の絵で、非常に個性的なお父さんたちの絵が並んでいるクラスと、同じようなお父さんの絵が並んでいるクラスがあると、(おお!指導によって、ここまで子どもの絵が変わるのか!)と心の中で大興奮していたりします。

学生が実習案として考える工作も、指導案の内容によって、できあがりが同じものになるか、違うものになるかがある程度予測できます。全員が同じ作品になるか、違うものになるか。終わりが閉じているか、開いているか。最終的に「できたー」と言うものができるだけ違うものになる活動や、終わりは保育者の予測がつかない活動ほど、子どもが考える、工夫する余地が多いと考えることもできますね。

実習で、指示をした通りに子どもたちが行って、スムーズに進んで、誰も何も話さず、トラブルも何もなく終わる活動は、たぶん子ども自身の経験は少ない活動。子どもが選んだり決めたり試行錯誤したりする活動では、とまどうことや迷うことも起きます。また友達との関わりが多ければ多い活動ほど、トラブルも起きて大変です。だからそういうことがあったからといって落ち込まないでほしいと思います。

幼児教育では、拡散的な思考を使う活動、開かれた問いを多く取り入れてみたいものです。そして、工夫したり探求し続けることを苦にしない学習者を育んでほしいと・・・ああ、これは大学教育でも同じですね。


大好きな散歩道がついに舗装され、土の上を歩く場所が減りました。残念。

コラボレーションからはじまる園2016/05/28

チャイルドコミュニケーションデザイナーの平井さんよりご案内をいただき、今年4月、足立区に開園したばかりのレイモンド花畑保育園のお披露目イベントへ出かけてきました。

道路の向かい側は、広い自然公園です。


廊下には親子のベンチ。(を意図したけれど子どもが入って遊び場になっていると設計者は嬉しそうにお話くださいました)。設計者の石田さんとチャイルドコミュニケーションデザイナーの平井さんのトーク、ワクワクしました。


さっそく廊下では、芸術家たちによる作品展が行われていました。お気に入りの作品が決まっていて、お迎えに来たお母さんに抱えてもらって毎日じっくり見て帰る子どももいるそうです。


保育室は、開放的な窓の部分と、閉じた壁とのバランスが絶妙です。オープンすぎでも閉じすぎでもない空間だと、イキイキとした活動と、落ち着いた活動の両方が可能になります。窓の向こうは近隣の人が通る道路と住宅です。下の窓から適度な交流も生まれるのだとか。


保育室は、腰の高さまで木の板が貼ってあるのをよく見かけますが、あれは汚れ防止なのだそうです。家庭では床まで同じ壁紙が普通ですね。この園の設計では、あえてこのデザインにされたのだとか。子どもたちがこの空間にどんな色彩を加えていくのか、楽しみです。


名古屋のレイモンド庄中保育園は、オープンスペース的なつながりのある空間設計でしたが、こちらは、各保育室は閉じた空間、そして上の写真のような、ひろがりとつながりのある空間が多く設けられていました。プライベートゾーンとコミュニティゾーンとでも言うのでしょうか、設計では、閉じた空間と開いた空間の両方を組み込んだことが説明されました。最近、改築、新築された園では、広い廊下や縁側的な空間をよく見かけます。空間も、玩具も、汎用性が高い方が、子どもも保育者も創造性を広げることができますね。

設計者の石田さん、チャイルドコミュニケーションデザイナーの平井さん、地域の人、子ども、保育者、保護者のコラボレーションによって、建物がコミュニティとしての活動を始める、そのスタートを見せていただくことができました。ありがとうございました。

絵本選びの根拠2016/05/19

ゼミで、絵本選びのワークをやってみました。
日本保育者教育学研究会の授業実践研究会で、教えていただいた授業実践。3年と4年に分かれて20分ほど。


4年生のワークは同じ物語で出版社が異なる絵本。お題は、「幼稚園・保育園で優先的に読み聞かせしたい順番に並べる。そしてその根拠を説明する」です。もちろん正解はなし。さあ、どの順番に並べるでしょうか。

(左上から順に)

