こどもの負担が少ない慣れ保育(慣らし保育) ― 2026/04/05
このブログで私の”生存確認”をして下さっている皆さん、いつもありがとうございます。
園でSNS発信をするところが増え、この時期、慣らし保育の映像が流れてきます。
泣いている赤ちゃんを必死であやす先生たちの映像。
絵面(えづら)だけを見れば、「赤ちゃんが泣いてる、かわいい~」なのかもしれませんが、私は基本保育者なので見ているだけでいたたまれない気持ちになります。
1歳のこどもは、大好きなママが2時間たてば戻ってくる、なんていう見通しはもてません。
(ここはどこ?!ママがいない!)と必死に泣くこどもの姿を、流してよいものでしょうか。
映像の保育者も、顔では笑っているけれど、きっとつらく感じていると思います。
今慣らし保育を、こどもも、保育者も、保護者も負担が減る方法へと変えている園があります。
新しい方法を、慣れ保育と呼んでいる場合もあります。
ある園では、0歳の慣れ保育は3月(育児休暇期間中)から一か月かけて行います。
親子で通園し、こどもは園と先生たちに慣れていきます。
食事も午睡も、保護者と一緒に行います。
保護者も、朝荷物を準備してこどもを園へ連れていく生活リズムに慣れ、職場復帰に備えます。
別のある園では、4月の最初は親子で通園します。
保護者が一緒にいれば、こどもは食事もとれるし、午睡もできます。
こどもが園の生活に慣れ、次の段階として保護者と離れる、いきなりではなく、小さなステップをつくっています。
「だから4月はそんなに大変ではないですよ」と園長先生は言います。
こどもの泣きには、こどもの成長に必要な泣きと、不必要な泣きがあります。
慣らし保育によるこどもと、保護者と、保育者の苦しみは、方法を変えることで軽減できる苦しみではないでしょうか。(偉そうにごめんなさい)。

車まんなか社会をこどもまんなか社会に ― 2026/01/27
あっという間に年を超えてしまいました。
2026年は、いよいよ多くの保育現場が変わり出す、という予感がしています。
「こどもまんなか社会」も、三年目に入ります。
子育て支援元年と比べると子育て家庭への経済的な支援、相談体制の充実など子育てを応援する制度が揃ってきました。ただ何十年も変わらないままなのは、こどもが育つ、こどもを育てる住宅環境と、まちの環境です。
壁や床が薄い集合住宅では、こどもが走ると苦情、泣くと苦情です。
こどもが走るだけで叱らないといけない家で子育てをして楽しい人はいないでしょう。
運動という基本的な欲求を充足できないこどもも問題を抱えかねません。
こどもを外で遊ばせたい”意識高い系”の親だってつらい。
こどもと歩けば危ない危ないと叱ってばかり、公園には日陰もない、遊具のそばにベンチはない。
道路は、車が優先です。
車はどこでもスイスイ曲がり、ベビーカーや車いす、高齢者は段差のたびに苦労します。
斜めの歩道は、ベビーカー等を押しにくく、体に不自由があると転びやすい。
まちは、社会的弱者に厳しいのです。
こどもたちを育てているのは、人だけではありません。
家も道も街路樹も、こどもたちを育てています。
家庭や地域が、こどもを育てる環境として貧しいと、平日は園にこどもを預け、休日にはどこかに連れて行き、物やサービスを与える状況が生まれがちです。地域が豊かであればこどもの体験格差も生じにくいでしょう。
子育てしやすい住宅やまちのモデルは、すでにあります。
経済的に恵まれた人が住むまちは歩道は広く、道にも公園にも緑があふれています。
こどもまんなか社会では、住宅と地域環境の格差を減らすハードの充実にも期待したいと思います。

水と緑が豊かな公園
こどもは大人の小型ではない ― 2025/12/17
もう12月半ばですね。発表会にクリスマス会にと忙しい先生方も多いことでしょう。
先日若い先生が、「2歳児は5歳児の小型ではないってどういう意味ですか?」と質問して下さいました。
「こどもは大人の小型ではないですよね。それと同じように2歳児と5歳児は全く異なる段階にいるということです」とお話すると、?????の表情。
あ~!!ルソーとかモンテッソーリって今は保育原理の科目で学ばないんだと気づきました。
わたしは前提をすっとばして本を書いていたのか・・・。
そこで、その質問を受けて図をつくってみました。
こどもは大人の小型ではないことを分かりやすく説明したのが、モンテッソーリです。

