巣鴨駅で絵本探し2016/09/30

夏の実習訪問の合間に、巣鴨駅へ絵本を探しに行ってきました。
巣鴨駅を出て目の前の大きな道路を左へ歩いて行くと、
5分ほどで福音館書店が見えてきます。絵本好きにはたまらない聖地です。

実はこの福音館書店の社屋の一階に、絵本の販売所があります。

出版されている福音館書店のハードカバーの絵本と、
「かがくのとも」等の月刊誌や「母の友」が購入できます。
ここで絵本を購入できるなんて、誰が思うでしょうか?

この看板がついている入り口から入ります。
昼休みと、土日はお休みなのでお気をつけください。


中はこんな感じ。四面に本が並べられています!(もうこれだけでワクワク)
福音館書店の現在出版されているハードカバーの絵本と、月刊誌が置かれています。

最近本屋さんでは保育に使う絵本を探すことが難しくなりました。
日本社会は高齢化が進んでいますが、本屋さんの絵本は年齢(出版年)が若い。
子どもを引き付け喜ばせるお菓子のような本が多く、心の栄養となる本を見つけることは難しい。
ここでは絶版だと思っていた本とも出合えます。


カウンターにあったぐりとぐら。
ここで声をかけて本を購入します。
「かがくのとも」や「こどものとも」などペーバーブックを7冊買って2,723円。
ちょっと得した気分です。

牛乳パックでぞうくんのさんぽ2016/09/21

紹介しなくちゃ、と思っているうちに9月後半になってしましました。

おはなし組木、「ぞうくんのさんぽ」
見るだけで、子どもが遊ぶ様子が想像できるでしょう?
浜松で初めてこの組木に出会ったとき、とても興奮しました。
重量感があるのもいいですね。

絵本は なかのひろたか「ぞうくんのあめふりさんぽ」福音館書店2006

私は、この組木をさわると、故森島文子さんの声で
「やあ、かばくん」と聞こえてきます。
語りって不思議。ずっと心に残っています。

自由に遊んでいいものですが、
遊び方の例は、作者の森島孝さんのでこぼこBLOGにもあります。

おはなし組木には、他にもおおきなかぶ、がらがらどん、など子どもたちになじみ深いお話が揃います。

このおはなし組木を、牛乳パックで手作りする方法が、「母の友」9月号に掲載されているそうです。
「母の友」福音館書店、2016.9
ちなみに「母の友」は、保育者の友である保育雑誌よりも内容が専門的です・・・はい、「母の友」は良い雑誌です。
9月号の「母の友」の購入は、お近くの書店やこどものとも社さんか、巣鴨駅の福音館書店直売部へ。


これは以前保育園で見せていただいたもの。手作りワークショップを行ったそうです。

保育者が一度演じてみせると、
子どもたちが何度も繰り返して遊べる、これがおはなし組木の魅力です。

保育実習室には、保育者や子どもが繰り返し演じるものとしては、
このおはなし組木しか置いていなくて手作りの人形を作る暇がないまま3年が過ぎました。
ついに手作りをあきらめ、ネットで手作り品を購入。お手玉人形等がやっと実習室に揃いました。

つくって下さった方、ありがとうございます。


わらべうたの布、手作りのテーブル人形、走り人形、ブラブラ人形、手袋人形など・・・。
ちょっと入れ方がごみ箱保育っぽい・・・人形たちごめんなさい。
こんな入れ方だと子どもが片づけにくく乱暴に扱うという見本になってしまいました。
また、どこかで入れ物を探してきます。

子どもからはじめる保育実践2016/05/12

保育学会でお声掛けをいただいた皆様ありがとうございました。一年分のエネルギーをいただきました。
大豆生田先生のあの黄色い本に引き続き、赤い本が出ました。もうお読みになりましたか?勉強熱心な園長先生は必ず手に入れている黄色い本。先生方とお話していると、「あの黄色い大きい本」で通じるのがすごい。


