月カリキュラムは保育に必要か? ― 2026/04/26
保育者の専門性の第5巻目にあたる研究は、「保育実践のマネジメント」。
ここには、保育の計画と記録の作成が入ります。
指針や要領に基づく新しい保育を行っている園では、指導計画の書式を模索しています。
こどもの主体的な活動を中心にすると、昭和の月カリや日案が使いにくくなるのです。
先日、書店で新しい保育に合う指導計画の書式の本はないか、探してみました。
3店舗回りましたが、結局書店で見つかったのは1冊だけ。
ある店舗では、14冊の「指導計画」(345歳児クラス向け)の内、13冊が昭和の指導計画と同じでした。
そして14冊とも「月カリキュラム」が中心であり、週案が掲載されている本が少ないことに気づきました。
他の棚にある保育雑誌は、どれも月カリキュラムが掲載されていました。
なぜ月カリキュラムの本がこんなに出版されているのか。
それは月カリキュラムが、保育者には書きにくく、使いにくいからではないでしょうか。
不思議なことに、質の高い保育を行う園も、そうではない園も、月カリではその差が見えません。
月カリキュラムには、抽象的な内容しか書けません。
各領域で意識したいことは何十もあります。それを一行程度で書くのは難しい。
5領域を総合的に展開するこどもの活動を書くことも難しい。
多様な活動を展開する保育者ほど「保育の計画」ではなく「抽象的な作文」になってしまう。
月カリは抽象度が高すぎるために月末まで見ない、活用できない計画になりがちです。
「保育所保育指針」では、長期的な計画と短期的な計画を立てることが示されています。
長期は、年間・期と、短期は、週・日案です。
つまり月カリは必須ではありません。
14冊のなかで、新しい保育で活用できる書式が紹介されていたのが、以下の一冊です。

