新しい年の始まりです2014/01/04

あけましておめでとうございます。

やはり新年は富士山の写真から。

1月2月は日中にも富士山が見える季節です。
東武東上線も、朝霞台駅から池袋に向かうときに、右手後方に富士山が見えます。
(今年も、屋久島の誓いを果たすことができますように)

お正月は、駅伝の応援に行ってみました。
各大学のコーチが選手の後ろを車で伴走しているのですが、選手への声掛けがそれぞれに特徴的でした。
穏やかな新春の小田原の海

今年もどうぞよろしくお願いいたします。

おだやかな生活空間2014/01/09

昨年も、研究で保育の環境をじっくりと見せていただく機会に恵まれました。
しかし研究で言語化するのは実践のごくごく一部。研究という手法は、実践の理論的な骨組みを作ることには向いていますが、実践を伝えることには残念ながら不向きです。やはり実践は、その場に居て感じることが一番。そして実践を伝えるには、言葉よりも、映画や番組や雑誌など視覚メディアが有効だと思っています。

今回は、研究では伝えることができない部分をブログでご紹介します。
テーマは「おだやかな生活空間」。相模原市のむくどり風の丘保育園さんです。

園長先生は、さまざまな園を見学して設計の参考にされたそうです。
暖炉が出迎え、OMソーラーが園舎をあたためていました。

          
奥では年長児たちがかけまわっています。0歳児から年長児までが混在する園庭の設計は本当に難しいものです。先生方が、おだやかに子どもたちを見守っている姿が印象的でした。

緑が見えるランチルーム。テラス席も人気だそうです。

園長の朝比奈太郎先生(場所はホールです)。P研(保育者の専門性研究会)の世話人でもいらっしゃいます。
今、全国で私立保育園の二代目、三代目の園長先生方が、共に学びの場を作り、日本の新しい保育を拓いていらっしゃることを感じています。研究者もがんばらなくっちゃ。

それにしても、おだやかな空間とまなざしの中ですごす子どもたちは、ほんとうに幸せですね。

保育園の豊かな食事2014/01/16

保育園へおじゃますると目をひかれるのが、子どもたちのお昼ごはんやおやつ。
手作りで野菜もたっぷり。ほんとうに美味しそうです。
目の前で給食の先生が準備してくれた湯気の上がるあたたかい食事を食べることができるなんて幸せですね。
今日は、6つの園の実践をご紹介します。

水差し、お花や観葉植物が各テーブルに置かれています。果物はグループごとに分けて食べます。


保育室のテーブルで、テーブルクロスを敷いて、カレーライスを食べています(3・4・5歳)。


保育室で食事をしている1歳児のテーブルの様子。お茶が入ったピッチャーは、子どもが自分でつぐ大きさです。


レストラン形式でおやつを食べに来る子どもたちの様子。1歳の子どもたちは、先生がテーブルにおやつを準備する頃になるとレストランにやってきて自分で椅子に座ろうとします。

毎日、こんな離乳食を出しているだけで、保護者への素晴らしい子育て支援になっているといえないでしょうか。


今日の給食をスライドショーで掲示。箸置きを使っているのですね。豊かな食事風景です。


国の「食育基本法」に基づいて、幼稚園や保育園では「食育」を推進しています。毎日の食事のメニューと、食事の雰囲気は、隠れたカリキュラムといえます。給食の先生たちが食事を作る様子を見て、心づかいのある空間で、食べ物の湯気や香りを感じながら楽しく食べること自体が、何よりの「食育」になっていると思います。

紹介させていただいたのは、ながかみ保育園さん、やまぼうし保育園さん、エミール保育園さん、こまつ保育園さん、なかぜ保育園さん、なごみ保育園さんの実践です。いつも素晴らしい実践をお教えいただきありがとうございます。