青虫は成長すると蝶々になります。しかし最初から小型の蝶で生まれてくるわけではありません。
最初は青虫、そしてさなぎ、蝶々へと姿を変えていきます。
モンテッソーリは、カエルのお母さんがオタマジャクシに陸に上がってジャンプしなさいと言ってはだめですよという分かりやすい例でも説明しています。
その時期、その時期に必要な経験があるということですね。
(敏感期について熱く語りたいけど、長くなるのでやめます)

0歳も、5歳児の小型ではありません。
0歳独自の発達段階があり、その時期に必要な経験は5歳とは違います。
もし早く立ちなさい、歩きなさいと練習をさせたら、不安定な歩行と残念な運動神経につながってしまうでしょう。
2歳も同じです。
一人遊びを止めて集団活動を優先すると、かえって人との関わりが難しくなります。
ルソーも、その時代の人たちに、こども時代には独自の価値があることを訴えました。
何百年経っても、早く早くと発達を急がせる風潮は変わりませんね。
発達が分からないと、「何かをさせなくては」と焦りが生まれます。
その時期の発達と必要な経験が分かっていると、ゆとりをもってこどもを見守れるようになりますね。
質問してくださった先生、ありがとうございました。
関わりの技術を習得できる養成課程を ― 2025/10/26
下書きで不適切保育について書いているときに、またもや不適切保育が発覚しました。
14人の内、10人の保育士が虐待を行っていたとの報道です。
実は私も似たような園で働いたことがあるため、園内の雰囲気が想像できます。
優しい先生は辞め、怖い先生だけが残っていく園だったのでしょう。
保育士による虐待や不適切な行為は、個人の性格の問題だと考える人が圧倒的のようです。
(ニュースのコメント欄の”いいね”を比較してみてください)。
しかし、もしも5つ子を一人で育てている保護者が子どもを怒鳴ったり叩いたりしたら、保護者の性格が悪いと考える人はいるでしょうか。この日本で、5つ子を一人で育て、食事や排せつや午睡の世話をし、毎日公園へ連れていき、笑顔で子育てできる人は何人いるものでしょうか。
まして日本のクラス規模は大きく、1歳児で20人、30人以上のクラスもあります。10人の1歳児クラスは少人数の方ですが、それでも一人の保育者がオムツを交換している間、一人で9人の子どもを見ることがしょっちゅうです。個人の資質や人間性で、集団の保育を行える人はいません。

