1歳は手をつないで散歩ができるのか2018/12/02

質問をいただきました。

今悩んでいる事があります。1歳児同士が手を繋ぎ戸外を散歩中、お子さまの気持ちが逸り、急に1人が走り出すと、もう1人が引っ張られそのまま転倒。繋いだ手を離せないので、手をついても片手になり支えきれず顔面を打撲し前歯を怪我するというケースが数件続いています。ひどいケースでは乳歯が抜け落ちてしまい、保護者もかなり心を痛められています。

そもそも、1歳児同士が手を繋ぎ戸外を歩く事自体、本来は無理のある行為なのでしょうか?

5歳児が片道5分程度の道のりも、1歳児の1期中は、ぐずったり座り込んだりで、40分くらいかかる現状を見ていると、そこまでして、手を繋いで歩かせないといけないのか?と疑問にさえ思います。ただ、おそらく保育士さん達は、1歳児は手を繋いで歩かせないといけないと思っていて、それが当たり前になっているから、悪戦苦闘しストレスを抱えながらも頑張られています。

乳児は歩ける様になってもまだまだ頭が重く、両手でバランスを取りながら歩行を安定させ、身体を作る時期かと思われますが、同年齢のお子様同士が手を繋いで散歩する習慣を身につける最適な年齢(時期:体の状態・心の状態)はいくつくらいからなのか?と考えています。身体と歩行バランスの安定で、何か目安の様な物があれば教えて頂きたいと思います。2歳児への移行も踏まえ、アドバイス頂ければ幸いに存じます。


文面から、園長先生だと推察しました。

結論から。1歳児同士に手をつながせて散歩させることは妥当か→いいえ発達に合いません。

「環境構成の理論と実践」に、発達のステージ毎に経験したいこと、環境を示しています。

調整機能の発達は、3歳半~5歳頃

人に合わせて自分を調整する機能が発達するのは3歳半以降です。

他者に合わせて、がまんしたり調整したりする1歳や2歳がいたら心配ですね。
「私のもってるおもちゃがほしいの?はいどうぞ」とか。
「ママ、今日は急いでいるんだね、じゃあぼくも急いであるくよ」とか。
「今ぼくはこの石を見たいんだけど、君はあっちへ行きたいんだね、じゃあぼくががまんするよ」とか。

身体機能も、リズム感をとったり、相手に合わせて調整が次第にできるようになるのは3歳半以降です。
二人組でリズムよく、「なべなべそこぬけ」をする1歳がいたら天才です。

他の子におもちゃをとられても平気、
ほかの子に手を握られたままその子についていく、
散歩では先生の指示にしたがって歩く、
そんな1、2歳児がいたら、自我が発達していない可能性があり、むしろ心配。

子どもの姿に合わせて環境をつくるのが保育者の役割です。
環境の構成は、散歩や、園外の行事でも行います。
どのような場を選び、どのような散歩をするのか、保育者はどんな服を着てどんな声で何を話すか。
これが散歩の環境構成です。

自然豊かな森のなかでも、子どもに手をつながせ急いで歩かせれば、その体験は貧しくなります。
歩き始めの子どもは、自由に歩き回り、しゃがんだり立ったり、登ったり降りたりを、何度もくり返すことで、自分の身体を守る能力を獲得します。

保育は、このケースでは、この場面ではと、ノウハウで判断することができません。

「何のために散歩するのか?」、「散歩では子どもにどんな経験をしてほしいのか?」
「散歩では何に困っているのか?」、「何のために手をつながせるのか?」
「ほかに、どんな方法があるか?」など話し合うと、いい解決方法が見つかるかもしれませんね。

保育は、今ある条件のなかで、柔軟に考えるしかありません。
保育者が、判断の基準にするのは、根拠となる専門知識です。

保育者の役割と、「言葉がけ」「言葉かけ」2018/12/16

夜中に、「言葉がけ」で、目が覚めました。

思い悩んでいると、夜中に思い出して目が覚めるという困った習慣があります。
夜中に、枕元のポストイットにメモした「けんさく」という文字を見て、
朝一番に、自分のパソコンに「言葉がけ」と、検索をかけてみました。
やはり「言葉がけ」は、人が作成した論文と文書にしかありませんでした。

「言葉がけ」や、「言葉かけ」は、
保育では、よく使われる言葉です。
しかし、私は悪い関わりの例でしか使いません。
実習指導でも、計画や記録には使わないように指導しています。

しかし、学生は、「言葉がけ」「言葉かけ」と連発するのです。

今、2年の学生数人と、4年のゼミ生が、
食事場面での「保育者の言葉」を研究しています。
そのなかで何度も、「言葉がけ」が出てきます。
「どうして、みんなは『言葉がけ』と使うの?」と聞くと、
「『言葉がけ』は、高山先生が言っていると思います」との答。

(えっ!私なの!?、無意識に使っているの?)
と、ずっと気にしていたのでした。
それで、夜中に目が覚め、パソコン検索をし、
やはり「言葉がけ」は使っていないと確認して安心しました。

友達に、「言葉がけをする」とは言いません。
家庭でも、「子どもへ言葉かけをする」とは使いません。
なぜ集団保育だと、「言葉がけ」「言葉かけ」になってしまうのでしょうか。

「言葉がけ」ではない母と子の光景。

応答性が、保育者の基本姿勢のはずです。
指針の「言葉がけ」の文言を、次の改訂では無くしたいものです。

1月4日の追加です。
言葉がけについて、ある先生より、
「『話しかける』は意図が薄く、
『声をかける』『言葉をかける』は意図があるときに使うのではないか」
というご意見をいただきました。なるほど。

「声をかける」「言葉をかける」と
「言葉がけ」「言葉かけ」の違いはどこにあるのでしょうか。


自然のなかで育つ保育を広げる団体2018/12/21

今年は、自然保育、森の保育に関する本の出版が続きました。
自然のなかで育てる団体、子どもと自然をつなぐ団体の活動も盛んです。
(つながっているのにつなぐは変ですが、つなげないとつながらないので)

今回は、それらの団体を紹介します。
(出会いの新しい順にご紹介)

森のムッレ協会


本当の団体の名前は、日本野外生活推進協会なんだそうです。
スウェーデン野外生活推進協会とのライセンス契約によって
日本の活動を推進しています。
森のムッレ協会新潟と櫻井慶一先生が、今年本を出版されました。


日本自然保育学会
保育者を養成する教員が保育の質へ及ぼす影響は大きい。

大会では、研究発表もあります。


国土緑化推進機構

このホームページから、子どもと森をつなぐ様々な団体へ飛ぶことができます。


国土緑化推進機構編集の本です。


園庭・園外での野育を推進する会
ホームページの文字や写真に、野性味があふれていますね。


森のようちえん全国ネットワーク連盟
全国交流フォーラムは、もう14回目なんだそうです。


団体ではありませんが、最後にふれたいのは、
自然と子どもをつなぐ保育を広めた、さくら・さくらんぼ保育園。
水・土・泥、自然物と遊ぶ、高低差のある園庭づくりなど、
農業国らしい保育を創造し、全国に影響を及ぼしました。

今年も、大気の汚染と、温暖化による異常気象で、
保育者が子どもを外へ出せない日がありました。
全国の園庭に木を植えれば、
それらから子どもたちを守ってくれるのではないでしょうか。
全国の園長がその気になれば、
「子どもの徒歩圏内に森のある日本」が生まれるかもしれません。