子育てひろばをはじめよう~ここみ広場2012/02/03

『子育て支援と心理臨床』福村出版に、浜松学院大学で子育てひろばを始めた経緯について、書かせていただきました。私がこのテーマの第一回目。緊張します。


子育て支援と心理臨床


大学に赴任したての新米講師が、大学のお作法も何もわからないままに、先生方や職員の皆さんに助けていただきながら保育実習室をつくった経緯と、知り合いがほとんどいない土地で、ボランティアグループをつくった経緯を綴りました。グループは3人いればいい、とこれまで何度も人に語ってきた私ですが、最初はただ一人のネット友だち、大隅和子さんと二人だけ。名刺を片手に挨拶回りに歩き、講座を開き情報提供をしていくうちに、ひろばを運営できる団体ができあがりました。

この中にも書かせていただきましたが、私が、直接子育てひろばを開き支援を行おうとしたならば、とても今のような地域と人とのネットワークはできあがらなかったでしょう。中心メンバーの河村浩美さんや大隅和子さんをはじめ、志の高いメンバーが集まり、皆が地域の団体に出向き、人と会うことによってネットワークを構築していきました。
皆さん、ほんとに本をよく読む勉強家。そしてあちこちへ出向いて人と会っています。

自分から動いて関係をつくっていく、これが優れた子育て支援を行う人がもつ資質なのかもしれません。

ここみ広場のブログ
http://kokomi.hamazo.tv/

「百聞は一見にしかず」研修2012/02/06

保育者の環境構成技術の研究も、もうすぐ三年になります。昨年は、環境構成技術の異なる研修を実施し下位の技術と知識を析出しました。結果は5月の保育学会で発表します。(今回も、青い画用紙のネズミちゃんが看板を持っています)

環境構成の前提となる知識の獲得には講義と演習が必要ですが、具体的な方法のヒントを得るには、講義よりも他の園に行くことが一番!ということで、いつも、あちこちの園を御紹介させていただいています。
今回は、研修方法の研究のために浜松市の愛恵保育園さんにご協力をいただいて、3園の合同研修会を実施させていただきました。

まず最初に、挨拶と年齢別に分かれての自己紹介。
次に、二つのグループに分かれて、各クラスの見学へ。各クラスでは担任の先生に、できるだけ環境に込めた意図をお話いただくようにお願いしました。


                  0歳児クラスの説明クラスをする担任の先生と園長先生(手前右)
                

                  これいいね~、とあちこちで写真を撮影される姿がありました



                 2歳児クラスでは、若い先生方も堂々と説明をして下さいます


                  お茶を飲みながら、懇談する3園の先生方



見学を一時間、ワークショップを一時間と予定していましたが、実際には、とてもとても6つのクラスを2時間見ても、まだ見足りないという雰囲気でした。見学の後、思いがけず愛恵保育園の先生方よりお茶とお菓子を出していただき、自然におしゃべりタイムとなりました。
この後、申し訳程度にワークショップをさせていただきましたが、ワークショップよりも見学の後に、保育を語り合う交流の時間が大切であることがよくわかりました。見学2時間、交流30分で、全体で約3時間の研修が適切ですね。

事前に研修内容をお伝えしていなかったにも関わらず、一年目の先生もしっかりと保育を説明される姿に感心いたしました。

松田園長先生、説明してくださった先生方、そして見学された先生方、貴重なお時間をいただき、また丁寧にアンケートへのご回答をいただきまして大変にありがとうございました。

子どもが遊べる大学!?2012/02/13

今日から実習週間です。保育園、幼稚園の先生方、学生たちが大変にお世話になります。

3年のゼミ生、HさんとMさんが、二人でまちづくりの夢アイディアコンテストに応募。
入賞は逃しましたが、その内容がPDFファイルでコンテストのホームページに掲載されていました。(わたしも、そのページで、初めて詳細な内容を読みました・・・なるほどねえ。)


建設コンサルタンツ協会協会 九州支部 夢アイディア まちづくりの提案
 子育て環境
まちづくりコンテスト



元々はゼミで、環境を構成する要素である「動線」を理解するために、「車」を保育者、「大学生」を子ども、「校舎」を棚に見立て、子どもの遊びや生活の邪魔をしないスムーズな動線のワークを行ったことがきっかけでした。
素敵なデザイン画ができていたので、こんなコンテストがあるよと伝えていたら企画書にしていました。立派!

