新入園の子どものストレスを軽減する4月の保育2019/04/01

新年度を迎えました。

新入園児の保育と、一時預かりは、保育のなかでも最も難しいもの。
とくに1歳前後の子どもは、親との信頼関係ができており、
かつ時間の見通しがつかない発達段階にあり、
後で、お父さん、お母さんがお迎えに来ることを理解するまで時間がかかります。
(最近は、親と離れても泣かない子どもが増えていると聞きますが・・・)

子どもたちが園の生活に慣れるために保育者にできることをまとめました。

まず保育者にできること。
1)物的環境の工夫

・物的環境は、保育者を助ける。4月は生活習慣より子どもが楽しく遊ぶことを優先。
・室内は、家庭では体験できない楽しい遊びの素材や道具を準備する。
・室内の遊びの素材や道具をたっぷり置く。
(以上児クラスから借りる場合は、大きさや形状など安全性を再確認)
・パズル、絵本、自動車など、情緒が安定しなくても遊べる分かりやすい玩具を多く置く。
・自動車や電車、その絵本は取り合いになるため、置くのであれば大量に置く。または一人遊びの場に置く。
・絵本は子どもの手の届くところ、よく見えるところにたくさん置く。家庭で読んだ経験がある絵本の名作を揃える。
・体育館では子どもは不安。空間が分けられていない保育室は、午睡用の絨毯や、食事用の机を置き、そこにできるだけ多くの安全な玩具を置く。
・パーソナルスペースをつくる。段ボール箱、枠、一人用絨毯、など自分のスペースを確保できる空間をつくる
・壁の飾りや誕生表より、子どもの手の届くところの環境づくりを優先する。
・できるだけ室内が混み合わないように、グループで散歩、園庭、室内、ホールなどに分かれる。
・柔らかいものを置く。柔らかい空間をつくる。
・できるだけ外に。砂場の道具は取り合いにならない量を出す。
・動物や虫がいる園では、それらも活用。

2)子どもとの信頼関係をつくる工夫
・赤ちゃんでも、子どもに自己紹介をする。「私は〇〇だよ。・・・・・」
・赤ちゃんでも、泣いていても、子どもに場所の紹介をする。
「ここにはね、木の自動車が置いてあるんだよ。ここでね、ブイーンって自動車を走らせるんだよ、
あっちまでブイ~ンって走らせることもできるね」と遊んでみせる。
・赤ちゃんでも、子どもが見ていたら、その人の紹介をする。「〇〇先生だよ」、「〇〇ちゃんだよ、おんなじ1歳だよ」
・黙って抱っこしているだけでは不安。子どもの体をさわるときは話しかけてから行う。

3)保護者に安心を伝え、保護者の信頼を得る工夫
・保護者には、「泣くのは、信頼関係がしっかりできている証拠で、とてもいいことです」と伝える。
・とても不安そうで離れられない保護者がいた場合には、「一緒に園庭や室内で遊んで、園の楽しさをたくさん伝えてあげてください」と、親にしばらく遊んでもらう。
・保護者と親しげに話し、子どもが、保育者のことを信頼できる人だと感じられるようにする。
・初対面では見た目が大事。保護者が信頼して預けることができる服装や話し方を心がける。
・机等には、ふだん読んでいる専門書(表紙が幼稚でないもの)を置いておく。
・「3000万語の格差ー赤ちゃんの脳を育てる保護者と保育者の話しかけ」を生活表のところなどにおき、保護者が赤ちゃんに話しかけて、情緒が安定した状態で園に来ることができるようにする。
(線を引いた本を置いているだけで、保育者の専門性の高さが垣間見える)

4)その他
・01歳の新入園児は、子ども一人に大人一人が必要。保育者だけで頑張ろうとしない。
・園長、事務員、ありとあらゆる園内の人に助けを求める。
・保護者にも協力を求める。
・保育者自身が、高い専門性が必要な難しい職務についていることを自覚する。
三つ子や六つ子を保育できる人は、超プロフェッショナル。
上手くできなくても、自分を絶対に責めないこと。
・保育者同士で、「今日もよく頑張ったね」とお互いに褒め合う。