大豆生田啓友「『対話』から生まれる乳幼児の学びの物語」学研、2016

表紙は、目にまぶしい赤に帯は真っ青。う~ん、やはり原色が保育界では好まれるのでしょうか・・・。


表題通り、子どもたちとの対話のなかから展開していく保育の実践を読むことができます。
レッジョ・エミリアの実践を学んでいらっしゃる先生方が多いからか、自然の素材、廃材を使った造形表現への展開を多く読むことができます。また、子どもの豊かな言葉を引き出すという点、領域環境(環境認識と活用)に関する視点を得ることができる本です。今、一斉保育を行っている園でも、取り入れやすい実践や環境の工夫が紹介されています。

実践の研究や共有には写真は不可欠。実践の流れがわかりやすいですね。

「一斉保育」「お楽しみ会保育」は広がりやすいものですが、「教育とケアの意図をもった環境を通した保育」は、なかなか広がりにくいものです。小学校で教科書を使った授業よりも総合学習の方が指導が難しいことと同様ですね。

保育を着実に変えている園のプロセスを見ていると、次のような段階を経ているように思えます。
①一斉保育⇒②環境(園庭・保育室)を充実させる⇒③子どもが主体的に遊ぶ姿を見て子どもをよく知る⇒④子どもの姿から環境をつくることを試行錯誤する⇒⑤保育の実践を子どもと一緒に展開する。
この本を読んで、①⇒⑤から②③④へと行き来する可能性を感じました。

保育を改善している園には、子ども観と保育観をしっかりと持つ中心的な人(多くは園長先生)がいて、保育者同士が語り合うしかけをつくり、保育者に対しても継続的に子ども観・保育観を語り続けていることが、共通して見られるように思います。

他者の実践を読むと、様々な気づきが生じます。園によって、子ども、保護者、保育者、保育室の広さ等状況は異なります。遊びや表現の素材として何を中心に用いるかは、保育時間や空間、保育者の現状によって選択が異なるでしょう。日本の保育では、あるテーマを歌や身体での表現、鬼ごっこなどの集団遊びへと展開することが特徴的だとも気づきました。
写真がたっぷりでわかりやすく編集されたこの本は、他者の実践のどこが優れていて、どこを活用できるか、話し合う材料にもなりそうです。


この黄色い本が、研究室で見つかりません。誰か、私がどこへ置いたのか知りませんか・・・?

保育プロセスの質を高める2016/04/14

熊本の先生方、子育てひろばの皆さん大丈夫でしょうか。落ち着きませんがp研でブログに書くと書き込んでしまったので書かないと仕方ありません。

保育実践に新しい視点をもたらす本の紹介です。
「『保育プロセスの質』評価スケールー「乳幼児期のともに考え、深めつづけること」と「情緒的な安定・安心」を捉えるために」イラム・シラージ+デニス・キングストン+エドワード・メルウイッシュ著
秋田喜代美+淀川裕美訳、明石書店、2016

全米乳幼児教育協会の「乳幼児の発達にふさわしい教育実践」も貴重な情報を提供していますが、本が小さく読みにくいので紹介しませんでした。こちらはB4で、一つの項目が見開きで読みやすさにとても配慮があります。埋橋先生が翻訳されたエカーズ等と、形式は似ています。

この評価スケールの特徴は、サブカテゴリ―の項目です。

1.信頼・自信・自立の構築
2.社会的、情緒的な安定・安心
3.言葉・コミュニケーションを支え、広げる
4.学びと批判的思考を支える
5.学び・言葉の発達を評価する

学びとケアのアウトカムに沿ってカテゴリーがつくられ、
「何のために」「なぜそうするのか」を毎回目にしつつ
具体的な実践を評価する項目が並んでいます。

各項目の実践を評価する指標は、こんな感じです。
【サブスケール1】信頼、自信、自立の構築
項目3 小グループ・個別のかかわり、保育者の位置取り
とてもよい 7.2 すべての環境を通して子どもたちの学びの足場かけをすることに十分な時間をかけている。また、子どもたちの学びの足場かけする際、自分がかかわっている子どもたちの姿に集中している。その一方で、他の子どもたちに対しても気持ちを向けていて、応答的である。