学生たちには、保育園や幼稚園の中だけではなく、子どもが育つ地域全体や社会の問題に目を向けることができる保育者に育ってほしいと願ってきましたが、今の自分にできることをできるだけ取組もうとする姿勢、とても素敵です。

そして、コンテストに応募した作品すべてをPDFファイルで公開する建設コンサルタンツ協会の心意気、素晴らしいではありませんか。
さまざまな夢アイディアを読みながら、親子が安心して歩けるまち、子どもが遊べる地域をつくる努力を、大人として放棄してはいけない、と改めて思いました。Hさん、Mさん、ありがとう。

新居町と富士宮市へ2012/02/17

実習のたびに、新しい駅に降り立つことができる、これって実習訪問担当者の特権かもしれません。

初めてのまちへ降り立つと、「しらないことが~おいでおいでしてる~♪でっかけよう~くちぶえふいてさ~♪」という歌がいつも浮かんできます。(この歌を知っているあなたは同年代?)
駅から降りると、思わずスキップをしたくなりますが、スーツですからスキップはしません。

火曜日は、新居町駅に初めて降り立ちました。
電車を降りて出口に向かう階段を上ると、出口が右と左に二つ、うん?どっちに私は出たらよいの?と地図をもって迷っていると、知らないおじさんが、こっちだよと一方を指さします。「えっ?どうして、このおじさん、私が行くところを知っているの?」と不審な顔をしていると、「こっちは競艇場」と、競艇場方面へ歩いていきました。
「ありがとうございました~」と私が叫ぶと、片手をちょいと上げ、そのままスタスタ。おじさん、かっこいいなあ。

ちょっとした親切にほっこりしながら雨の中を園に向かって歩いていきますと、こんな看板が。
                    関所の跡!? 晴れていたら行ってみたい。

                  新居町は合併して湖西市になったのでした。


                       いにしえがしのばれる景色です。

水曜日は浜松市内。

                  朝のバスセンターで、浜松名物うなぎ雲を発見。(これはうそ)


木曜日は、富士宮市。
初の身延線!カメラ、カメラ・・・とちょっと興奮していますが、私は鉄子ではありません。
静岡まで新幹線、静岡から富士駅まで東海道線、富士駅から身延線へ。
                  身延線、西富士宮行きへ乗ります。


                  市内には、豊富な水量の川が流れます。

                   富士宮は土が黒色。 東部は、関東の土ですね。

                   静岡県西部浜松市の三方原台地の土はこんな色。


晴れていたなら、ここにど~んと富士山の写真が載るはずなのですが、残念。
                  代わりに新幹線から見た富士山を。


学生たちは、先生方に見守られながら実習に取組んでいました。教育実習は今日まです。お疲れ様でした。
保育実習のみんな、あと一週間、体調に気をつけてがんばって下さいね。


             

追加情報。保育実習訪問。天竜浜名湖鉄道 気賀駅です。
                  レトロな駅舎です。

                 静岡県内は、どこも観光地!?

しないといけない仕事がたまってくると、なぜかブログを更新する悪い癖・・・はい仕事します。     

児童福祉施設最低基準の条例2012/02/22

地方自治法が改正され、平成23年4月より施行されます。
総務省 地方自治法の抜本見直し
http://www.soumu.go.jp/main_sosiki/jichi_gyousei/bunken/minaoshi.html

この総務省のホームページでは、「見直しの目的」を次のように説明しています。(一部)
「地域主権改革は、地域に住む住民が、地域のことは地域に住む住民が決め、自らの暮らす地域の未来に責任を持つという、住民主体の新しい発想を求めていくものです。この地域主権改革を推進していくためには、地方自治体においても、その運営に当たって地域住民の意思がこれまで以上に反映されるよう、地方自治の仕組みそのものについても、地域の住民が自ら考え、主体的に行動し、その行動と選択に責任を負うにふさわしいものとしていくという観点から、地方自治の基本法である地方自治法についても抜本的な見直しを検討していくことが必要と考えられます」

地方自治が成功するには、賢明な市民、住民参画の意義を理解し仕組みに詳しく忍耐強い自治体職員、公のために働く議員が不可欠だと考えています。
子育て支援の施策調査の研究では、三重県名張市や、福岡県福間町(現福津市)など、住民ニーズにかなった施策を行っている市町村には、多くの住民が施策作りに参加する仕組みがあることがわかりました。たとえば住民のワークショップを繰り返し行ったり、当事者(代表者ではなく)と、市長の座談会など多様な手法がありました。
また、先進的な子育て支援を施策として実現している市町村には、志の高い行政職員の存在がありました。あるまちで、若いママたちの意見を聞いて計画を進める市の職員に、「なぜそんなに住民の意見を聞くのですか?」と尋ねると、「私は子育て支援で何が必要かよくわかりませんから、よくわかっている子育てサークルの皆さんの意見を聞くのは当然です。私たちの仕事は住民の夢を実現することであり、皆さんがこんなまちにしたいという夢を実現するために、お金を集める算段をしたり、必要な条例を改正するのが私たちの仕事です」という答えが返って来ました。厚生労働省の歴代の少子化対策室長の皆さんも、徹底した現場主義。とにかく自分から現場へ出向き、現場の声を徹底して聞いてそこから施策を考える姿勢には感心しました。
ある議員さんは、私たちが開いた子育て当事者の意見を聞くワークショップに来て下さり、みんなから集中砲火を受け、それでも議会で二度も質問してくださいました。住民、行政、議員がそれぞれに役割を果たすことで新しい施策が実現することを、これまでの子育て支援活動のなかで、体で学んできました。