30人でも落ち着いた食事ができるのは保育者に環境構成や関わりの技術があるからです。
現場は努力を重ねていますが、保育者の養成は、まだ集団で保育を行うために必要な技術を習得できる課程ではありません。養成課程は、まだまだ昭和感が満載なのです。
不適切保育を根本から改善するには、保育者の養成課程を改善することが一つの方法だと考えられます。
保育士養成課程には行政指導としてモデルシラバスがあるため、その内容を変えることです。
現在の保育者養成課程には、環境を構成する技術も、子どもと関わる技術も習得できる科目がありません。
私はこれらを研究していますが、教えられる科目がないため、授業ではとても苦心していました。(授業のシラバスはモデルシラバスに基づいて書かなくてはならず、環境構成や関わりを授業で教えようとするとシラバスとは違ってしまい学生との契約違反になってしまうのです)。
たとえば「子どもの理解と援助」という科目はありますが、教授内容を示すモデルシラバスでは、心理中心の内容が示されています。ほぼすべてのテキストが、その行政指導に従って記述されます。そのためテキストには、記録と話し合いによる子どもの「心理」の理解と、抽象的な援助方法が並びます。事例はあっても具体的な技術を習得できる内容がありません。
保育者は、心理の理解と言葉による援助だけで子どもの育ちを支えることはできません。保育では心理の他にも生理、器質(形質)、環境などを把握し、生活全体で援助を行います。保育者は、子どもの心を癒すカウンセラーではなく、育むことが中心の職務です。しかしモデルシラバスには、その方法の教授内容がないのです。
うん十年前、専門学校で教員をしていたとき実習から戻ってきた学生が、「保育者たちは体罰を使っていたが、私は先生に言われていたので絶対に体罰はしなかった。けれど他の大学の実習生は実習の終わりごろには体罰を使っていた」と聞いたことがあります。実習生の立場で、先生たちと違う関わりをするのは勇気がいったことでしょう。
誰でも、聞いたことがない言葉は話せません。知らないことはできません。本能や心がけで、大勢の子どもに食事を食べさせたり午睡をさせたりできる人はいません。
私自身、日常的に体罰を使っていたベテラン保育者が、私の口真似をして体罰を使わなくなった体験をもっています。心や性格を変えなくても、知ることができれば、言葉と行動を変えられる人は多くいるはずです。
研修で、抽象的に「人権を尊重しましょう」と聞いても、新しい言葉と行動の習得はできません。
保育士と幼稚園教諭の養成課程の内容を改善すれば、現役保育者の研修の質改善にもつながります。
養成課程の改善は、予算も不要で、すぐに取り組めることではないでしょうか。
保育は人間の能力をはるかに超えている!? ― 2025/10/13
看護師を対象とした研究では、仕事の達成感が低い(看護ができていないと感じている)人ほど「辞めたい」と考えている率が高くなる結果がありました。保育も退職者を減らすには、保育者が有能感を感じられることが大切でしょう。
しかし、子どもを大切に考えてよく学び、メタ認知(客観的に見る力)が高く、質の高い保育を行っている保育者ほど有能感や達成感を感じにくのが、保育という仕事ではないでしょうか。
保育は、乳幼児期という病気やけがをしやすい時期の子どもの命を守る仕事です。乳幼児期は、保護者がたった一人の我が子でさえ子育てが難しいと感じる時期です。保育者はその難しい時期の子どもを集団で保育します。幼児教育は、小学校の生活科や総合学習のような複雑な展開方法を用います。保育所と認定こども園(連携型・保育所型)の保育者は、教育機能に加えて食事と午睡も行い、保育時間も長時間のため長時間の緊張が続きます。また福祉ニーズも加わるためより高い専門性が必要になります。

高山静子「子育て支援の環境づくり」2018 P98 幅広く高度な専門性を求められる保育者
上記のイラストの下書きを書いたのが2016年、その後障害・貧困・外国籍・メディア漬けの子どもと保護者は増加し、保育者の職務は困難を増しています。

高山静子 ここ最近の研修資料より
保育者は”人間をはるかに超えた能力”を求められています。
「一人の子どもと関わりながらも全員に注意を配りなさい」・・・人間にはそんな能力はありません。
「子どもにずっと注意を向け続けて安全を見守りなさい」・・・人間にはそんな注意の持続力はありません。
「集団の子どもたちを相手にしながら一人ひとりを受け止めなさい」・・・無理です。
「一人ひとりの子どもをよく理解しましょう」・・・人が他者を理解することは困難を極めます。
「子どもにずっと注意を向け続けて安全を見守りなさい」・・・人間にはそんな注意の持続力はありません。
「集団の子どもたちを相手にしながら一人ひとりを受け止めなさい」・・・無理です。
「一人ひとりの子どもをよく理解しましょう」・・・人が他者を理解することは困難を極めます。
長時間の集団保育を行ったことがない”専門家”から机上の空論を言われ、
行政からは、保育を見ずに書類ばかりの監査と指導をされ、
質の高い保育を行おうと努力を続けている園や保育者ほど、無力感を感じやすい状況があります。
保育者は、もっと自分のハードルを下げてよいのです。
今日、一人の子どもにぴったりの環境をつくれたら、「いい保育ができた」と喜びましょう。
今日、一人の子どもと上手く関わることができたら、「よかったよ」と自分をほめましょう。
100点満点の保育をめざさなくていい。30点で十分です。
保育者を、「ただ子どもを預かっているだけ」という目で見る人がいるかもしれません。
研修では、「もっと人間性を高めなさい」と言われるかもしれません。
「保育の質を高めるために文章を書きなさい」という、とんちんかんな指導があるかもしれません。
しかし保育は、個人の資質や人間性で行える職務ではありません。
保育者の職務は、専門知識を学び実践を重ねて修得する専門性で行うものです。
保育者の職務は、専門知識を学び実践を重ねて修得する専門性で行うものです。

