医学教育・看護教育に学ぶ2012/09/21

9月5日に下書きを書いていたのに、なぜか今日は9月21日。
私は保育者の養成教育が仕事ですが、なぜか教育学の書棚には医学教育、看護教育の本が並びます。





保育士は、「専門的知識及び技術をもって児童の保育及び児童の保護者に対する保育に関する指導を業とする者」のはずなのですが、まだまだ保育は職人技に近い。現場から離れて教授できる専門的知識と技術の体系化は、これからの仕事です。現場の知を理論として構築するために、医学教育と看護師養成に学ぶことは多くあります。
最近みつけた本を紹介します。

John A.Dent/Ronald M.Harden 「医学教育の理論と実践」 篠原出版新社 2010



医師は、一人の人間が実践・教育・研究を兼ねます。しかし医学の最新の専門知識の学習と、教育学の最新の知識の学習を兼ねることは難しい。そこで医学教育の基本原理と最新知識を伝えるために編まれたのがこの本だそうです。私が持っているのは第二版の訳。
本文が497ページと量が多いこともあり、一般的な教育学の概論よりも最新の教育学を網羅されています。事例は医学に特化していますが、応用することが好きな方はとてもおもしろく読めると思います。



ドナルド R.ウッズ 「PBL 判断能力を高める主体的学習」 医学書院 2001 

PBL Problem-based iearning 問題に基づく学習 (問題基盤型学習ともいわれる)の学生向けのテキスト。
これ、教師向けのテキストではないのです。学生向け。カナダの看護学生は、これを大学生レベルで理解できるのかと驚いてしまいます。この一冊のなかに熟練した独立型学習者の姿が示されています。
教師向けには、先の「医学教育の理論と実践」に教育方略の一つとして、一章を割いて紹介されています。



西條剛央 「看護研究で迷わないための超入門講座」 医学書院 2009 

この本も、書店の看護の棚で発見することができます。7月に西條剛央先生の二日間の研修に参加しました。
なるほどこう進めるのかと講義の組み立てに納得し、予想以上の柔軟な進行にはちょっと驚きました。

研修では、グループで異なる意見をまとめていきます。それ自体が構造構成主義の本領発揮なわけですが、私は自分の考えを相対的に捉えて相手にその位置が見えるように話ができていない、まだ構造構成主義を使いこなせていないなあ~としばし反省。議論のなかでもっとメタレベルで発言できるようになりたい。

その研修会で紹介されていたのが本書でした。構造構成主義を基盤とした研究法が、図解とイラストで書かれています。実にわかりやすい。「看護研究」とタイトルにありますが、「実践研究で迷わないための超入門講座」と変えてもわからないぐらい使えます。これから実践研究に取組もうとしている人、そして実践研究を山のようにやってきた人にも、自信をもってお勧めしたい一冊です。