絵本選びの根拠 ― 2016/05/19
(左上から順に)
まつい ただし, あかば すえきち、ももたろう、福音館書店、1965
いもとようこ、ももたろう、岩崎書店、2001
柳川 茂, 水端 せり, 宮尾 岳、ももたろう、永岡書店 1998
市川 宣子, 長谷川 義史、ももたろう、小学館、2010
松谷 みよ子, 和歌山 静子、ももたろう、童心社、2006
石井 桃子, 赤羽 末吉 、したきりすずめ、福音館書店 1982
いしい ももこ, あきの ふく、いっすんぼうし、福音館書店 1965
時田 史郎, 秋野 不矩、うらしまたろう、福音館書店 1974
瀬田 貞二, 赤羽 末吉、かさじぞう、福音館書店 1966
平野 直,太田 大八、やまなしもぎ、福音館書店 1977
子どもを信じる保育者と「かわいい~」 ― 2015/12/24
これまでも、園見学で学生が「かわいい~」を連発していると、
なぜ、「かわいい」を不快に感じるのか、
(子どもってこんなことを考えているのか)と圧倒されるばかりです。
保育者養成・研修の質を高める ― 2015/08/05
数年前から保育者養成・研修の質を高めたいと授業の工夫を伝え合う研究会をやっています。小学校の先生方の実践の蓄積にははるかに劣りますが、最近、ネットでも大学教員の授業実践を気軽に読むことができるようになりました。以前に日本医学教育学学会を紹介しましたが、今回は、保育者養成や研修のために、参考にしている団体やホームページを紹介します。
遊びの素材を選ぶ ― 2015/06/29
インタラクティブ・ティーチング ― 2014/11/23
今、gacco(大学教授陣による講義を無料で受けられるオンラインサービス)で、栗田佳代子先生と、中原淳先生らによるインタラクティブ・ティーチングの講座が、11月19日から開講しています。学習者が主体的に学ぶ双方向の授業を実現するための考え方や具体的な方法を無料で学べるという何ともありがたい講座です。
保育実習室閲覧用写真 ― 2014/10/28
ごっこ遊びの環境を学ぶ ― 2014/06/01
大学教員の採用基準 ― 2013/12/30
「カリフォルニア大学の教員採用基準」
① 専門科目に対する能力を十全に備えていること。
② 専攻分野において、弛まぬ進歩を遂げていること。
③ 授業のための教材を組織化し、これを分かりやすく提示する能力をもっていること。
④ 授業の主題と他の分野との関連性を学生に分からせる能力を持っていること。
⑤ 学習・教授課程において、学生の意欲をかき立てるとともに、教師も情熱を持っていること。
⑥ 入門段階の学生には好奇心を起こさせ、より進んだ学生には創造的な勉学を促す能力を持っていること。
⑦ 学生に対するガイダンスや助言活動に熱心に関わっていること。
竹村牧男「大学教員としての教育能力のあり方について」Toyo University FD News 第12号 東洋大学
う~ん、列挙されると努力目標が明確になりますね。私はどれも頑張れといったところですが、とくに今の課題は③。私のように実践者が大学の教員になる場合、改めて高等教育に関する学びを得て、経験を相対的に使う姿勢が必要になります。具体性のある話ができることは実践経験者の強みですが、内容が具体に偏りすぎたり、具体例を使うことで教員の主観や経験話の授業であると、学生に誤解をさせる場合もあります。
研究成果だけを講義しても実践者の養成教育はできず、理論に基づくことのない経験と主観を話すことも高等教育としてふさわしくなく、理論と実践とを結びつける授業内容と方法を研究し、保育者養成教育の教材開発をすすめる必要があります。理論を実践で活用するには、原則的な理論を構築しその教授を優先することも大切だと考えています。科目内での教育課程編成も一つのポイントとなりますが、興味深い研究成果を見つけました。
勝野頼彦「平成24年度プロジェクト研究調査研究報告書5 社会の変化に対応する資質や能力を育成する教育課程編成の基本原理」『教育課程の編成に関する基礎的研究』 国立教育政策研究所,2013
←の矢印をつけた部分です。
保育者を、福祉と教育の専門職として養成する教育について来年も模索を続けたいと思います。
今年もお世話になりました。皆様、どうぞよいお年をお迎えください。
基礎ゼミで岩波ブックレット ― 2013/12/10
子ども支援の第一段階として、子どもが育つ環境としての地域・家庭の理解を挙げ、グループで地域のフィールドワークを行ったり、自分が住む地域の支援の現状を調べたり、文献にあたったりしました。
しかし、その子育ての問題が発生する要因である貧困や、環境汚染や、消費文化の問題など、社会問題を扱う時間が取れず、出す課題の量にも限界を感じていました。福祉・教育のありようを考えるには、現実に社会で起きている問題を理解することからしか始まらない…。でも、悩み続けていると、ある朝(あるいは夜中に)、突然アイディアがパッとひらめくのが常です。