ウエブ方式や、環境図方式など、各園が工夫した書式が紹介されています。
ほぼ月カリですが、実際には一週、二週単位で保育者が計画を考えていることも示されています。
多くの園で、月カリも、週・日案も作っています。
これを、月カリと週案を一つにした月・週案(実質的に週案)にするか、
月カリをなくし、実際の保育を計画できる週・日案のみにするか、
月カリは固定(その月に経験したい活動・教材中心)にして、担任は修正のみにするか、
など、新しい計画・記録の書式を集めているところです。
自慢の計画を作成している園の皆さん、近くへ伺ったときにぜひ見せて下さい。
積み木遊びが充実するヒント ― 2026/04/14
積み木遊びの「写真集」が出ました。
北海道から宮崎まで51園のこどもたちが表現した遊びが紹介されています。
積み木のコーナーに置いたら、こどもたちがワクワクしてながめることでしょう。
保育者が読めば、積み木の他にどのような素材があれば遊びが広がるか、素材選びの参考にもなります。
こどもたちが、(どうやって飛行機の羽を丸く作ったのだろう)と試行錯誤が始まったら、
その試行錯誤に任せるもあり、ヒントとして「なんかこの本に積み方がのっているらしいよ。先生は積み木が苦手だからよく分からないんだけどね」と以下の本を渡すのもありだと思います。
園長先生の本棚へ探しにいって借りてくるとか、園長先生にこの本をクラスに買ってくれるように交渉するとか、いろいろな体験に結びつけることもできるでしょう。
困ったとき、行き詰ったときに、本を読めばヒントが見つかる!
分からないことは自分で調べてみよう、見つけてみよう、そういう主体的な学びの姿勢を育みたいですね。
本はタブレットと違って、グループで一緒にながめることができることが教材としての強みです。
指導監査を保育の質につなげる ― 2026/03/10
現場でよく聞く困りごとには、「指導計画」の書式があります。
指針・要領に則って保育を変えた園では、これまでの月カリや週案の書式が使いにくいという悩みを抱えています。マインドマップや環境図を書く方式など各園で試行錯誤していますが、監査では昭和からの伝統的な書式で書くように指導されることがあるそうです。
都道府県や市区町村による指導監査の指摘事項についてネットで調べる内に、東京都中央区で指導監査に携わる方が書いた書籍を見つけました。
書き込み線を引いて内容を熟知したい情報の場合、やはり紙の本が助かります。
本書によると、指導監査には主に「運営管理」「保育内容」「会計経理」の三つの枠があり、本書はこの内、「運営管理」を中心に説明しているそうです。法律をまとめた本と違ってとても分かりやすい。私も本書を読んで初めて知った情報がいくつかありました。
「保育内容」に関する監査の情報は、東京都や東京の各区がネットに指摘事項等の情報を公開していて参考になります。ただ「環境を設定」や「評価・反省」などの「保育所保育指針」とは異なる用語が気になります。
なぜ、こどもを虐待している園は、監査では発見できないのか。
指導計画(書類)は、「保育所保育指針」を超えた細かな指摘が行われるのに、なぜ指針から大きく外れた保育(実践)は指摘事項にならないのか・・・。
保育の質は社会の重要課題です。
本書のタイトルにあるように保育の質につながる監査と保育の書類のあり方について研究を続けたいと思います。
保護者との連絡に使うベトナム語・ポルトガル語・英語他 ― 2026/02/17
以前、日本保育協会さんから保育の用語を英語、中国語、ポルトガル語などに翻訳した冊子が出ていました。
偶然書店で、それらの冊子が一冊の本にまとまっているものを見つけました。
掲載されているのは、中国語、ポルトガル語、ベトナム語、タガログ語、英語、スペイン語。
翻訳されているのは、園の一日、行事、調査票、送迎時間連絡カード、持ち物絵カードなど、
翻訳アプリが便利になったとはいえ、保育でよく使う書類の翻訳を一覧できるのは助かります。
ある園では一つのクラスに10か国語以上の言語を母語とするこどもがいるそうです。
保育も、幅の広い多様性を前提とした保育に変える必要性がありますね。
乳児クラスの遊びの素材と道具選び ― 2025/10/26
012歳の遊びは、発達欲求のあらわれ。
まず、乳幼児の遊びとは何か、「改訂環境構成の理論と実践」p52,53で確認しましょう。
そして参考資料を選ぶ際は、子どもの発達欲求を遊びと捉えている書籍を選ぶようにします。
子どもを喜ばせる菓子のような玩具を掲載する本も多いため、書籍選びには注意しましょう。
以下の本は、発達の道筋に合わせて市販のおもちゃを紹介しています。
オールカラーで、市販のおもちゃと子どもが遊ぶ姿を同時に見ることができる本です。
瀧薫「新版 保育とおもちゃー発達の道すじにそったおもちゃの選び方」エイデル研究所 2018

以下は後半に手作りの玩具が掲載されています。文庫版になって内容は減りましたが、文章の部分を読むと玩具をつくる、選ぶ基本が分かります。今はkindle版は無料期間でした。
相良敦子「モンテッソーリ教育は子を育てる、親を育てる お母さんの「敏感期」2013(文庫版)文藝春秋
上記に限らず、モンテッソーリの考え方に基づく本には、発達に合った玩具が多く紹介されています。

上記に限らず、モンテッソーリの考え方に基づく本には、発達に合った玩具が多く紹介されています。
モンテッソーリは子どもの発達欲求をとらえて環境をつくることを理論化した環境構成の元祖です。
幼児クラスの遊びの素材と道具選び ― 2025/10/20
遊びが幼児教育になるためには、遊びの素材と道具選びが肝。
子どもが遊びを広げる素材には、砂や草花等の自然物、玩具(市販・手作り)、紙などの人工的な素材、廃材等があります。素材に働きかけるための道具には、玩具、生活用品、用具・工具等があります。(「改訂環境構成の理論と実践」p58)
しかし、保育カタログから、子どもが遊びを広げることができる玩具を選ぶことは至難の業です。
そこで、保育室の環境を充実させる具体的な方法を提案します。
まず準備するのはこの本です。同僚と一緒に検討できるとよいですね。
高山静子「学びを支える保育環境づくり」小学館、2017