保護者に行えること(保育者が、保護者に伝えること)
・子どもの前で、先生とニコニコと話す。
(先生は信頼できる人だということを子どもに見せる)
・絶対に子どもの前で園や保育者の悪口を言わない。
・園のなかでは、子どもに(赤ちゃんでも)、「ここが〇ちゃんの靴箱だね、ここが〇だね」と子どもと一緒に見る。
・泣いているときには、保育室のなかを見て
「ここはおままごとだね、〇ちゃんの大好きな絵本があるよ、わあ、砂場があるよ、すべり台があるね」と子どもと一緒に室内や園庭の楽しさを伝える。
可能であれば、室内で一緒に遊ぶ。
・別れるときには、保護者が不安を抱かない。
(不安は子どもに伝わる)
・お迎えに行ったときに泣いていなくても、できるだけ早く迎えに行く。
・体を動かすことが、子どものストレス解消。公園へ連れて行く。
・どんなに先生がいい人でも、保育者は子ども数人に一人で関わりには限界がある。
家庭の朝夕の短い時間で、濃い関わりをすることを意識する。
・夜はテレビを見せたりゲームをさせたりせずに、できるだけ会話をする。
(ストレス、脳を疲労させるものはできるだけ避ける)
・夜は早く寝かせる。親もいつもより早く寝てストレスをためない。
(寝かしつけようとすると寝ないので無理はしない)
・親子ともに、ビタミンCたっぷりの果物など、栄養を意識的にとる。
・朝は、テレビを消し、子どもと会話をしながらゆっくり支度をする。
・朝から子どもを怒らずに、楽しく園に行けるようにする。
・保育者には、感謝や肯定的なことをできるだけ伝える。
(保育者が精神的に安定していることと子どもにも伝わる)
・他の保護者や、他の子どもとも仲良くするようにする。
(他の子を知っていると家庭での会話もはずむ。わが子だけ幸せになることはありえない。わが子の友達が健やかに育つことでわが子も幸せになれる)

慌てて書いたので、読みにくくてすみません。


4月1日の黒目川の桜。入学式を待ってくれているようです。


保育者の関わりは専門性2019/04/13

二年連続でやってしまいました。日本保育学会での発表の登録ミス・・・。
連名発表の皆様にも、ほんとうに申し訳ない。
今年も、空き時間は、書店のブースにいると思います・・・。

保育の専門性を言語化する研究の第二弾が出ます。
「保育者の関わりの理論と実践-教育と福祉の専門職として」エイデル研究所


保育という複雑な職務を養成可能にするためには、構造として分けることが必要です。
環境構成に続いて、今回は、この「指導・援助」の部分の理論化を試みました。

これまで、子どもとの関わりについては、保育者養成では科目すらありませんでした。
「え~!、保育士や幼稚園教諭って子どもとの関わり方を学ぶ科目がないの!?」
とっても驚かれます。そうなんです。なかったんです!

私は、ニュースに出る”不適切”な保育は、養成にも責任があると考えています。
保育者は、関わりの技術を習得することなく、個人の人間性と努力で集団の子どもと関わります。
一人ひとりの子どもと丁寧に関わり、同時に全員の子どもに目を配るなんて、人間業ではありません。
手遊びやピアノや造形の技術程度で、何とかなるわけがない。
一人で、1歳の6人、3歳の20人を”適切”に保育するには、環境構成や関わりの高度な技術が不可欠です。
しかしこれまで「集団の保育」は、「家庭の養育」と同じレベルで考えられてきました。

保育士養成課程の見直しでは、「子どもの理解と援助」という名称の科目が設置され、大きく前進しました。
ただその内容は、「保育の心理学Ⅱ」から移行したことと、幼稚園教諭養成課程の「幼児理解の理論及び方法」と兼ねるため、心理の視点から子どもを理解する方法が中心であり、「援助や態度」は、「基本を理解する」に留まっています。しかも、「援助や態度の基本とは何か」書かれている本はこれまでありませんでした。

この本では、根拠に基づく関わりができるように理論と実践を結びつけ、技術として習得が可能な関わりをまとめました。演習のワークを16入れて、園内研修、集合研修、養成の授業で使えるようにしています。

きっとこの本が出れば、長年関わりを研究されている先生方がもっと良い本を出して下さるでしょう。
それによって、保育の質がより高まることを願っています。