狭い、けれど環境を充実させたい2014/12/08

保育環境を充実させたい。けれど、部屋が狭くて・・・。
こういうお悩みを、よく伺います。

園庭や部屋の狭さ、クラスの人数の多さ、空間に対する子どもの人数の多さ、
こういったハードの環境が悪いと、保育者の苦労は絶えません。
小規模の園で、広い園と同じ保育環境をつくることはできないし、つくる必要もないと考えています。

普通の園ではこうとか、今までこうやってきたという保育の常識を捨てると、楽。
保育はクリエイティブな仕事。保育者が状況に合わせて変えることができます。
小規模園では、大規模園にはできないその規模をいかした環境をつくった方がいいことを、先生方に教えていただきました。これまで教えていただいた実践のヒントをまとめてみます。

<<先生方の実践例>>
子どもは各保育室から出てはいけない⇒園内の安全を確保して他の保育室で遊んでいい
各クラスに各コーナーがないといけない⇒何歳児クラスはごっこ、何歳児クラスは運動など強みづけをする。
廊下は走ってはいけない⇒廊下は、運動あそびの空間にして体を動かす。
押入れの下の段をあそび場にする。
全員分の粘土板と粘土とクレヨンとはさみをロッカーに入れる⇒共有にする。空間がわずかでいい。
ロッカーは教室の壁に横一列に置く⇒廊下にロッカーを置く。移動式ロッカーで朝夕は玄関、必要なときに移動。
保育用品のロッカーを使わず、家庭用の家具を使用する。
タオルかけが必要⇒使い捨てタオルや園のミニタオルを使用する。ハンカチを各自で持つ。
パジャマ入れとパジャマ掛けが荷物を増やす⇒お昼寝ではパジャマに着替えない。
お布団上下の収納が必要⇒コットを使用。
先生の事務机を各クラスに置く⇒クラスには置かない。
あそびの空間と午睡の空間は別々⇒遊びの空間で午睡する。
給食はクラス全員が一斉に食べる⇒朝早い子どもと遅い子どもでグループ化し二回に分ける。
給食は各クラスで食べる⇒レストラン形式にして随時食事に来る。できるだけ園庭やテラスで食べる。
クラスやグループの編成を、柔軟にする。
玩具は素材的なものを種類は少なく量は多くし、入れ替えで使う。
いただきものの玩具や絵本など、使わないけれども置いているものは処分する。
軽い大型積み木など、室内で活用されていないものは園庭の遊具にする。
毎日のおやつや食事作りや、掃除など、生活を教材化して、少人数ならではの経験を多く取り入れる。
備品は白やベージュを中心にして保育室内の色数を減らして、すっきり感を出す。
家具の高さは揃える。
インテリアや照明で家庭のようなあたたかな雰囲気をつくる。

少人数で家庭的であることを、強みとして、アピールできる環境をつくれるといいですね。



空間づくりは保育者の技術。まちの保育園 六本木 


幼児にぴったりの体操をつくる2014/12/14

卒論提出まであと数日。ゼミでは3年生も一緒になって卒論モードです。
本学では、乳幼児期の運動の重要性をしっかりと学生に伝えて下さる先生のおかげで、運動の研究に取り組む学生がゼミに複数います。

先日のゼミでは、体操を研究する学生のために、アンパンマン体操の振り付けを2歳児・5歳児向けに修正するという課題を出しました。実はこの課題は、乳幼児期の運動発達過程を理解していること、幼児期に経験したい動きを理解していることが必要なので、学生にはちょっと高度すぎる課題です。予想通り、2歳児グループも、5歳児グループも、「難しい~」と音を上げました。

アンパンマンの曲に、乳幼児向けの振りをつけることが難しい理由は、もう一つあります。
それは歌詞。アンパンマンには意味をもった歌詞があるため、「もし自信をなくしてくじけそうになったら」、「いいことだけいいことだけ思い出せ」などの、歌詞に合わせた表現を考えたくなってしまうのです。歌詞にも合い、幼児期の発達にも合う動きを探すのはとても難しい。
一小節ずつ歌詞の雰囲気が違うと、そのたびに動きをしょんぼりしたり、元気にしたりしたくなります。幼児は同じ動きを何度も繰り返すことが大切な時期です。もしも体操をさせるのであれば、保育者は動きを丁寧に着実に指導したいもの。一小節ずつ動きを変えると、いい加減な動き方になり、保育者は、どの子どもがどのような動きをしているのかを把握しにくくなります。そうすると、体操をわざわざ一斉に取り組む必要性が減ってしまいます。

たとえば、「線路は続くよどこまでも」ですと、歌詞はありますが、「線路は続くよどこまでも」「野を越え山越え谷越えて」「はるかな町までぼくたちの」とずっと汽車が走っているイメージですから、一曲、振りを繰り返しても違和感がありません。歌詞の内容によって、体操に使いやすい曲と使いにくい曲があります。