35人に一人にビックリ!2014/01/23

先日、他の専攻の学生たちを対象に、保育士について講義をする機会がありました。

最初に保育所という場が、家庭の代わりではなく、子どもを集団で保育する場であることを理解してもらおうと、国が定めた保育士一人が保育する子どもの人数の基準を、0歳、1・2歳、3歳、4、5歳で推測してもらいました。ついでに幼稚園も、学級人数を考えてもらいました。
机間を回り、ノートを見たり話しかけたりして聞いてみると、幼稚園は10人に一人、0歳は子ども一人に保育者一人、1歳は3人に一人など、まあ、みんな書いている人数の少ないこと、少ないこと。
そうですよね。赤ちゃんを一人で育てていても子育ては大変だと聞いているのですから、きっと保育園や幼稚園でも少人数で保育しているだろうと推測して当然です。

しかし日本の保育所の最低基準は、0歳児は子ども3人に保育士一人、1、2歳児は、子ども6人に保育士一人、3歳児は子ども20人に保育士一人、4、5歳児は子ども30人に保育士一人です。幼稚園は35人。そして現在の保育所が認定こども園になると、短時間保育児は35人に一人になること。
学生たちはとても驚いた顔をしていました。最後に課題の提出を行いましたが、よほど驚いたのか「人数が衝撃的でした」「驚きました」と課題の横に書き加えている学生がいました。

学生と同様に、保護者もこれらの情報を知らない人が多いことでしょう。(かくいう私も親の立場であったときには知りませんでした・・・)
保護者には、事前説明会で国の基準と、自園のクラス人数と保育者の人数を話し、園としては基準よりも加配して努力をしていること、行き届かない点があるが協力をしてほしい旨を説明することが必要であろうと思いました。

保育士の場合、集団で子どもを長時間保育するための専門性が必要です。保育士は、幼稚園教諭の幼児教育の専門性に加えて、養護(ケア)の専門性、乳児保育の専門性と、保護者支援の専門性、福祉の専門性が求められます。保育士資格を取得するときは、保育所以外の児童福祉施設で働くための専門性も必要となるため、修得する専門科目の単位は幼稚園教諭の約2倍の数になります。
虐待の可能性や福祉ニーズが高い家庭、子どもに障がいの可能性がある場合、保育所への入園を勧められます。幼稚園では障がいや国籍によって入園を断わる園もありますが、保育所には、むしろ支援を必要とする子どもが優先的に入園します。家庭環境の幅が広く、長時間保育であり、交代制勤務のなかでチームで保育を行うため、保育にも保護者支援にも、より高度な技術と倫理観が求められるのが保育士なのです。

私が保育士をしていたとき、「保育は難しい」「私にはうまくできない」と自分を責めることがよくありました。しかし保育士を辞め客観的に見ることができるようになったとき、保育士という職務は、厳しい労働条件でありながら高度で幅広い専門性が求められるために、保育を難しいと感じることは当然だったのだと気づきました。高度な専門性が必要な職務でありながら、「親の代わり」「子どもと遊んでいるだけ」というまなざしに囲まれ、自分でも専門性を持っていることに気づきにくかったのです。

球を受けとめきれないのは、あなたのせいではない。(佐藤学さんの著作の中からヒントを得ました)


保育士は、乳幼児期の教育と養護、保護者支援を行う福祉と教育の専門職です。
看護という仕事に専門性などないと考えられていた時代に、ナイチンゲールたちが専門性のある看護を追及し、専門性を言語化・理論化したように、保育の専門性を実践として見せ、言語化・理論化して、待遇を改善していきましょう。

保育はクリエイティブな仕事2014/01/29

先週、甲府へ環境構成の研究に行ってきました。
ひざしがあたたかく、風もおだやかな日。かほる保育園では、どのクラスも保育室はカラッポでした。「いつもほとんど部屋にはいないんですよ」と園長の落合陽子先生。子どもの姿がなくても、保育室からは子どもたちの遊びの様子と、先生方が保育を楽しんでいらっしゃる様子が見えて、ワクワクしました。