まつい ただし, あかば すえきち、ももたろう、福音館書店、1965

いもとようこ、ももたろう、岩崎書店、2001

柳川 , 水端 せり, 宮尾 岳、ももたろう、永岡書店 1998

市川 宣子, 長谷川 義史、ももたろう、小学館、2010

松谷 みよ子, 和歌山 静子、ももたろう、童心社、2006





こちらは3年生がやったワーク。4歳児クラスで読みたい絵本はどれか。5歳児クラスでは?。その根拠は?もちろん正解はなし。すごく悩んでいました。

石井 桃子, 赤羽 末吉 、したきりすずめ、福音館書店 1982

いしい ももこ, あきの ふく、いっすんぼうし、福音館書店 1965

時田 史郎, 秋野 不矩、うらしまたろう、福音館書店 1974

瀬田 貞二, 赤羽 末吉、かさじぞう、福音館書店 1966

平野 ,太田 大八、やまなしもぎ、福音館書店 1977



学生は、左からこんな順番で並べました。根拠として「言葉にリズムがあっておもしろい」、「詳細に書き込みすぎているから子どもが想像する余地が少ない」、「ストーリーが違う」、「本が小さい、家ならいい」など。絵や言葉、ストーリーに着目して根拠を説明。もっと時間があれば、違う意見も出たかもしれません。
「子どもが喜びそう」、「絵がかわいい」、「絵がはっきりして見えやすい」という理由は出てきませんでした。学生は、アニメ絵本を一位か二位に選ぶと聞いていたので、ちょっとホッとしました。

保育者が読み聞かせをする絵本は、子どもに影響を与える重要な文化財です。また絵本の言葉は、保育者の言葉となり、子どもの言葉となります。保育者が何千冊の絵本のなかから読み聞かせの絵本を選ぶのは、料理人で言えば、世界中の産地の中から必要なお肉を選ぶって感じでしょうか。

教えていただいた授業実践では、同じタイトルの絵本を探すことをグループの課題にしていました。また100冊の読み聞かせ絵本リストをつくる課題を課している大学もあるそうです。他の先生方の教育実践はとても参考になります。


子どもからはじめる保育実践2016/05/12

保育学会でお声掛けをいただいた皆様ありがとうございました。一年分のエネルギーをいただきました。
大豆生田先生のあの黄色い本に引き続き、赤い本が出ました。もうお読みになりましたか?勉強熱心な園長先生は必ず手に入れている黄色い本。先生方とお話していると、「あの黄色い大きい本」で通じるのがすごい。


大豆生田啓友「『対話』から生まれる乳幼児の学びの物語」学研、2016

表紙は、目にまぶしい赤に帯は真っ青。う~ん、やはり原色が保育界では好まれるのでしょうか・・・。


表題通り、子どもたちとの対話のなかから展開していく保育の実践を読むことができます。
レッジョ・エミリアの実践を学んでいらっしゃる先生方が多いからか、自然の素材、廃材を使った造形表現への展開を多く読むことができます。また、子どもの豊かな言葉を引き出すという点、領域環境(環境認識と活用)に関する視点を得ることができる本です。今、一斉保育を行っている園でも、取り入れやすい実践や環境の工夫が紹介されています。

実践の研究や共有には写真は不可欠。実践の流れがわかりやすいですね。

「一斉保育」「お楽しみ会保育」は広がりやすいものですが、「教育とケアの意図をもった環境を通した保育」は、なかなか広がりにくいものです。小学校で教科書を使った授業よりも総合学習の方が指導が難しいことと同様ですね。

保育を着実に変えている園のプロセスを見ていると、次のような段階を経ているように思えます。
①一斉保育⇒②環境(園庭・保育室)を充実させる⇒③子どもが主体的に遊ぶ姿を見て子どもをよく知る⇒④子どもの姿から環境をつくることを試行錯誤する⇒⑤保育の実践を子どもと一緒に展開する。
この本を読んで、①⇒⑤から②③④へと行き来する可能性を感じました。

保育を改善している園には、子ども観と保育観をしっかりと持つ中心的な人(多くは園長先生)がいて、保育者同士が語り合うしかけをつくり、保育者に対しても継続的に子ども観・保育観を語り続けていることが、共通して見られるように思います。

他者の実践を読むと、様々な気づきが生じます。園によって、子ども、保護者、保育者、保育室の広さ等状況は異なります。遊びや表現の素材として何を中心に用いるかは、保育時間や空間、保育者の現状によって選択が異なるでしょう。日本の保育では、あるテーマを歌や身体での表現、鬼ごっこなどの集団遊びへと展開することが特徴的だとも気づきました。
写真がたっぷりでわかりやすく編集されたこの本は、他者の実践のどこが優れていて、どこを活用できるか、話し合う材料にもなりそうです。


この黄色い本が、研究室で見つかりません。誰か、私がどこへ置いたのか知りませんか・・・?