他者が保育を観察し実践を評価するためのスケールとしての本ですが、
私がもし保育実践者として使ならば、
評価チェックなどはしません。たぶん。
①各項目の「よい」「とてもよい」実践を読んでいく。
②信頼の構築だったらもっとこんな実践もある、とカテゴリーを見ながら本に書き込んでいく。
③気がつくことをどんどん空欄に書き込んでいく。
そういうノート的に使っていくと思います。(もちろんその後全部読みますが)

チームで、実践を高めるために読むときには、
①まず本を読む前に、「信頼、自信、自立の構築」というテーマで、グループに分かれて
「不適切な実践」と「とてもよい実践」として思いつくことを模造紙などに書き込んでいく。
②書き終わったら他のグループの内容も互いに読む。
③本に書かれている、不適切ととてもよいの内容を読む。
④気づいたことや、疑問点、意見などを交換する。
こんな感じで使うかなと。
「この本との対話で私たちの新しいスケールをつくろう」という意識で使うと思います。

このスケールは関わりの質を振り返りやすい内容です。
関わりの質は、構造の質に左右されます。
もしも関わりの質の問題が大きいと感じた場合は、
まず物的環境を整え、時間の環境を変え、
クラス編成、グループ編成などを変えることが最優先かと思います。

スケールの内容、後半の遊び、発達のまとめ部分も含め、この本を読むことで、日本の先進的な保育実践のレベルがいかに高いかを再認識させられました。日本の素晴らしい実践を、すべての園の質確保のために使える方法はないものでしょうか。

子どもと環境の関係について考える本2016/03/24

この1か月間、車椅子に乗って様々な体験をしました。
自分でやりたいのにできない2歳児の悔しさを味わい、身近な人の優しさにふれ、「お手伝いしましょうか」と声をかけて下さる見知らぬ方の多さに感激し、あきらめることを知り、子育て中もこうだったなと思い出しました。

さて今回は、人間と環境の関係について考える本の紹介です。
質問をいただいたS先生、遅くなってすみません。



深さと拡がりは深海級。引き込まれるとなかなか戻れなくなるのがこの2冊。
大橋力「音と文明ー音の環境学ことはじめ」岩波書店2003
河野哲也「環境に拡がる心ー生態学的哲学の展望」勁草書房2005*

人間と環境に関する研究の本では、
ロバート・ギフォード他「環境心理学(上・下)」北大路書房2005
波多野誼余夫「認知心理学 学習と発達」東京大学出版会1996
佐々木正人「アフォーダンスと行為(身体とシステム)」金子書房2001
エドワード・S.リード「アフォーダンスの心理学ー生態心理学への道」新曜社2000
認知心理学、環境心理学、生態心理学が、発達心理学と共に「保育の心理学Ⅰ」として保育者に必要な知見が整理されるといいですね。(私にはできませんが)

乗り物の中での読み物として、面白く読めるのはこの二冊。
三島博之「エコロジカル・マインドー知性と環境をつなぐ心理学」日本放送出版協会2000*
傳田 光洋「皮膚は考える」岩波書店2005
身体の重要性を改めて感じることができます。

*印はブログで以前にも紹介したことがある本です。

子どもを信じる保育者と「かわいい~」2015/12/24

今年も、森のようちえんピッコロの中島久美子(なかじまくみこ)先生に、授業のゲストに来ていただきました。

何度お話を伺っても、初めてルソーの『エミール』を読んだときのように興奮し感動します。
子どもって、なあんてすごいんだろう、
子どもの力を信じることには、何と力があることだろう、
保育って、なんて素晴らしい仕事なんだろうと、
胸が一杯になってしまうのです。
学生たちも、中島先生のお話にシンと引き込まれていました。

