関わりの技術を習得できる養成課程を2025/10/26

下書きで不適切保育について書いているときに、またもや不適切保育が発覚しました。
14人の内、10人の保育士が虐待を行っていたとの報道です。
実は私も似たような園で働いたことがあるため、園内の雰囲気が想像できます。
優しい先生は辞め、怖い先生だけが残っていく園だったのでしょう。

保育士による虐待や不適切な行為は、個人の性格の問題だと考える人が圧倒的のようです。
(ニュースのコメント欄の”いいね”を比較してみてください)。

しかし、もしも5つ子を一人で育てている保護者が子どもを怒鳴ったり叩いたりしたら、保護者の性格が悪いと考える人はいるでしょうか。この日本で、5つ子を一人で育て、食事や排せつや午睡の世話をし、毎日公園へ連れていき、笑顔で子育てできる人は何人いるものでしょうか。

まして日本のクラス規模は大きく、1歳児で20人、30人以上のクラスもあります。10人の1歳児クラスは少人数の方ですが、それでも一人の保育者がオムツを交換している間、一人で9人の子どもを見ることがしょっちゅうです。個人の資質や人間性で、集団の保育を行える人はいません。


30人でも落ち着いた食事ができるのは保育者に環境構成や関わりの技術があるからです。

現場は努力を重ねていますが、保育者の養成は、まだ集団で保育を行うために必要な技術を習得できる課程ではありません。養成課程は、まだまだ昭和感が満載なのです。

不適切保育を根本から改善するには、保育者の養成課程を改善することが一つの方法だと考えられます。
保育士養成課程には行政指導としてモデルシラバスがあるため、その内容を変えることです。

現在の保育者養成課程には、環境を構成する技術も、子どもと関わる技術も習得できる科目がありません。
私はこれらを研究していますが、教えられる科目がないため、授業ではとても苦心していました。(授業のシラバスはモデルシラバスに基づいて書かなくてはならず、環境構成や関わりを授業で教えようとするとシラバスとは違ってしまい学生との契約違反になってしまうのです)。

たとえば「子どもの理解と援助」という科目はありますが、教授内容を示すモデルシラバスでは、心理中心の内容が示されています。ほぼすべてのテキストが、その行政指導に従って記述されます。そのためテキストには、記録と話し合いによる子どもの「心理」の理解と、抽象的な援助方法が並びます。事例はあっても具体的な技術を習得できる内容がありません。
保育者は、心理の理解と言葉による援助だけで子どもの育ちを支えることはできません。保育では心理の他にも生理、器質(形質)、環境などを把握し、生活全体で援助を行います。保育者は、子どもの心を癒すカウンセラーではなく、育むことが中心の職務です。しかしモデルシラバスには、その方法の教授内容がないのです。

うん十年前、専門学校で教員をしていたとき実習から戻ってきた学生が、「保育者たちは体罰を使っていたが、私は先生に言われていたので絶対に体罰はしなかった。けれど他の大学の実習生は実習の終わりごろには体罰を使っていた」と聞いたことがあります。実習生の立場で、先生たちと違う関わりをするのは勇気がいったことでしょう。

誰でも、聞いたことがない言葉は話せません。知らないことはできません。本能や心がけで、大勢の子どもに食事を食べさせたり午睡をさせたりできる人はいません。

私自身、日常的に体罰を使っていたベテラン保育者が、私の口真似をして体罰を使わなくなった体験をもっています。心や性格を変えなくても、知ることができれば、言葉と行動を変えられる人は多くいるはずです。
研修で、抽象的に「人権を尊重しましょう」と聞いても、新しい言葉と行動の習得はできません。
保育士と幼稚園教諭の養成課程の内容を改善すれば、現役保育者の研修の質改善にもつながります。
養成課程の改善は、予算も不要で、すぐに取り組めることではないでしょうか。

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