子どもの声がうるさいと、2016/04/28

子どもの声がうるさいと保育園が開園できなかったニュースがありました。誰かを非難する気持ちにはなれないけれども、眠れなかったので、できることを一人ブレーンストーミングしてみました。保育者として「うるさい!」と怒鳴られた経験、私もあります。苦情ほど保育者が疲弊するものはありません。空想が混じっていますからつぶやきカテゴりーに入れます。

保育園・幼稚園等の子どもの声が、少しでも問題にならないように変えられること、できること。(個人的な発想)

保育以外のこと。
●コンクリートジャングルでは声は響く。森のなかでは子どもの声はうるさく感じない。より自然に近い吸音性や吸水性の高い道路等の開発。道路は、タイヤが通らない真ん中の部分は土にしてしまう。ビルやマンションを建てるときには、その階数分の木を周囲に植えることを条例化(5階建ては5本、30階建ては30本)。人が暮らしやすい景観と音環境を考えてまちづくりをする。人の暮らしの質を高めるまちづくりのための法令や研究促進・普及することだけを行う部署を設置。
●長時間労働、深夜労働をできるだけ減らす政策。疲れ切っている人、睡眠不足の人、夜勤で昼間寝ている人が、子どもの声や大人のおしゃべりをうるさいと感じてしまうのは仕方ない。必要以上の深夜勤務、長時間労働の人が減るような社会を考える。私を含めみんなが少しずつ不便なことを受け入れる。働く人を大切にしている企業とサービスを選ぶ。フェアトレード商品のように誰かの犠牲の上に成り立たないサービスを選べるようにする。
●住宅はもっと壁や床を厚くする。人が幸せに暮らせる住宅を促進する。
●公営住宅は駐車場を外側にして住宅の周囲は芝生で緑たっぷりの庭にする。経済的に厳しい家庭の子どもが家の周囲で安全に遊べるように優先的に整備する。
●高齢者が健康で外に出られるまちづくり。少し体が不自由になるだけで外に出られない車中心のまちづくりを、歩行者が安心して歩けるまちにする。都市部と住宅街は一方通行を増やし車は不便になるようにする。歩きたくなる、座って子どもをながめていたくなる居心地の良い場を増やし、人が自宅にこもらないまちをつくる。
●科研に暮らしの質枠づくり。みんなが幸せに生きられる社会をもっと追及する。
●事情がある人以外は、家の直前まで車に乗るという発想を止める。健康な人は今よりも少しずつ歩く。みんなで少しだけ欲張ることをやめる。

コンクリートジャングルでは、赤ちゃんの泣き声と子どもの声は過剰に響く


保育に関連すること。
○クラス規模や園規模の上限を設定。園規模が日本は大きすぎ。集団が大きくなれば音が大きくなるのは当然。
〇園庭に土をたっぷり入れる。園庭は凸凹を多く設けて吸音効果をあげる。木を植える。木材の園舎を促進する。緑化促進は保育園・こども園・幼稚園を優先する。
〇吸音材を入れる。助成金も。乳幼児期に投資する。
○長時間保育であれば早朝から夜遅くまでにぎやかになるので地域の人は苦しいはず。幼児期までは、親子がゆとりのある生活時間がもてるようにする。子育て中の育児時間取得を促進。一人ひとりが30分早く帰る。
○どんなに質の高い保育をしても、苦情は生じる。地域保健師のように、地域ソーシャルワーカーを配置する。学校・幼稚園・保育園・認定こども園・子育て支援施設の先生方が、苦情の相談をしたり、地域との調整に助力してもらえるソーシャルワーカーを行政に要請できるようにする。
○市役所の担当課は、市民・保護者からの苦情を園に伝達する際には、受け止めきれなかった感情を園長先生にそのまま伝えないように配慮をする。市職員→園長→保育者→子ども、とストレスが伝播しないように。