(準備 第2章の「保育環境で保育が変わる」は環境構成の基礎知識ですので、各自で読んでおきます。
基礎が分かっている場合にはここは省略でかまいません)。
1 第1章の「保育環境最前線」の写真と見出しをざっと見ます。
2 p38のコラムを交代で声を出して読み、実践を振り返って意見を交換します。
3 第3章の「幼児期の学びを支える保育環境」を一緒に見ながら、一つひとつの項目(話し言葉、数量感覚など)の見出しと写真を見ながら自分のクラスに加えた方がよいものに付箋をつけたり、書きだしたりします。
4 第4章の「遊びを豊かにする保育環境」の見出しと写真をながめながら、クラスの子どもの遊びが豊かになるための玩具や空間づくりを考えます。
5 コラム(「遊びで自己制御を育む」等9つある)は、一つのコラムを交代で読みお互いの意見を聴き合う、幼児教育の意義を保護者に説明しやすくなります。言葉での表現力を高めるために声に出して読む、意見を話すことがポイントです。
これらを自分たちのペースで、できるときにできるだけ積み重ねてみましょう。
きっと子どもの姿が目に見えて変わってくると思います。
動物がくれる力 ― 2025/08/27
街頭でしか購入できない「THE BIG ISSUE」、久しぶりに販売者さんを見つけ4号まとめて購入しました。
VOL.506、7月1日号のスペシャル企画は、「スイミー」や「あおくんときいろちゃん」の作家レオ・レオーニ。
絵本の背景にあるレオ・レオーニの育ちや経歴を電車の中で夢中で読みました。
そして特集の「動物たちの力を借りる」があまりにも面白くて、満員電車の中で、「この雑誌知ってます?面白いですよ!」と周りの人に見せたくて仕方がない衝動にかられました。
特集では、アニマルセラピー(動物介在介入)の多様な実践、子どもたちが犬に読み聞かせを行う実践(三鷹市立三鷹図書館)、生きづらさを抱える子ども・若者に保護犬・猫のケアやトレーニングの機会を提供する実践(認定NPO法人キドックス)などのインタビュー記事があります。
アニマルセラピーの多様な実践では、
学校犬や図書館犬、
一時保護所で子どもに寄り添うセラピー犬、
重い病気の子どもの検査や、治療に寄り添うファシリティドッグ、
被害者の子どもが裁判所で証言する際に寄り添う付き添い犬、
少年院等で保護犬の訓練を行う実践など、
わずか数ページの記事のなかに様々な実践が紹介されていました。
加えて、「犬には、子どもの心を瞬時に開かせる力がある」、
「全面的に受け入れられていると感じることができる」、
傷ついた子どもたちが、「傷ついた犬の世話をするなかで生きる力を取り戻していく」、
(いずれも大塚敦子さんのインタビュー)
など、保育にも共通する示唆に富む言葉があふれていました。
も、ぜひ読んでみたいと思いました。
子どもが積み木の本をフル活用 ― 2025/07/13
保育園では、遊びも食事も午睡も一つの部屋で行う園が多くあります。
また幼稚園とは違い、教材費を保護者から毎月徴収しません。
そのため表現の素材として積み木を使う園は、幼稚園よりも保育園に多いように感じています。
(園と家庭の状況による素材選びは、「保育内容5領域の展開」のp186をご覧ください)
木の積み木は、「自然物に最も近い玩具」と言われます。
また基尺が揃う積み木は、プラスチックブロックよりも数量図形感覚を育みます。
「保育環境評価スケール」では、積み木がない園は「不適切」、2人の子どもがそれぞれに遊ぶのに十分な量がある場合は「最低限」と評価されます。
積み木がある園では、よくこの本が積み木の空間に置いてあります。
保育者向けの本ですが、子どもたちがこの本を使っているのです。

