「飾らない保育環境」を連載中2013/08/01

小学館「新幼児と保育」で、今年は、「飾らない保育環境」を連載しています。
とはいっても、私の書き下ろしではなく、実際に記事を書いているのは小学館のエディター、神崎典子さん。
神崎さんが私にインタビューをして書き、それを私が校正します。「○○先生監修」と書かれている記事や本は、その先生が直接書いていないことを示しています。聡明な編集者の方がまとめてくださった内容は、私が書く文章よりも読みやすいことが多いものです。
4・5月号から並んだ「新幼児と保育」。今月、池袋のジュンク堂書店では、平積みになっていました。


「飾らない保育環境」は、4・5月号の環境構成とは何か、環境の要素の説明から始まりました。


6・7月号は「感性を育てる色彩の調和」。8歳頃までの環境で育つと言われる色彩感覚。保育室内の色彩環境に、こだわりました。色彩分析で、色の調和が良いと評価された園の写真を使っています。


8・9月号は、「子どもだからこそ、本物を」

保育室には、遊びの素材と道具があふれ、子どもたちの遊びが残り、絵本が並べられていれば、それだけでもにぎやかで、壁に飾りは不要なはずです。しかし、どうしても飾りたい場合には、本物の季節飾りや、野菜や果物や木の実などの自然物や、絵画や写真などの本物を飾りましょうと、具体的な提案を行いました。

乳幼児の環境は幼稚でいい、と誰がいつから考えるようになったのか。
色画用紙の壁面飾りから、子どもたちは季節感を本当に感じとっているのか。
色画用紙の飾りは、子どもたちの豊かな感性を本当に育むのか。
幼稚な環境で育った子どもたちは、将来どのようなものを志向するようになるのか。
多忙な保育者が、貴重な時間を使って、飾りに時間を割く必要があるのだろうか。
さまざまな園で先生方から環境構成の意図について話を伺い、認知心理学、環境心理学などを読む中で、これらの疑問が大きくなりました。

壁面製作を環境構成と呼んでいたり、保育者の技術と言われることがあります。しかし、雑誌を真似して壁面を作ることは、子どもの発達や保育の原理などを知らなくてもできます。保育者の技術と呼べる環境構成は、子どもの活動を想定したものであり、その前提に、保育の専門知識があるものを指します。


次回の予定は「自然をとりこむ」。まち中の保育所、駅前保育所などが増え、子どもが育つ環境は貧しくなるばかりです。しかしビルのなかでも、屋外の豊かさの要素を取り込むことはできます。屋外へ出られない、自然物をさわれない地域がある今だからこそ、屋内に自然物と自然の要素を取り込む提案をしたいですね、と神崎さんと話しています。

環境構成の理論については、園と家庭をむすぶ「げんき」エイデル研究所で、連載中です。次号には、保育士のコンピテンシー(力量)リストを掲載します。

7階で、ダンゴムシ展開催中2013/08/06

池袋のジュンク堂の7階で、ダンゴムシ展を発見。(保育の本は4階)
奥山風太郎・みのじ『ダンゴムシの本 まるまる一冊だんごむしガイド』DUBOOKSの出版記念だそうです。
保育園のロッカーや、靴箱には、よく子どもたちにつかまえられたダンゴムシの死骸がゴロゴロ転がっていたものです。子どものポケットの中にもよく入っていました。

ダンゴムシの顔って・・・・。


ダンゴムシのパネル展示。
オカダンゴムシ、ハマダンゴムシ、セグロコシビロダンゴムシ、ハナダカダンゴムシなど、
ほとんど、唱え言葉の世界。

もちろんダンゴムシの本とTシャツを買って帰りました。
ついでに買ったカマキリのバッジは、研究室に飾りました。
天井から下がったダンゴムシのオブジェ。ほしかった。

ダンゴムシ展、9月4日までだそうです。

保護者への通信に使える!育ちとかかわり方辞典2013/08/11

またまた小学館の雑誌の紹介です。『新幼児と保育 特集 0・1・2歳児の保育』
家庭に届けたい保育のスキル「子育て」と「保育」をつなぐ保存版だそうです。
この表紙だったら、小脇に抱えて歩いても、恥ずかしくない。保育雑誌には珍しいシンプルさです。


私は、複数の出版社の方から、「保育雑誌や保育の本は、幼稚で派手な表紙でないと売れません」と言われたことがあります。専門職の雑誌で、表紙にくまちゃんやうさちゃんが並ぶのは保育雑誌だけ。保護者向けの育児雑誌の方が、心理学や教育学が盛り込まれ、専門的な内容であったりします。
保育者の聡明さを信じ、保育雑誌界の常識にチャレンジする雑誌を、みんなで応援したいものです。

さて、「乳幼児の育ちとかかわり方」事典。
睡眠や食事場面でのよくある悩みから、三項関係の成立と言葉の発達、自我のめばえと、折り合いのつけ方、だだこね、かみつきとひっかきなど、保護者も保育者も同じように困り、悩みがちなことをテーマにした特集です。
懇談会や連絡帳の回答、お便りの参考にもなりそうです。



時々、若い先生から、「私は子育ての経験がないので、保護者から相談を受けても自信がなくて」と、言われることがあります。でも、相談をされること自体が、保護者から信頼をされている証拠。保護者は信頼していない先生に相談したりはしません。若くても、保育士としての専門知識と経験に信頼をおいて、話をしていらっしゃるのでしょう。
0・1・2歳の行動は、初めて子育てをする親にはわかりにくい行動ばかりです。乳児の行動の意味を、専門知識に基づいて、説明・代弁できるといいですね。