この地方自治法の改正により、各都道府県では児童福祉施設最低基準の条例を定めることになります。一年間の経過措置があるため、静岡県でもこれからパブリックコメントを募集するものと思われます。
何度もこのブログで取り上げていますが、保育所の、1歳児6人に対して保育者一人、3歳児20人に保育者一人という日本の最低基準は、子どもの健やかな発達を保障する基準ではありません。(幼稚園の35人に一人も同様です)
子ども政策に力を注ぐ京都市、高知市、豊橋市などは、すでに国の最低基準を上回る条例を提案しています。
県のホームページをチェックし、意見を出せない赤ちゃんや幼児の代弁者として、一言でも意見を書き込んでいきましょう。
                     1歳の子どもってこんな感じ。(あいちゃん)

各国の子どもに対する職員の数とクラス規模2012/02/24

OECD編著(星三和子・首藤美香子・大和洋子・一見真理子訳)OECD保育白書 人生の始まりこそ力強く:乳幼児期の教育とケアの国際比較 明石書店、2011には、研究参加国の保育の概要が掲載されています。

この白書は、乳幼児期の保育(教育とケア)が、効果的な人的投資として注目されていることを報告しています。
乳幼児期の質の高い保育への投資は、「乳幼児の発達上のメリット、女性と家庭への経済的利益、生産性と税収の増大によるプラスの社会経済効果、労働市場の規模と柔軟性、社会福祉および社会的結束と地域社会の発展、最後に学習の基盤がうまく築かれた場合の子どもの学業成績の向上など」をもたらすことが、これまでの研究により明らかになっています。反対に劣悪なケアを受けた場合には子どもへの悪影響があることも明らかです。

OECDの報告書を読むと、日本が乳幼児の保育への投資がいかに少ないか、また税の再配分により子どもの貧困を減らすことにまだ成功していないか考えさせられます。(私たちの責任です。政治家を選んでいるのも投票に行かないのも私たちですから)

子どもたちが人として尊重にされ、交通事故や虐待や犯罪に遭う子どもが少なく、ほんとうの意味で幸せに暮らせることが文化的な国の証といえるでしょう。事故に遭わずに無事に生きている子どもたちも、早期教育に駆り立てられ、かわいくと飾り立てられ、早くもっとと急がされ、親と教師から受験戦争に送り込まれている・・・なにかさびしいですね。 幼児教育も、35人に1人の保育者という構造の質は、あまりに貧しすぎです。地方分権の今こそ、成熟した地域社会をつくりたいものです。

そのためにも資料編から各国の職員一人あたりの子どもの数と、クラス当たりの最大人数を抜書きしてみたいと思います。(根性) 「 」内は報告書をそのまま抜書きしたもの。( )内は報告に書かれた内容の補足です。ご参考に。