どのクラスも個性的です。「保育はクリエイティブな仕事なのだ!!」という授業で使うキャッチコピーが何度も頭をよぎりました。
4歳児のクラスです。

 



保育室内は、子どもが使う遊びの素材と道具が置かれた場所、子どもが遊びを展開する場であり子どもたちの作品が展示される場、食事や午睡をする場所でもあります。これらの機能が見事に埋め込まれた空間です。
3歳児のクラスです。



5歳児のクラスでは、まちがテーマでしょうか。水族館や科学館やスーパーなど建物が並んでいました。一番奥に見える一番立派な建物が、「保育園」だそうです。
積木でつくったまちかほる保育園



別の5歳児クラスの保育室には、子どもの作品展示場といった趣があります。
かほる保育園の年長児クラス


机の上には、木の家が並んでいました。


園庭にはなべやフライパンなどに加えて本格的なガス台が。園長先生が中古品店で購入されたそうです。
年長児は園庭で本格的ごっこ

廊下には、図鑑類が入った棚が置かれています。背表紙がぼろぼろになるぐらい読み込まれていました。
日の当たるあたたかい廊下に置かれた本棚


未満児のクラスにも、様々な工夫が見られました。どのクラスも動画を撮影して「快適ビフォーアフター」のBGMをつけて、「なんということでしょう」と、匠の技を解説したくなるおもしろさです。


事務室には、今月の保育雑誌などが見えるように並べられていました。
表紙が見えるように事務室に置かれた書籍類
クリエイティブな仕事の背景には、専門的な学びがありました。(事務室の棚や先生方の机に置かれた本や保育雑誌の質と、保育の質には関連があるのではないか、と仮説を持ち始めています)。


保育って、いくらでもおもしろいことがやれるし、気づいたことはすぐに変えることができるし、創造性が発揮できる、本当に素晴らしい仕事だと思いました。かほる保育園の先生方、ありがとうございました。

子どもたちの未来のために今こそ保育のグランドデザインを2014/01/31

標記をテーマにした全国私立保育園連盟の研修会に参加してきました。

一日目の講演とシンポジウムは仕事で参加できませんでしたが、二日目の分科会は、制度構築の分科会に参加。全国保育協議会、日本保育協会、全国私立保育園連盟の保育三団体の代表から新制度についての情勢報告や関連する状況提供が行われました。「保育3団体協議会」として平成25年の5月から同じテーブルについて協議を重ねていらっしゃるそうです。9時から16時半まで丸一日、制度だけを考えるという贅沢な時間のおかげで、多様な自治体の27年度の姿を想像しました。

保育所の認定こども園への移行が実際に始まると、移行した園は幼児教育をする園で、移行しない園は預かっているだけの園との保護者の誤解が生じる可能性があります。残る園には、説明力が必要です。保育者不足も深刻化するでしょう。発達と保育の理解がないままに長時間保育と乳児保育に参入した場合には、漫然とした預かり保育や、012歳の発達段階にそぐわない幼児期と同じ保育を行う可能性もあります。指導の一本化では、指導主事が幼児教育と長時間保育を理解することが課題です。「学校教育」が連呼されることで、幼児期の教育に対する理解が薄い保育者は、現場から学童期の先取り教育を行うかもしれません。

保育三団体には、これまで保育所が積み上げてきた8時間の保育、養護と教育を一体として行う保育、乳児保育の専門性を、今後幼稚園から認定こども園へ移行する園や、新しく保育へ参入する園へと伝え、保育の質の低下を防止する役割を期待したいと思いました。

家庭に向けて幼児期の教育を説明できる保育者と、家庭や地域の子どもの文化モデルになる園を着実に増やす具体的な戦略を考える時間をいただきました。研修をご準備いただいた皆様ありがとうございました。

朝霞から見える朝焼け