保育者がどんな「子どもへのまなざし」を持っているか。
「子ども観」をどう育てるか。
保育者養成と研修の大きな課題です。

私には、子ども観を変えるような授業はできませんが、
中島先生のお話には、子ども観を変える驚きがあります。


森のようちえんピッコロ
森のようちえんピッコロ『子どもを信じて待つ保育』、『群の視点』。


今回、一つわかったことがありました。
それは「かわいい」に関すること。

中島先生が、最初にいくつか写真を見せてくださったのですが、
ハッと息を飲むような写真に対しても、
「かわいい~」と黄色い声があがりました。
私は、(ああ、この写真も、かわいいなんだ)と、ひどくがっかりしました。

これまでも、園見学で学生が「かわいい~」を連発していると、
(なぜ、どこがかわいいなんだろう)と不快に感じることがありました。
かわいいとしか感じないのであれば見学に行っても仕方ないのでは
と、その年度は見学をやめたりもしました。

なぜ、「かわいい」を不快に感じるのか、
自分でもよくわかっていなかったのですが、
私は、「かわいい」という言葉から、
子どもを下に見ている印象を受けるからだとわかりました。

中島久美子先生のお話を伺うと、
子どもの感性や許容量の高さ、心のまっすぐさに驚き
(子どもってこんなことを考えているのか)と圧倒されるばかりです。
そのときに「かわいい~」と言われると、
なんだか子どもをバカにされたように感じてしまうのです。

子どもを(かわいいなあ)と、愛おしく思う「かわいい」と、
「かわいい~」という黄色い言葉の違いがやっとわかりました。

子ども観が変わったとき。
それは、子どもの行動を見て、
「かわいい~」と言わなくなったときかもしれません。

保育を変えてみようと思っている人に2015/12/06

千葉県富津市の和光保育園さんの実践が
ひとなる書房さんから本として出版されました。

「子どもに学んだ和光の保育 希望編 育ちあいの場づくり論」
鈴木まひろ・久保健太著、ひとなる書房、2015
「子どもに学んだ和光の保育 葛藤編 響き合ういのちの躍動」
鈴木秀弘・和光保育園職員・森眞理著、ひとなる書房、2015


鈴木真廣(まひろ)先生が書かれた希望編を先に読了しました。
私には、とてもこの本の奥深さを表現することはできないので、
帯の言葉をそのまま載せます。

「子どもは、その主体性の発揮を存分に保障され、
生活と遊びの主人公として尊重された時、
私たちの想像をはるかに超えた豊かな学びの物語を
自らの内に紡いでいきます。
そのために、子どもたちの可能性を信じて葛藤する
和光の大人たちの姿は感動的です」。

今、保育を変えてみたいと思っている先生方は、
まず1章「子どもが主人公になる保育への転換
 保育見直しの中の私たちの葛藤」
から
読み始めるのも良いかもしれません。
保育園を継いだ鈴木真廣先生と先生方が、
保育者主導の保育を
子ども主体の保育へ変えるために
試行錯誤された33年間が描かれています。

子どもとは?、保育とは?、
保育者の役割とは?と
授業を聞きながら混乱している学生さんは、
2章の「新たな教育観と保育の『真』と『深』」から。

園から地域へと子育て文化を発信したい、
地域コミュニティの再生につなげたいと
今様々な取り組みを行っている先生方には
3章「わこう村『子ミュニティー』育ち合いの場をつくる」
から読み始めることをお勧めします。

そして最初から読み直すことで
鈴木先生の深い哲学が染み入ってくるかと。

理論と哲学することが好きな方には
序章からぐいぐい読める本です。

余談ですが48ページに、
遊びから食事への切り替えに
選択の幅を持たせる保育を、
研究大会で発表すると、助言者から
「この園の躾はいったいどうなっているのか」と
厳しく指導を受けたエピソードがあります。