保育者の専門性は幅が広く深い(研修資料より)
保育者自身も、保育は専門性の修得が必要な難しい職務だと自覚していないと、
「上手くできないのは、自分が保育者に向かないからだ」と誤解してしまいかねません。
高い専門性をもち何十年も経験があるベテランでも、子どもは一人ひとり違い、子どもの家庭環境も変わるため、日々悩むのが保育という職務です。
書店には「人間関係」に関する本が並んでいます。それだけ人は人に悩んでいます。
小さな子どもたちを一人の人間として大切に考える保育者ほど、悩みが生じるのではないでしょうか。
「上手くできない」と感じているあなたは、よく頑張っています。
毎日、子どもたちに笑顔を向けているだけで、あなたは素晴らしい保育者です。
タイミーさんがいないと園が開けられない ― 2025/08/17
令和5年の保育士の有効求人倍率は3.5倍(全職種は1.35倍)。
4園の内、1園のみが採用できる数値です。
募集をかけても誰も来ない、タイミーさんがいないと園が開けられないいう声も聞きます。
反対に「誰か辞めたら私を雇ってください」という待機保育者がいる園もあります。
また実習生が就職を希望しても退職者がいないため就職できない園もあります。
保育者の採用にも、格差が生じ始めています。
厚生労働省の調査によると養成校の学生が就職先を決める際に重視したことは、
第一位 園の保育理念・方針や保育内容が自分に合っている
第二位 職場の人間関係がよい
第三位 保育環境が充実している、です。
第二位 職場の人間関係がよい
第三位 保育環境が充実している、です。
学生は、給与(第四位)、休暇(第五位)、福利厚生(第六位)等の待遇よりも保育の質を重視することが数値から分かります。
わたしも実習園に就職しない理由を聞きとっていましたが、
・子どもに一日中指示する保育がつらい
・行事の練習ばかりで自分にはできない
・保育者が悪口を言っている
・不適切な関わりをする保育者がいる
・記録の量が多すぎる
という声は本当に多く聞きました。
反対に実習園に就職を希望した学生は人間関係と保育環境の良さを挙げました。
保育環境が良いのは、子どもを大切にしている証拠です。
人間関係が良いのは、保育者を大切にしている証拠です。
環境や人間関係が良い園が自然にできるはずはなく、園長先生の学びと努力の成果だと考えられます。
そのため、そういう園はたいてい待遇も良いのです。
保育の質を高め、子どもも保育者も幸せな保育をつくることは、人が集まる園づくりのためにも有効です。
これからも若者の総数は減り、全ての職種で人の取り合いとなります。
保育者不足で園が開けられない、そんな状況にならないように、頑張りどきは今だと思います。
現場と行政が一緒になって保育の質を高める動きを加速化していきたい。私も頑張ります。
お布団からの三次喫煙 ― 2025/06/08
先日ホテルでチェックインをすると、「喫煙ルームでご予約ですね」と言われてびっくり!!
間違えて予約してしまったようです。でも満室で他に部屋もなくあきらめてお部屋へ。
部屋に入ると思ったよりも匂わなくて一安心しました。
しかし夜に布団へ入ると、布団がタバコ臭くて咳が止まりません。
若い頃、煙モクモクの職場で働いていたためタバコには耐性があるはずでしたが、何十年ぶりの物質に体が驚いたようでその夜は咳続きでした。
これがお布団からの「三次喫煙」かと夜中に納得。これは赤ちゃんや幼児にはつらいでしょう。
ある園では、お預かりする子どもは、「親御さんが喫煙者でないこと」を条件にしているそうです。
その理由は突然死のリスクと、健康被害を防ぐことだそうです。
理事長が書いた本には「衣服に残った成分が有害な化学物質を放出するサードハンドスモーク(残留受動喫煙)についても、健康上悪影響を及ぼすという実証データがあって、とくに乳幼児への悪影響が心配されています」と書かれていました。
スモッグは減っても、タバコの残留化学物質の吸入やら、柔軟剤のマイクロプラスチックの吸入やらと、保育者が考えないといけないことはいろいろありますね。

