教材や活動選択の根拠2016/08/04

ゼミの学生たちが絵本を選ぶブログを読んで、
選択の基準ってあるのでしょうか?」と質問をいただきました。

私が園を見学させていただくときに必ず写真を撮るのが各クラスの絵本棚です。
各クラスの絵本棚には、そのクラスの保育内容が現れます。


また、絵本棚には、保育の専門性も現れています。
よく勉強している先生は、絵本棚に置く本のバランスが見事。

でも、何千冊とある絵本、
それも学童向けや大人向け絵本も多いなかで
選ぶのは難しいですね。

保育は、教材を体系化した教科書や
教師向けのガイドもなく、
保育者の自由度がとても高い仕事です。
保育者にもし専門性がなければ、
「私がいいと思うから」「私が好きだから」と
自分の好みや主観で教材を選ぶことになります。

極端な例ですが、その昔、先生の好みで、
キャンディーズの歌ばかり歌わせるクラスがありました。
親なら何の問題もないけれど、園の場合はちょっとまずい。
また「子どもを喜ばせたい」と偏ったメニューを作る栄養士
がいたら困りますね。

保育者は、大切な子どもたちを預かり
大切な乳幼児期の教育を行うため、
園でどんな教材を選ぶか
どの活動を優先するか、
専門職として選択の基準があります。

保育には、
「遊びを通して行う」「環境を通して行う」という
二つの大原則があります。

その他に方法原理として、
「発達の原理」
「経験の原理」
「自発性(主体性)の原理」
「個性化の原理」
「関係性の原理」
「相互作用の原理」
など、研究者によって分け方が異なりますが原則があります。
そしてこれらは、指針の「保育の原理」や、要領の「幼児教育の基本」に
文章で示されています。

園での時間には限りがあります。
そのため保育者は、
発達に合うもの、直接体験、身体感覚が伴うもの
自発的・主体的な活動、一人ひとりの個性が発揮できるもの、
人や物との関わりが生じるものなど、
保育の原理に合ったものを優先することになります。

指針の保育の目標には
「子どもが現在を最も良く生き、
望ましい未来をつくり出す力の基礎を培うために」
とあります。

大人が提供する文化である絵本や歌も
繰り返しその文化にふれることで何を経験するのか、
その後、どんな遊びが広がるのか、
そこで子どもたちがどんな価値を身につけるのかを
保育者は想像して選ぶことになります。

保育環境の研究でも、
意図的に環境を構成している園では、
保育者に「なぜこの人形ですか」
「なぜこの絵本ですか」と質問すると、
専門知識に基づいて根拠を説明することが特徴的でした。
「なぜ、その絵本ですか?」と尋ねられたときに、
「子どもが喜ぶ、好き、うける」以外の根拠がどれだけあるか、
そこが保育の専門性だとインタビューで学ばせていただきました。

でも最初は、
この本がこの発達段階の子どもに合っている
なんてわからなくて当然ですから、、
学生には、まずは学習を薦めています。
「保育と絵本」(瀧薫)など質の高い参考資料を読むことや
こどものとも社のカタログの年齢別お薦め絵本を参考にして
絵本をまずは読んでみることを薦めています。

こんな感じで質問の答えになったでしょうか?
ご質問、ありがとうございました。

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