保育内容に関すること。
〇保育者は、先生が大声を出さない保育をめざす。保育の質が向上すれば、先生の声の大きさと質が変わるはず。
〇子どもの声の質が違えば、うるさいと感じる比率は変わるかもしれない。保育者が子どもの声の質、話の質に関心をもつ。乳児クラスは喃語の量と質、1~4歳児クラスは会話の量と質、5歳児は話し合いの量と質に関心をもつ。誰もが不快に感じる子どもの声は、泣き声や叫び声。飛行機等で赤ちゃんが泣くのを不快に感じるのは、その子が苦しんでいるから。奇声を心地いいと感じる人も少ない。気持ちのよい声が聞こえる保育を目指す。
〇保育者が子どもにお楽しみを提供する「お楽しみ会保育」は、お誕生会のみにする。保育者が、子どもを喜ばせ興奮させるお楽しみを提供する園では、あそび歌、体操などをCDやマイク、笛などを使って園庭等で行うため過剰な音が発生する。幼児期に必要な動きが含まれ子どもの運動欲求や表現欲求が充足されるような活動を選ぶ。子どもだましのお楽しみ活動ではなく、教育とケアの意図をもった保育内容を選択する。
〇原色やキャラクターを飾った保育室で、子どもたちを喜ばせ興奮させる「遊園地のような保育環境」を変える。子どもが環境との相互作用のなかで学びを得られる教育とケアの意図をもった保育環境をつくる。
〇意図的な環境構成を行っていない園では、子どもは年長でも走り回るだけだったり、戦いごっこに終始するため声が大きくなる。教育とケアの意図をもって保育環境をつくる園が増えれば単に大騒ぎするだけの子どもは減るはず。
〇年長クラスには、子どもが根気強く集中し達成感を得られる環境と活動を入れる。
〇「欲張ること、誰かを犠牲にして自分が利益を得ようとすることは、人として恥ずかしいこと、悪いことだ」と感じる感性を幼児期に育む。昔話や、勇気とまじめさなどをもった人間として魅力のあるモデルが登場する文化財を提供する。今の格差社会を繰り返さないために。
○保育者養成校の教員は、「お楽しみ会保育」や「遊園地のような保育環境」を教えない。養成校の教育内容を、根拠:専門知識に基づく内容にする。
〇保育団体が、質を担保した研修を行う。研修会で「お楽しみ会保育」を地域に広げない。
〇保育雑誌、保育関係の出版社は、「遊園地のような保育環境」、「お楽しみ会保育」を保育者に勧める情報を発信しない。専門知識に基づく保育情報を提供している出版社は、多くの保育者が読めるように宣伝に力を注ぐ。
〇休み明けは子どもが荒れる。休日の運動不足、欲求不満を発散するかのように叫び回る子どもがいる。休日に家庭でDVDやテレビゲーム以外の遊びができるように、玩具の貸出や情報の提供を行う。朝からテレビを見てそのまま車で来る子どものなかには朝は走り回り落ち着かないこともある。子どもの声には家庭の経験が現れるので、家庭と一緒に考えることも必要。
〇公立の子育て支援の場、幼稚園・保育所は、休日の子育て支援、ホール・園庭開放などを行う。
〇質が確保された保育を行っている園は、保護者の保育体験の機会を増やす。家庭で過剰な刺激を与えすぎないために、子どもがもつ価値観を大人が知る機会をつくる。
〇市長さん、議員さん、市役所の保育課職員等の保育士体験の機会を設ける。(北九州市の議員さんはやっているそう)
○地域の自治会長さん、民生委員さんとの関係を深めておく。地域の方との交流機会を設ける。
○地域の回覧板に園のお便りを入れてもらう。
○苦情は園長や保育者が抱え込まない。保護者に、「こんな苦情があります」と情報を公開していく。
○理不尽な苦情で園長や保育者が疲弊しないように人格障害と精神疾患に関する知識を身に着けておく。
○鬼ごっこのような興奮性の高い活動、遊びのなかで大声を出すことが、幼児期の発達に必要であることを、わかりやすく保護者に伝えるお便りを出す。(これは私の仕事ですね)

保育プロセスの質を高める2016/04/14

熊本の先生方、子育てひろばの皆さん大丈夫でしょうか。落ち着きませんがp研でブログに書くと書き込んでしまったので書かないと仕方ありません。

保育実践に新しい視点をもたらす本の紹介です。
「『保育プロセスの質』評価スケールー「乳幼児期のともに考え、深めつづけること」と「情緒的な安定・安心」を捉えるために」イラム・シラージ+デニス・キングストン+エドワード・メルウイッシュ著
秋田喜代美+淀川裕美訳、明石書店、2016

全米乳幼児教育協会の「乳幼児の発達にふさわしい教育実践」も貴重な情報を提供していますが、本が小さく読みにくいので紹介しませんでした。こちらはB4で、一つの項目が見開きで読みやすさにとても配慮があります。埋橋先生が翻訳されたエカーズ等と、形式は似ています。

この評価スケールの特徴は、サブカテゴリ―の項目です。

1.信頼・自信・自立の構築
2.社会的、情緒的な安定・安心
3.言葉・コミュニケーションを支え、広げる
4.学びと批判的思考を支える
5.学び・言葉の発達を評価する