ちょうど今月の雑誌『げんき』の連載「保育かわらなきゃ」でも
レストラン形式で食事をする園児を見た指導者から
「こんなことをやっていたら食事の躾はどうなるんですか」と
見直しと報告を指導されるエピソードを読んだところでした。

昔も今も保育を変えようとしたときの批判の質は似ていますね。
皆さんはどのように考えますか。

クラスに置く絵本選び2015/04/14

4月の大変な時期に保育者を助けてくれるものは、砂場と、動物たちと、絵本と玩具。
この中で、どの園にも必ずあるのが絵本です。
初めて出会う子どもの興味や関心も、さまざまな絵本を置くことで把握しやすくなりますね。

幼児教育の機能を果たしている保育園や幼稚園には、必ず、数百冊の絵本が常設されていると思います。
保育者は、そこから自分のクラスにどの絵本を置くか、教材選択をしなくてはなりません。学校では、絵本選びの基準を学んでいても、数百冊ある絵本のなかから自分のクラスの本を選ぶのはなかなか大変。どうしても自分の好みに偏りがちです。そこでお薦めしているのが、こどものとも社の絵本カタログを活用することです。この時期、各社の営業マンがやってきて新しいカタログと古いカタログを交換しますが、園長先生に言って古いカタログをもらってしまいましょう。

2011年の「こどものとも社総合カタログ」
私はゼミ生用に、とも社に電話をして、回収した古いカタログを分けていただいています。


トップページに0歳から年齢ごとにお薦めの絵本があります。新人の頃はこれを目安に。


母の日、運動会など行事ごとに絵本が並べられたページも活用しやすいでしょう。


あやとりなどのあそびの本もクラスには置いておきたいですね。


保育者が、その季節に合った絵本を選びやすいように、月間ものがたり絵本や科学絵本を4月から月別に並べている園もあります。(川和保育園さんで教えていただきました) 
また、絵本をあいうえお順に置くよりも、012歳児向けは別に分け、3歳以上児向けの絵本もからだに関する本、色・数・形に関する本、詩・となえ・言葉の本、シリーズ本と分けて置く方が、先生方が絵本を活用しやすくなるかもしれません。(誰か、絵本棚を卒論で研究しないかな?)

各クラスに置かれた絵本には、保育の専門性が現れます。
最近は、大人感覚の絵本も増えましたが、絵本は子どもの心の奥深くに残る物語。
子どもの文化として、絵本を選んでいきたいですね。

はう運動あそびで育つ子どもたち2014/11/28



朝、川沿いを歩きながら、「おはよう、おはよう、ゆげがでる、はなからくちからぽっぽっぽ・・・」と歌が出るようになりました。(誰かに聞かれたら怪しい人です)。関東では、一気に冬の朝を迎えています。


最近あちこちでお勧めしていますが、またもや、保育の現場で日々尽力されていらっしゃる先生方に、「絶対におすすめです」と自信をもって言える本の紹介です。

今井寿美枝「『はう運動あそび』で育つ子どもたち」大月書店、2014



今、保育者の研修テーマには、「特別なニーズをもつ子ども」「気になる子ども」などが並びます。先生方が特別な支援を必要とする子どもを理解したい、具体的に支援する方法を知りたい、というニーズは高いと思われます。

私も研究で全国の園におじゃましながら、いつも気になるのが子どもの体体幹が安定せずにふらふらとした姿勢で歩く子どもがどのクラスでも目につきます。つい研究を忘れて、「さくらんぼリズムなどを保育に取り入れてみてはどうですか」とお話することがありました。さくらんぼリズムは、発達を系統的に捉えたリズム運動で、感覚統合理論とも合致します。運動量も運動のバリエーションも多く、乳児期の動きの経験不足を補う効果や療育としての効果も高いと感じてきました。しかし、さくらんぼリズムには広い空間が必要です。