こんな空気をいつも吸いたい。
本をまんなかに保育を語り合う ― 2025/04/27
改訂版「保育者の関わりの理論と実践」を使って園内研修を継続的に行った園へ伺ってきました。
驚いたのは、先生方の本にたくさんのポストイットがついていたり、線が引かれていたりしたことです。
私が「あれは、何ページだったかな・・・」と探していると、先生方が先に「〇ページです」と回答。
こんなに読み込んでいただいているなんて、読み合わせ用に改訂して本当に良かったと思いました。

その園では、関わりの演習が終わったとのことですので、
次は物的環境についての読み合わせをしてみませんか?とお薦めをしてきました。
保育室や園庭の環境をつくる際にも、理論が真ん中にあると、膨大な玩具の中から玩具を選べるようになります。
手作りの玩具をつくる際にも、子どもがよく遊び込む玩具を作れます。
保育はチームで行いますので、一人だけ知識があるとちょっとつらい。
本を読み合い、本を真ん中にして保育を語り合うことで、よりよい方向が見つけやすくなります。
本が真ん中にあることで、それぞれの「人」に対する意見から、「本の内容」に対する意見となり、感情的な対立が起こりにくくなります。

学びのある話し合いは上の図の左側。経験が専門性へとつながります。
話し合いだけを重ねても、専門性の向上にはつながりません。
園内研修では、一つのテーマは1~2年程度としてテーマを変えましょう。
物的環境が6割か7割できたら、次は人的環境の向上へ。
人的環境が7割できたら、次は保育内容の展開(保育者が提供する文化・活動)の向上へ。
文化の提供もある程度よくなったら、子どもの把握と理解へ。
環境構成を5年も10年も探求するのでは研修時間がもったいないです。
また一人の保育者が環境構成も関わりも内容の展開も子どもの把握も完璧というのは非現実的です。
お医者さんも美容師さんも学校の先生も、技術は人によって違いがあります。
保育でも、(私は子どもをひっぱって集団ゲームをするのが好きだ)とか(私は環境をつくるのが得意)、(自分は絵本が大好き)とかそれぞれに自分の強みがあることでしょう。
自分が得意なことを伸ばして、補い合って助け合って保育ができるといいですね。
読み合わせをしてくださっている皆さん、いつもありがとうございます。
2025年3月末で大学を退職します ― 2025/03/10
公募情報などでお気づきの方もいらっしゃるかと思いますが、
定年よりも2年早く、大学を退職することにいたしました。
退職しても保育の専門性の探求を続け、10年以内には5冊目をまとめたいと思います。
日々現場で頑張っていらっしゃる皆さんと一緒に自分にできることを続けていく所存です。
研究室の整理を続けて最後まで残ったのがこれまでいただいた色紙や手紙の数々でした。

在職中にお世話になった皆さま、ありがとうございました。
そして、これからもよろしくお願いします。
このブログを読んでいるまだお会いしていない皆様、お会いした時には声をかけてくださいね。
講演や園内研修は、地域のこどものとも社さんか郁洋舎さんにご相談下さい。
保育者の不適切な保育をなくすために2 ― 2022/12/17
保育士による虐待をなくすための方法として
「監視カメラの設置」を推奨する番組やページを見ます。
厳罰や管理は、「虐待」を行う保育士には有効かもしれません。
しかし一般の保育者には、どのような影響を与えるでしょうか。
保育士になる人が減り、辞める人が増えるのではないかと心配しています。
日々子どもたちに心と体を尽くしてきて、
休日や夜間も、保育の準備と研修に時間を使い、
体を痛めても低待遇でも誠実に頑張ってきた保育士さんほど、
「監視カメラであなたの行動を監視します」と言われたら、
もうやっていけないと思ってしまわないでしょうか。
保育者の関わりは、時間と空間の環境を変えて、学ぶ機会があれば変えられます。
保育者も、保育者を取り巻く環境に影響を受けています。