「そうだ!岩波ブックレットがある!」
薄くて、わかりやすい文章。一つのブックレットに一つの社会の課題が示されています。学校の行きかえりに読むのにもちょうどいい量です。さっそく課題を出してみました。終わって図書館へ行くと一年生が本を選んでいます。「どれもこれもおもしろそうで迷う」と、彼女たちの手には数冊のブックレットが抱えられていました。いいかも。
私は農薬汚染のブックレットを借りに行ったのですが見つからず、代わりに2冊借りてみました。
岩波書店 岩波ブックレット
角田和彦「劇症型アレルギー」岩波書店,1998
子ども支援学演習Ⅰでは、虐待等、子育てで起きている問題は、母親や個別の家族の問題というよりも社会全体の問題であること。子育ての課題は、私たち一人ひとりの価値観や暮らし方の課題であること。一人でもできることがああること。私たちはみんなつながっていて、ほんのちょっとの優しさと勇気で誰かを幸せにすることができること。そんな気づきが得られればと思います。基礎ゼミの最後では、「教養がある人」の行動や暮らし方のイメージについて、学生たちに話を聞いてみたい。
西日本新聞社の食に関するブックレット「食卓の向こう側」シリーズも、図書館にリクエストしました。(朝霞図書館では、ブックレットや文庫の棚ではなく、食品や栄養の書棚に所蔵されています)「ペットボトル症候群」や「フェイク(もどき)食品」など、身近な食の問題が取り上げられています。O‐157や発ガン性物質が、食べ物をよく噛むことで毒性が低下する話など、興味深い取材記事もありました。
私の場合、食に関する問題を読むと、しばらくは粗食・小食になるので、ダイエットにピッタリです。
講義で学生の活動性が高まるしかけ ― 2013/10/17
昨年は、全国保育士養成協議会で、講義で使用してきた参加型の学習を整理して発表しました。その後、お会いした方から、「あれ、使ってるよ」と声をかけていただくと、とてもうれしいものです。
保育では、体を通した学びを重視します。成人の学習でも、表現したり、人と意見を交換しすり合わせたりと身体をいったん通すことで、知識が腑に落ち、学びを深めることができると実感しています。
また保育は体を動かし、他者とコミュニケーションをとる仕事なので、講義を一日中黙って聞いていることが得意ではちょっと困るかなと。授業を通して多様な人とコミュニケーションをとることや、得た知識を相手に伝わるように表現することが得意になるようにと意識しています。
今回は、これまで専門学校や短大等で使用してきた学生の参加度が高まる授業の手法を紹介します。これらは本や研修で学んだり、自分で開発したもの。授業の規模は50名程度ですが、100名以上の講義でも活用できます。しかし手法は教室のハードに制限を受けますので、教室によっては使えない手法もあります。これらは毎回全部を行うわけではなく、90分間に、講義を聞いてノートをとる学習と、活動性が高い学習を組み合わせて行います。保育と同じで計画通りにはいきません。
1)前回の復習と導入
①前回のキーワードを提示し説明するコメントペーパーを提出
→遅刻が多くて困ったときには最初の15分間で課題提出を数回行うと遅刻が減りました。
②課題の作品を教室の後ろに並べ全員で閲覧する
→お便りなどイラストを使った課題は必ず全員で閲覧します。
③課題の作品やコメントのうち、いくつかをパワーポイントで紹介する
→お便りであれば、キャッチコピーが上手い、保護者の視点に立った言葉づかい、イラストが味があるなど良い部分を取り上げます。
④課題の作品や調査結果をグループで発表する
→数人がグループで発表する課題は、時間を測り、発表者はその時間内は立って話し続ける仕組みにします。一番よかったと思う人を「せーの」で指すこともあります。
⑤課題に互いに赤ペンとコメントを入れる
→肯定的なコメントを書くように促します。
⑤今日のキーワード等を提示し、ノートに講義を受ける前の自分の考え等を書く
→たとえば環境認識の発達がテーマのときには、1歳、3歳、5歳の絵を想像して描く課題を出します。
2)講義の理解と思考・発展
①マイクを回して質問に回答する
→たとえば環境構成の必要性を理解する授業では、保育室の写真を示してそこで生まれる遊びを一人ずつ話します。「正解はありません」「どんなちょっとしたことでもいい」を繰り返します。
②示された質問に対して全員がジェスチャーで回答する
→大きく○×を作る方が活動性は高まりますが、胸の前で小さく○か×かを出す方が安心なようです。
③あるテーマについてグループ(3~4人)で話をする