子どもたちは、どれだけ読み込んでいるのでしょうか。
先生よりも内容を把握していそうです。
元の本はこちらです。表紙も中身も美しいですね。
倉庫に眠っている保育者向けの造形や制作の本なども、子どもたちの空間に置くとよいかもしれませんね。
言葉かけから応答的な会話へ ― 2025/06/01
雑誌「致知」の企画で、成田奈緒子先生と対談させていただきました。
成田先生は「『発達障害』と間違われる子どもたち」や「子育てを変えれば脳が変わる こうすれば脳は健康に発達する」など、現場の保育者が共感する本を多数書かれています。実際にお会いしてみると小児科医から大学教員へ、大学の仕事をしながら子育て支援を行う思いと行動力にあふれた方でした。
私が編集部に呼ばれた理由は、「3000万語の格差~赤ちゃんの脳をつくる親と保育者の話しかけ」の解説や「脳を育む親子の会話レシピ」を読んで、「親の子どもへの言葉かけについて」話をしてほしいということでした。
しかし私が、「言葉かけ」はむしろ減らすべき関わりで、「応答的な会話」がよいと説明するため、編集部の皆さんを少し驚かせてしまったかもしれません。
書店の子育ての本棚には、「言葉かけ」「声かけ」の本が並んでいます。
大人同士のコミュニケーションの本棚には「聴き方」の本があふれているのに、です。
大人には「子どもは、声をかけないと何もしない」という誤解があります。
しかし子どもは生まれつき能動的な探求者。自分で決めたい、やりたいという意欲にあふれています。
保育でも、主体性を尊重する保育の方法が広がり、保育者は、「言葉かけ」を減らして「会話」を増やそうと努力中です。そういう園では、1歳の子どもでも、自分で食事に来て食べ、自分で布団に入ってお昼寝をする姿が見られます。(DVD「環境構成の理論と実践」第二巻にもその場面があります)昭和の一斉保育をやっていた私は、初めてこの姿を見たときには本当に驚きました。

自分で靴を靴箱に靴を揃えて入れ、部屋へ帰る1歳児たち
大人の役割は、やってみせることと仕組みづくりです。
たとえば子どもに片付けをしてほしいと思ったら、大人がいつも部屋をきれいにする、
玩具は片付けられるだけの量を出して、飽きたら入れ替える、
親であれば、できるだけ公園や子育てひろばへ連れて行って家が散らからならないようにするなど
子どもにあれこれ言わなくてもいい環境をつくるほうが楽ですし効果的です。
ほめない、叱らない、声をかけない、応答的な会話を解説したのが「脳を育む親子の会話レシピ」です。
会話ができる生活の仕方を説明しています。

赤ちゃんや幼児との関わり方を知りたいという保護者のために、応答的で具体的な「会話」の仕方を説明しましたが、忙しい保護者が通勤電車のなかで音声で聞けるようにオーディオブックもつくっていただきました。
赤ちゃんとの会話の仕方に自信がない保育者の方も、参考になさってみてくださいね。
子どもの経験と絵本 ― 2025/05/11
こどものとも社の丸山さんから復刊した絵本を教えていただきました。

石川県輪島の朝市を描いた1980年に刊行された絵本だそうです。
海でとれたもの、山でとれたものを持ち寄る市場。
ある園長先生が、「祖母の店が描かれているんです」と教えてくれました。
市場のにぎやかさを知る子どもたちにも、スーパーしか知らない子どもたちにも読みたい絵本です。
能登半島地震の復興への願いを込めて収益は寄付されているそうです。
「エスカレーターとエレベーター(かがくのとも)」福音館書店、2023
こちらは、都会の子どもにとってなじみ深い経験を描いた科学絵本です。

エスカレーターはある子どもにとっては身近ですが、ある子どもにとっては、ものがたりのような世界かもしれません。
絵本やごっこ遊びの環境は、子どもたちの地域や家庭での経験もふまえて選びます。
たとえば下の絵本はサッカースタジアムが身近な園やサッカー大会などに出る園で、置いておきたい絵本です。
こちらは月刊絵本のため、駒込の福音館書店本社まで買いに行きました。

福音館書店のかがくのともシリーズは、綿密な取材と時間をかけた作成が知られていますが、どのスタジアムを取材したのかを想像するのも楽しいですね。(赤いユニフォームです)

こちらも月間絵本です。こちらも綿密な取材を感じる本です。
保育者は、モンシロチョウが飛び交う頃になるとチョウの絵本を置き、園庭にテントウムシが出てくと、テントウムシの絵本を置きます。その園で子どもが出会える花や虫の絵本は、担任が変わっても必ず揃えておきたいものです。
季節と、地域と、子どもの経験に合わせて絵本の入れ替えを行う保育者の皆さん、いつもお疲れ様です!
*現在福音館書店の販売コーナーでは月間絵本が販売されていますが、「サッカースタジアム」や「テントウムシのいちねん」は、ない可能性もありますのでご注意ください。