乳幼児から小学生など異年齢が集まるイベントや大人向けのイベントでは、気分が上がるアンパンマン体操がぴったりだったりします。しかし保育者が、教材として使う場合には、まず目の前の子どもありき。目の前の子どもたちにぴったり合った動きと、ちょっと挑戦的な動きを考えること。幼児期に経験したい動きを入れること。そして同じ動きを大人はうんざりするぐらい繰り返すこと。そして、それが可能な曲を探すこと、と説明していると、「体操って、曲選びも考えないといけないんだ~」と声が上がりました。


卒論を書くために、遊ばないといけない私たち・・・広い保育実習室が活躍中です。

保育はこれが正解、という教え方ができない領域。
保育も大学教育も、探し続ける、考え続けることが必要。
私自身が、くじけない、あきらめない、投げ出さない力を持たなくてはと、今日も中腰で歯磨き中。


ウインクする動物たち2014/12/20

保育雑誌の壁面制作ページを比較研究した学生の論文を読みました。
「雑誌〇〇の壁面は、表情は、笑顔が〇個、ウインクが〇個・・・」と表情を分析していました。
なるほど、と読みながら納得。表情が数種類に類型化できるのです。

壁面の定番。ウインクする動物。


学生に刺激されて、私も夜中に図を作ってみました。
雑誌に掲載される壁面制作で、最も多い楕円形の目。切りやすさはNo1。


球形にすると、かわいらしさが増します。


だけど、横の細目は、ないですし、


吊り目もあまり見かけません。


小さな目は色画用紙を切るより、マジックで書く方が早い。


目は大きく切りすぎると怖い。


壁面特有の、片目ウインク。


だけど、右目ウインクは見ない気がする。


最高にテンションが高い両目ウインク。


この笑顔目も、壁面にはとても多い。


笑顔目を逆にするとお休みマーク。


最近時々見かける新種の目。


わたしは決して暇なわけではありません。



図をつくりながら、ふと、幼児の描いた絵に、ウインクをした女の子がいることを思い出しました。これは壁面の真似なのでしょうか? ウインクする動物を貼っていない園でも、幼児はウインクする人間を描くようになるものでしょうか?壁面を貼っていない園の先生方ぜひ教えてください。

乳幼児は、その置かれた環境を自らに取り込み、感性や価値観を育みます。
保育室の壁面と、幼児の絵の関連を研究できると面白そうです。


アトリエスタの発想2014/12/21

今年は、レッジョ・エミリアの実践で知られるオルト保育園さんの造形展へ行くことができました。

オルト保育園の実践は戸塚陽子先生の講義でお話を伺っていましたが、訪問するのは初めてです。
オルト保育園には、レッジョ・エミリア同様、芸術を専門にするアトリエスタの方がいらっしゃいます。アトリエは、素材と道具の充実度が素晴らしい。やはり、芸術を専門とする方は、保育者とは発想が違います。素材選びや展示の手法なども参考になりました。






上が「レインボーくわがたとにじいろおおかぶと」、下が「91ほしてんとう」だそうです。
作品の前では、そこかしこで、子どもがお父さんやお母さんに説明をする姿が見られました。


作品を創るまでのプロセスが、ドキュメンテーションとしてまとめられ、作品のそばに置かれていました。
子どもたちの会話、豊かな発想、思いがけない展開・・・その内容が実に楽しいこと!





日本の幼児教育は、熱心な私立保育園を中心に、日替わりの細切れ保育から、継続的で協同的な学びのある環境を通した保育へと変わり始めています。養成も、現場についていかなくてはと心しました。


いやあ、勉強になりました。オルト保育園の染谷園長先生、先生方、ありがとうございました。


電車であやとり2014/12/28

保育園で子どもたちがあやとりをしている写真を撮ろうとすると、「ほうき」、「かめ」、「はたおりき」、「やまのうえ」と次々に子どもたちが見せてくれました。・・・うう、私はそんなにできない。
12月。卒園前の子どもたちは、あやとりも上手です。



そして休日。駅のホームであやとりをしている幼児を見かけました。
電車でゲーム機をもっている子どもはよく見ますが、あやとりをしている子どもを見るのは初めて。
周囲の人からもあたたかいまなざしで見られ、「上手ね」と声をかけられることもあるでしょう。
ひも一本で荷物にもなりません。

今月の園便りに、「帰省の際には、あやとりのひもを一本持っていくと便利ですよ」なんて園の先生が書いたのかな、それとも育児雑誌の帰省特集に、「あやとりのひも」が載ったのかしら、なんて想像しました。いずれにしても素晴らしい。

今年も大変お世話になりました。
皆様、どうぞ良いお年をお迎えください。