学びとケアのアウトカムに沿ってカテゴリーがつくられ、
「何のために」「なぜそうするのか」を毎回目にしつつ
具体的な実践を評価する項目が並んでいます。

各項目の実践を評価する指標は、こんな感じです。
【サブスケール1】信頼、自信、自立の構築
項目3 小グループ・個別のかかわり、保育者の位置取り
とてもよい 7.2 すべての環境を通して子どもたちの学びの足場かけをすることに十分な時間をかけている。また、子どもたちの学びの足場かけする際、自分がかかわっている子どもたちの姿に集中している。その一方で、他の子どもたちに対しても気持ちを向けていて、応答的である。

他者が保育を観察し実践を評価するためのスケールとしての本ですが、
私がもし保育実践者として使ならば、
評価チェックなどはしません。たぶん。
①各項目の「よい」「とてもよい」実践を読んでいく。
②信頼の構築だったらもっとこんな実践もある、とカテゴリーを見ながら本に書き込んでいく。
③気がつくことをどんどん空欄に書き込んでいく。
そういうノート的に使っていくと思います。(もちろんその後全部読みますが)

チームで、実践を高めるために読むときには、
①まず本を読む前に、「信頼、自信、自立の構築」というテーマで、グループに分かれて
「不適切な実践」と「とてもよい実践」として思いつくことを模造紙などに書き込んでいく。
②書き終わったら他のグループの内容も互いに読む。
③本に書かれている、不適切ととてもよいの内容を読む。
④気づいたことや、疑問点、意見などを交換する。
こんな感じで使うかなと。
「この本との対話で私たちの新しいスケールをつくろう」という意識で使うと思います。

このスケールは関わりの質を振り返りやすい内容です。
関わりの質は、構造の質に左右されます。
もしも関わりの質の問題が大きいと感じた場合は、
まず物的環境を整え、時間の環境を変え、
クラス編成、グループ編成などを変えることが最優先かと思います。

スケールの内容、後半の遊び、発達のまとめ部分も含め、この本を読むことで、日本の先進的な保育実践のレベルがいかに高いかを再認識させられました。日本の素晴らしい実践を、すべての園の質確保のために使える方法はないものでしょうか。

赤ちゃんの運動発達と育児用品2016/04/08

標記の研究について、アフォーダンス研究者の細田直哉先生から教えていただきました。
8か月の赤ちゃん(N=43)を対象に、赤ちゃん用品の使用と運動発達との関係を調査した研究です。

赤ちゃん用品として使われるジャンパー、スウィング、シート、チェアーなどは、使用時間と運動発達には負の相関がある。明確な相関が見られなかったのは、ベビーサークルと歩行器。正の相関が見られたのはソーサーという赤ちゃんが動くように作られた用品だったという研究です。
(Abbott,A.L. and Bartlett,D.J.(2001),Infant motor development and equipment use in the home,ChildCare,Health and Development,27,pp295-306)

サンプルは少ないけれども結果は実感と一致。能力は練習の機会があればあるほど伸びるのは、誰でも体験的に知っています。能力を獲得した大人でさえ、使わなければ能力は落ちます。まして、日々爆発的に運動能力を発達させていく赤ちゃんが自発的な運動をしない時間が長ければ長いほど能力の獲得に影響が出るのは、ナイーブな感覚と一致しますね。


乳児の前期は、仰向けが最も全身を自由に動かすことができる姿勢。声をかけられ全身で喜びを表しています。
人間だけが、子どもを仰向けに寝かせて、目を見つめ、手に物を持たせます。 すごいことです。



うつ伏せで動けるようになると、全身を使って環境を探索。ずりばいで動くときには、全身の皮膚や筋肉から脳へと刺激が送られているのでしょうね。頭のあたりを見つめると、感覚運動野がスパークしているのが見えるようです(笑)。

この時期、環境を探索している子どもは、(おっ!)(あれ!?)と常に新しい発見をしているので、目がキラキラと輝いています。乳児クラスの保育者は、学びのファシリテーターとして、どもが、おっ!と、思わず這い出していくように環境をつくります。

どんなに豊かな物的環境や自然環境があっても、赤ちゃんをお座りさせる大人がいると、とたんに子どもは探索活動ができなくなります。乳児クラスの保育者が運動の重要性を意識していることが大切ですね。
家庭は家族みんなの生活の場ですから育児用品を使うことはあります(家庭では大人の都合だって大事です)が、子どもの教育と養護(ケア)の場である認定こども園と保育園では、育児用品や育児DVDを使用しなくてもよいように時間と空間の環境をつくっていきたいものです。