この本で紹介されている「はう運動あそび」は、狭い室内空間でも全身を使うことができ、運動量が非常に多い活動です。『はう運動遊び』で育つ子どもたち」は、チャイルドハウスゆうゆう(児童発達支援事業施設)の22年の実践をもとにして、はう運動あそびを中心にまとめられた本です。

第一章の、「『はう運動あそび』でこんなに変わる」では、「丈夫な体になる」、「よく眠れるようになる」、「なんでも食べられるようになる」、「ゆるいうんちや便秘が解消されバナナうんちになる」、「手先が器用に使えるようになる」、「笑顔が輝くようになる」、「ことばが増え、理解力が育つ」、「多動や問題行動がおさまる」と各項目ごとに、保護者の体験談が紹介され解説が語られます。その変化があまりに劇的すぎて、子どもが変わる実践を経験したことがない場合、信じられないかもしれません。私は、親御さんたちの喜びをともに感じながら、実践に圧倒され、ときに「すごい、すごすぎる」とつぶやきながら読みました。理論をもつ実践者の真骨頂を見せていただいた思いです。

第二章、「『はう運動あそび』と『生活リズム』の相乗効果」では、「発達の順序性を知る」、「生活リズムを整える」ことについて理論的な解説が、Q&A形式でわかりやすく書かれています。保育者が保護者に伝えたいことがわかりやすくしかも「やってみたい」という気持ちがわくように表現されています。保護者への貸し出し用書籍としても準備しておきたい本です。

第三章、「『はう運動あそび』の実践」では、狭い空間であっても、保育者が一人でもできる日常的に保育に取り入れやすい「はう運動遊び」が28種類も紹介されています。すべてが写真かイラスト付き。どの写真も本当に楽しそうです

今井寿美枝先生は、児童養護施設、保育所の保育士を経験された後、1992年より「チャイルドハウスゆうゆう」を開設されたそうです。今井先生は、河添邦俊先生の理論に学び、生活リズムとはう運動遊びを中心に据え、笑顔が輝く子どもたちを育むことに力を尽くしてこられた方だと、この本で知りました。お目にかかってみたい先生がまた一人増えました。

他にも今井先生の本には、故丸山美和子先生と共著の「生活とあそびで育つ子どもたち」(大月書店)があります。

一人ひとりを大切にする保育2014/11/17

書店に平積みにしてほしい本が出ました。一斉型の生活と遊びを、一人ひとりを大切にした保育へとどのように変えていったのか、保育を変えたプロセスが描かれた待望の一冊です。

サライ美奈著、全国私立保育園連盟保育国際交流運営委員会編『ハンガリーたっぷりあそび就学を見通す保育 一人ひとりを大切にする具体的な保育』かもがわ出版、2014.7



第一部は、サライ美奈さんによるハンガリーの保育・就学前教育の紹介です。美しいカラー写真は、「一人ひとりを大切にした保育」を象徴しています。私も海外の保育の写真を見てショックを受けたことが自分の保育を変えるきっかけになりましたが、これまでにない編集で、ハンガリーの保育がわかりやすく紹介されています。

とくにお薦めしたいのは、第二部です。全国私立保育園連盟保育国際交流運営委員会委員長であるユリアさんが、わらべうたとの出会いから、園の保育を見直し、担当制と流れる日課へと、どのように保育を変えていったのかを具体的に説明しています。保育を数年をかけて変えている園を、今各地で目の当りにしながら、その経緯を伝えることが私にはできませんでした。

第二部では、一斉に保育を変えたわけではなく、取り組める部分から少しずつ変えていった経緯が、ていねいに説明されます。そして、「まるで戦場のような慌ただしさで食事の後は食べこぼしがいっぱい」だった乳児クラスの食事風景が、「子どもたちが落ち着いて食べることに集中」するようになり、保育士も「子ども一人ひとりを介助できるようになった」など、子どもの変化と、保育者の気持ちの変化についても記されています。これから保育を変えていきたいと考えている保育者に、ヒントと大きな希望を与えてくれるだろうと思いました。