 〇〇子どもの数に対する職員配置数〇〇
〇オーストラリア(州により異なる)
長時間ケア施設:0~2歳は、子ども4~5人に対して職員1人、2~3歳は子ども10~12人に対して職員1人、3~5歳は子ども10~15人に対して職員1人。(以下同じく、前の数字が子どもの人数、後が職員数)
プリスクール・幼稚園:3~5歳は20~26人に対して教師1人と補助職員。
〇オーストリア
保育所8.7人対1人。
幼稚園16人対1人。
〇ベルギー:フランス語圏共同体
保育所:7人対1人。(子どもの年齢によって異なる)
エコールマテルネル(幼児学校):15人対1人。
〇ベルギー:フラマン語圏共同体
施設型デイケア:6.5人対1人
プリスクール:17人対1人、初年度(2歳半から)は、17人対2人。
〇カナダ(州により異なる)
1歳児:3~8人、3歳児7~10人、5歳児8~15人
〇チェコ
公立幼稚園:12人対1人
〇デンマーク
0~2歳は3.3人対1人、3~5歳は7.2人対1人、0~9歳の混合クラスは6人対1人。
〇フィンランド
3歳未満は4人に対して1人、3歳以上は7人に対して1人。
〇フランス
チャイルドケア(推奨):0~2歳は5人対1人、2~3歳は8人対1人(0~3歳は家庭型ケアが中心)
エコールマテルネル(幼児学校):3~5歳は25.5人対1人
〇ドイツ
報告なし。
〇ハンガリー
保育所:12人対2人。
幼稚園:22人対2人。
〇アイルランド
就学前教育クラス(4,5歳):25人対教員1人。(24%が30人以上補助員なしの学校で学んでいる)
就学前教育の場以外0~3歳:報告なし。3~6歳は8人対1人。
アーリースタートクラス(不利な子どもを対象、半日制):15人に2人。
〇イタリア
保育所:7人対1人。(0歳児はほぼ親がケアし、3歳以上児の98%が幼児学校)
幼児学校:通常25人対1人。例外28人対1人。障がい児がいる場合20人対2人。加えて教師補助員と宗教の教員がいる。
〇韓国
保育施設:1歳未満は3人対1人。1歳児5人対1人。2歳児7人対1人。3歳児15人対1人。4~6歳児:20人対1人。特別なニーズがある子どもがいるチャイルドケア施設は5人対1人。
幼稚園(推奨):3歳児15~25人対1人、4~6歳児は25人~30人対1人。異年齢混合は20人~30人。
〇メキシコ
公的規制なし。教育省が推奨する比率は25人対1人。「都市部のクラスでは職員1人当たりの子どもの数が30人、時には40人をはるかに越える場合も見受けられる。」
〇オランダ
「新チャイルドケア法では決められていない」が、報告には、0歳児4人対1人。(1~2歳児5人対1人。2~3歳児6人対1人。3~4歳児8人対1人。4~12歳10人対1人とある。
〇ノルウェー
0~3歳で一日6時間以上いるときには7~9人対1人。(0歳児はほぼ家庭養育)。3~6歳児は14~18人対1人。
〇ポルトガル
保育所:0~3歳児子ども10~12人対2人。(90%が家庭養育)
幼稚園:25人対1もしくは2
〇スウェーデン
地方自治体が決定し、「施設型ECECと家庭的では職員1人につき子ども5~6人が典型的である」(18か月未満の子どもはほとんどが家庭養育)
〇イギリス
施設型ケア:2歳未満児は3人対1人、2歳児は4人対1人、3~7歳児は8人対1人。
ナーサリー・スクール、ナーサリー・クラス(3~5歳児):13人対1人。
レセプション・クラス(4歳児):30人対2人。(教員とレベル3以上の補助職)
〇アメリカ
州により異なる。一般的に乳児4~6人対1人。プリスクール:10~20人に1人。2,3歳児はこの中間くらいの比率


 ●●クラス当たりの最大人数●●
●オーストラリア
行政区によっては上限なし。プリスクールおよび幼稚園は一クラス30人まで。
●オーストリア
最大人数は28人(多くの地方では25人)
●ベルギー:フランス語圏共同体
3~6歳は最大32人。
●ベルギー:フラマン語圏共同体
デイケアスクール共に施設・学校が決定する。
●カナダ(州により幅がある)
1歳児クラスは6~18人。3歳児クラスは14~25人。5歳児クラスは16~25人。
●チェコ
28人。
●デンマーク
クラス定員に関する法律はない。一般に1,2歳では12人を越えない。3~5歳では22人を越えない。
●フィンランド
保育所は大きさの要件がない。
就学前教育(6歳)は最大グループ人数は20人が推奨。13人を越えたグループには補助職員がつく。
●フランス
報告なし。
●ドイツ
一般的には、幼稚園の一クラス集団は25人を超えない。
●ハンガリー
保育所:12人。幼稚園:25人。
●アイルランド
0~3歳は20人。3~6歳は29人。
●イタリア
保育所は10人。幼児学校は最大25人。
●韓国
幼稚園:3歳児は15~25人、4~5歳児は、25~30人、異年齢混合クラスは20~30人。
●メキシコ
報告なし。
●オランダ
登録チャイルドケア施設の一クラスの平均人数は0~4歳が12人。初等教育の平均人数は4~7歳が20人。8~12歳が27.7人。
●ノルウェー
上限は定められてらおず、地域レベルで決められる。
●ポルトガル
保育所は最大人数は10~12人。幼稚園は25人。
●スウェーデン
統計による最大のクラス集団は17人。認可学校外施設の最大のクラス集団は30人(教員と補助教員)
●イギリス
報告なし。
●アメリカ
国立幼児教育研究所は3歳児、4歳児クラスのベンチマークとして最大10人を設定。37州がこの基準を達成。


p151には、「OECD調査の経験によれば、3~6歳児についての職員1人当たりの子どもの数は、北欧諸国の7人から、フランス、アイルランド、韓国、メキシコの25人まである」 ・・・日本はOECD調査の20か国よりも低い基準なのです。