詳細は「改訂保育者の関わりの理論と実践」p98 (郁洋舎、2021)
物的環境とは、保育室内に子どもが遊びを広げることができる環境があるかどうかです。
昭和の時代は、保育者が「さあ今日は〇〇をするよ」と保育者が準備し活動を進める保育者主導の保育が中心でした。そのため保育室は小学校の教室や体育館のような状態で、物的環境は整えられていませんでした。
しかし平成・令和では、子どもの主体的な学習を促す環境を構成し、自発的な遊びを中心とする幼児教育へと変わりました。
そのため保育室内は子どもの学びを促すためにさまざまな遊びの空間がつくられています。

「改訂保育者の関わりの理論と実践」p14(郁洋舎、2021)
写真のような物的環境を整えている園では、保育者は子どもと会話を交わすため大声を聞くことがありません。
物的環境が整えられていない園では、保育者の指示に子どもが従う保育が行われます。
本来、乳幼児は、今自分が獲得しようとする能力を獲得できる遊びを自ら選びますが、保育者に指示された活動は、個々の子どもの発達に合わない場合が多くあります。とくに1,2歳児は、自我が発達が著しく自分でやりたいという意欲にあふれており、大人のように指示に合わせてくれない場合もあります。子どもが新しい能力を獲得するた
めには繰り返しが必要ですが、保育者が指示する活動では十分な繰り返しができません。子どもが今やりたくない活動をさせたり、やりたい活動をやめさせるために、保育者はさまざまな「声かけ」を行いますが、そういった場面では、脅しなどの不適切な関わりが生じやすくなるのです。
また、子どもと保育者のストレスを増やすその他の物的環境の問題としては、保育室が狭い、一クラスが20人や30人など規模が大きい、玩具の量自体が少ないことや質が悪いことが挙げられます。
時間の環境は、子どもが自分で判断し行動できるゆとりや
十分に遊び込むだけのゆっくりとした時間があるかどうかです。
たとえば1歳児や2歳児クラスで、全員がそろって「いただきます」をする場合には、昼食の前後は、保育者がバタバタと忙しくなる状況が生まれます。
6時に朝食を食べている子と8時に食べている子を一斉に同じ時間に食べさせようとすれば、子どもを待たせ急がせ、保育者の「声かけ」も必要になります。

保育者のゆとりをもった関わりは、時間と空間の環境から
「改訂保育者の関わりの理論と実践」p14(郁洋舎、2021)
上記の写真のように時間の環境が整えられている園では、保育者が子どもとていねいに会話をしながら食事を行っています。保育者の大声や、一方的な「声かけ」はほとんど聞かれません。
物的環境や時間の環境を変えている園は、園独自で学習を行い、
子どもも保育者も幸せな保育を追求しています。
行事中心、保育者の指導中心の昭和の時代と同じ保育の方法を行いながら、
「それぞれの子どもの思いや願いを受け止めるよう心掛けましょう」
「一人一人の多様性に配慮した保育を心掛けましょう」と
保育者に言うのは、酷ではないでしょうか。
保育者が忙しい、大変だ、つらい、不安だと感じることが多いほど、怒りの感情がわきやすくなります。
このホームページを読むような熱心な行政の担当者の皆さんには、保育者も子どもも幸せになる方向でこの問題の解決を考えていただきたいと思います。たとえば以下が考えられます。
・園内のパワハラ・モラハラ・不適切な保育の相談・通告窓口の設置
・適切な関わりと環境構成ができる保育指導官の選任と保育指導官による巡回指導
・保育内容を適切に監査できる委員の選任
・保育内容が指針・要領に届いていない園への指導方法の検討
・関わり方の園内研修の促進
・保護者への幼児教育理解の促進
(行事や、厳しい指導を求める保護者がいるため)
・乳児期早期の集合検診等を使った家庭の関わり方の支援
(家庭で親に関わってもらえない子どもが多いことが保育者の負担を増やしているため)
・数園に一人の保育ソーシャルワーカーや臨床心理士の配置
・主任業務の見直しや主任業務の指導
・保育者と子どもの対数改善
・記録・保育準備時間の確保のための補助金
・保育者の待遇改善
管理や厳しい指導、プレッシャーが行政・市民・保護者→園長→保育者→子どもへと連鎖しないように、みんなで良い方法を考え続けたいですね。