また、「わたしの保育 実践記録およびエッセイ」の募集も載っていました。締め切りは9月10日(火)だそうです。今年も入賞作品を読むのが楽しみです。

アウトカム基盤型教育と協同学習2013/08/16

医学教育、看護教育の書棚から、またまた刺激的な本を発見。


田邊 政裕「アウトカム基盤型教育の理論と実践」篠原出版新社、2013
2011年広島で開催された日本医学教育学会のシンポジウムがベースになっているそうです。


安永 悟 「活動性を高める授業づくり 協同学習のすすめ」医学書院,2012
「看護教育」に連載された内容を再編した本だとか。


私は国際理解教育で参加型学習を学び教育に活用していました。昨年は、これまで作成した参加型学習の手法を整理して発表もしました。ところがこの本を読んで、私は「協同学習」の本質を理解していなかったことがわかりました。協同学習の実践を紹介した本は何冊も読んでいたはずなのに、単なるグループ学習だと誤解をしていたとは。さっそく本屋に電話して関連図書のとりおきを頼みました。

養成教育の質は、保育の質に影響を与えます学習のプロセスは隠れたカリキュラムとしてアウトカムの質に直結します。協同性の高い保育者を養成しようとするならば、養成教育は協同的な学習である必要があります。私は、教育内容に注目するあまりに、プロセスの質をおろそかにしていたように思います。アウトカムの質保証と豊かな学びのプロセスは並立できる。学び直しです。

JASCE 日本協同教育学会(Japan Association for the Study of Cooperation in Education)
基礎を学べるワークショップは、キャンセル待ちのようです。

保育とデザインのコラボレーション2013/08/24

毎日暑いですね。この暑さの中で子どもたちと元気に遊ぶ保育園の先生方、大変に、大変に、お疲れ様です。
保育園の先生方には夏の特別手当が出るべきですね。




さてレイモンド庄中保育園のCCD(チャイルド・コミュニケーション・デザイナー)の平井瓦さんより、冊子が届きました。「新幼児と保育」を読んで送って下さったのだとか。ありがとうございます。

MARS Design Workshop 「こども+保育士×デザイナー 一年間の記録 Child Comunication Design Project」レイモンド庄内保育園中村幸平、2013



保育園に、”コミュニケーションデザイン”の視点を導入し、保育士とデザイナーが連携しながら、新しい保育園の”カタチ”を目指して実践した取り組みの記録だそうです。


平井さんは建築デザインやアートプロデュースの立場から保育園にかかわり、現在はより深く保育にかかわるようになっていらっしゃるのだとか。ぜひお伺いしてお話を聞きたいと思いました。
レイモンド庄内保育園のFACEBOOK


ときどき、「高山さんはきれいな園が好きだから」と誤解されることがあります。私は、基本的に好き・嫌いで物事を判断しません。とくに保育に関する判断は、専門知識という根拠に基づくことが基本です。教員の仕事は、判断する根拠を学生に教えること。幼稚園や保育園のような公的な機関が、保育内容を、個人の価値観で決めていたら問題ですね。「自分の好きなように保育はやっていいのよ」だったら、養成課程がいらなくなってしまいます。

園の保育内容は、地域や家庭とのバランスで考える必要があります。今、子どもが育つ地域の環境は、人工的で、安心感が低く、殺伐とした景色になりつつあります。ごく一部の恵まれた地域や家庭の子どもは、文化的な環境で育つことができますが、殺伐とした家庭で育つ子どもや、自然とふれあう機会を得られない子どももいます。だからこそ、保育園や幼稚園では自然を豊かに、保育室内もあたたかく美しく文化的な環境を準備する必要があります。

また、子どもたちが、毎日どんなものを見て、どんな音を聞いて、どんな匂いをかいで、どんな手触りを感じているのか、体験が子どもたちの心を育みます。色や形や材質や音など、環境が人を育てています。
乳幼児期の環境は、子どもの感性や価値観にも影響を与えます。色彩の専門家によれば、8歳頃までの色彩環境で色彩の志向性が決まるそうです。大学院では、子どもの頃に住んでいた家と、成人してからの家のデザインの志向性は関連するという研究成果を聞きました。もしも保育園や幼稚園で、人工的で不調和な色彩環境を配置していれば、子どもたちはそのような色彩を好ましいと感じるようになるかもしれません。人工物と人工色ばかりを配置した保育室内で一日中すごす子どもは、草の匂いを不快に感じ、土を汚いと感じるかもしれません。自然とふれあわなかった子どもたちは農業や漁業などの命を支える職業には就かず自然を大切にしたいと思わないかもしれません。

レイモンド庄中保育園さんは、この実践をはじめて一年だそうです。これからが楽しみですね。日本全国の保育内容表現(造形)を教える先生方にも、ぜひ見学に行っていただきたいものです。

TOKYO保育園フェア2013/08/30

日曜日、東京都民間保育園協会が主催する「TOKYO保育園フェア2013」に行ってきました。
47の法人がブースを並べ、ステージでは保育者の体験談や、抽選会などもある学生向けのイベントです。保育者不足のため、今各地でこういうイベントが始まりましたね。就職スーツに身を包んだ学生さんや、普段着の学生さんたちにまじり、各保育園ブースを見てきました。園を新設するという法人も多く、今年の求人は50名程度と書かれたブースもいくつかありました。

各保育園の保育の写真見放題、パンフレットいただき放題、先生から保育内容や待遇を説明していただけるという大変贅沢な内容で、私は約束の時間をすっかり忘れて、先生方に質問ばかりしていたのでした。楽しい~~~。もう来年は最初から最後までいるし。

いただいた粗品のポストイット、メモ入れの羊にお似合いです。
園のパンフレットは、基礎演習の学生たちとも一緒に見ようと思います。

ビタミン剤が欠かせない今日この頃。このブログをご覧いただいている先生方も、どうぞご自愛くださいね。