→正解がなく原則をつかむ課題や、思考を深めるなど非常に使いやすい手法です。グループでの課題は難しいものがよいようです。
④説明された概念を1分間にまとめ2人組で話し、その後一人が全員の前で発表する
→斉藤孝さんの授業の真似です。定義化がすんでいるもの、指針や要領の内容など必ず理解する必要があることに用います。重要な概念の場合には、相手を変えて二回、三回話をした後にじゃんけん大会で発表します。理論の講義は学生を睡眠へいざないますが、1分で話すことを予告しておくと眠れなくなるようです。
⑤読んでまとめる
→テキストの一章分を読んでくるように課題を出しておき、一章分を20分間でA4一枚にまとめます。その章に含まれる重要な概念をコメントシートに10分でまとめることもあります。保育内容科目では、保育所保育指針や幼稚園教育要領のねらいと内容を書き写し、内容に関連するイラストを必ず入れる課題を出します。
⑥概念を補足する子どもの姿(写真)をノートに絵で描いて写す
→乳児の手指操作や身体の発達などを理解するときに使います。机間を回りながら「手首はどんな動きになってる?」とコメントするなど、一人ひとりがポイントを見取っているかを確認します。
⑦子どもの行動や表情、言葉の真似をする
→乳幼児の発達や心の理解が深まります。体のどの部分が緊張しているのか、どんな気持ちなのかを感じ取ることができます。
⑧概念は、声を出し体を使って覚える
→1年で学習した内容を3年では忘れていることに悩み開発した手法です。発達の原則など生涯忘れてほしくない理論は、声を出し振りをつけて覚えます。身体を使った豊かな表現は保育者に必要ですし。ただ真面目キャラの私にはちょっとつらいです。
⑨数人で今日のノートを見せ合う、相手のノートに肯定的なコメントを書き入れる、グループでお勧めノートを一冊選び発表するなど
→コメント力は保育で日常的に使います。否定的なコメント例を出して肯定的に変えることをしておくと「肯定的」がわかりやすいようです。
⑩ワークシートを個人で行い、二人組あるいはグループで話し合う
→指針や要領の理解や構造をつかむなど知識の学習に使います。正解がなく、意見が異なる内容に使用することもあります。
⑪テーマに沿って開発したアクティビティに取り組む
→環境構成の基準を知るカード、机上ゲームで学習する内容に気づくなど開発しました。オリジナルのアクティビティは「教育内容に詳しい」と作成しやすいそうです。
⑫ロールプレイを行う
→保育者と子ども、親と子の関係など、子どもの気持ちを理解するために使います。
⑬模擬保育を行う
→遊びの援助の原則を理解するときには、グループに分かれて年齢別ごっこ遊びなどを実際に行います。
3)終結・学習成果の確認(ここは一人で作成することが原則。課題にする場合もあります)
①講義内の重要な概念をコメントペーパーに説明し提出する
→最後の15分ほどを使います。課題を出した後は机間を回り学生が質問しやすいようにします。
②学んだ概念を中学生や後輩に説明する内容を書き提出。書き出しは「あのね○○さん」と口語体で書く
→論文が上手でも、この課題が苦手な学生もいます。相手に合わせた言葉遣いができるかがポイントです。
③学習内容を、キャッチコピー・詩・イラスト・図で表現し提出する
→文章が苦手な学生は、表現方法を変えると優れた成果を出す場合があります。どこかで多重能力理論の説明をし、課題の意味を伝えておきます。
④学習内容をふまえた事例への対応を考え提出する
→その際、具体的な事例が載る本を、参考資料として紹介することもあります。参考資料はできるだけ実物を教室へもっていきます。
⑤学習内容を保護者向けの通信の形にまとめて提出する
→イラストや本の著作権、職員会議の資料と保護者向け通信で使用する言葉の違いは事前に説明します。
⑥学習内容に関連する保護者の相談事例を提示し回答を書き提出する
→たとえば自我の発達を学んだ後に、子どものイヤイヤに困る保護者の相談事例を出します。
⑦学習内容の中で、重要な概念を問うテストを作成し提出する
→よく内容を理解していないとできない課題です。深く思考する課題を出すと、力を持て余している学生は喜んで課題に専念し、考えることに不慣れな学生は怒り始めることもあります。
参加型の学習は成果物があるため、教員が授業のために使う時間は増えますが、学生の表現力やコミュニケーション力の向上、知識の定着などが目に見えるためとてもやりがいがあります。一人の学生は、これから何十人、何百人の子どもと保護者に影響を与えます。日本中に保育の根幹を理解した学生が増えていくとうれしいですね。まだ今は参加型、活動性が高い学習のレベルですが、主体的な学習のための教材開発と学習環境整備を進めて、協同的な学習へとつなげていくことが目標です。私の場合人間が浅いから内容と手法でカバーです。新人教員がんばります!