一時預かり事業の研修試案 ― 2013/10/23




以前、尾木まり先生の下で「一時預かり事業」について研究を行ったことがあります。(一時預かり事業のあり方に関する調查研究:平成20年度厚生労働科学研究費補助金政策科学総合研究事業(政策科学推進研究事業) 研究代表者:尾木まり 2008)。 私は、橋本真紀先生と研修を研究しました。

ヒアリングでは、保育士資格があっても乳児保育の経験者は少ないことや、乳児保育の経験はあっても子育て支援の必要性と一時預かり事業の意義、一時的な保育場面における保護者支援については研修が必要であることがわかり保育士資格や経験の有無にかかわらず、一時預かりの研修は、すべての従事者が受講することが望ましいとしました。

一時的な保育(一時預かり事業)のニーズは高く、今後各市町村で研修が行われると思います。一時的な保育は、保育と同様、質が伴うことで子どもの健やかな育ちと保護者の支援につながります。そこで尾木先生、橋本先生にご相談して、ブログに、研究成果の一部である基礎研修の研修試案をアップすることにしました。


【一時預かり事業 研修科目】

基礎研修
一時預かり事業の意義と基本姿勢 2時間
一時的な保育における子どもとのかかわりと遊び 2時間

一時的な保育における保護者支援の内容と方法 2時間

一時的な保育の事故防止と健康管理 2時間
事故発生後の対応と危機管理 2時間

一時的な保育の実習 3時間

(スキルアップ研修)

子どもの発達と子どもとのかかわり 4時間

一時的な保育における子どもの遊びとその援助 2時間

一時的な保育の生活援助の内容と方法 2時間

一時的な保育における保護者支援の内容と方法 4時間


【基礎研修後に受講者が獲得する知識・技術・態度】

1.一時預かり事業の意義と基本姿勢

保育者としての倫理(個人の尊重、個人情報保護、守秘義務)を守る

子どもの人権を尊重する

自己研鑽の必要性を知り自己研鑽を行なう

子育て支援が求められる背景を知る

子育て支援の利用に肯定的なまなざしをもつ
一時預かり事業の概要を知る

一時預かり事業の意義(保護者・子ども・親子関係支援)を知る

記録を理解し活用する

スタッフ間の連携を知る

2.一時的な保育における子どもとのかかわりと遊び

子どもとの信頼関係を形成する具体的なかかわりを知る

不安を安心に変える具体的なかかわり方を知る

一時的な保育の子どもに対する遊びの援助を知る

乳幼児に行いがちな人権侵害行為について具体的に知り人権侵害を行わない

3.一時的な保育における保護者支援の内容と方法

一時的な保育における保護者とのかかわりの特徴を知る

保護者へのかかわりにおけるマナーと心得を知る

問合せ・申込・受付・帰宅時の対応の心得を知る

保護者への報告書の書き方を知る

保育中のトラブル等の報告の仕方を知る

4.一時的な保育の事故防止と健康管理

一時的な保育の特徴と起きやすい病気について知る

一時的な保育で起きやすい事故(屋内・屋外)を知る

子どもの事故の特徴を知る

年齢による危険な行動を知る

安全を守るうえで保育中に気をつけることを知り行動する 

声かけによる安全の確認と情報の共有化の重要性を知り行動する

感染症の予防について知る

健康管理と異常の早期発見を行なう

5.事故発生後の対応と危機管理

事故が発生した場合の初期対応について知る

簡単な応急処置を行なう

報告について知る

危機管理(災害・不審者など)の基本を知る

救急法を行う
6.一時的な保育の実習

倫理を守る姿勢を知る

一時的な保育の準備、預かる場面からお迎えまでと、その後のスタッフ間の話し合い等、一連の流れを知る

スタッフ間の連携を知る

子どもとのかかわりと遊びを知る
事故防止と健康管理の行動を知る

保護者へのかかわりの実際を知る

記録・報告書の実際にふれ記述の仕方を理解する

【研修の留意事項】
○研修受講対象は、保育従事者に加え事務・受付・運営等一時預かり事業にかかわるすべての担当者とする。

○基礎研修は、保育士資格の有無に関わらず受講することが望ましい。
○研修担当者は、研修講師に対して研修内容(研修終了後に獲得する知識・技術・態度)を事前に提示し、研修講師は研修修了後に獲得する知識・技術・態度を踏まえ、その目標に 添った研修を行うように努める。

○研修内容は一時的な保育を行う上で不可欠な知識や技術を優先する。たとえば「子どもの遊びとかかわり」では手遊びやおもちゃ製作よりも不安で泣く子どもを安心させるかかわりを優先する。

○実習は、継続的な保育の場ではなく一時的な保育を行っている場で行うこと。

○研修は、講義、演習、実習を組み合わせて実践に結びつく効果的な方法で行うこと。スキルアップ研修は継続的に行うことが効果的であり、団体・地域の課題に合わせて柔軟に行う。

 

コメント

_ 高山静子 ― 2013/11/06 06:48

O先生、深く考えさせられるコメント、ありがとうございます。他の方にも読んでいただきたいので先生のコメントを抜粋させて下さい。今度保育者を対象とした研修会がありますが、ぜひ先生にもお話いただきたいと思いました。日常の保育との違いを語り合いたいです。

「自らの子育てへの反省をこめて、絞り出した答えは「母親であっても自分を取り戻す時間が必要」だということでした。保育士だった経験と、自身の努力では這い上がれないほどの気持ちの落ち込みを体験してしまったことからたどり着いた私自身の想いが一時預かりでしたので、たくさんの方がこのような考えで動いていたとは思いもよりませんでした」
「今は保育と言えば待機児童削減のことばかりで、仕事を持っていない(パートや就活中含)多くの母親たちが置き去りにされているように感じてしまいます。しかし現状は一時預かり保育の利用希望はとても多いです」
「試行錯誤の末に見出してきた保育内容は通常の保育所の保育とは別ものだと痛感しました。加えて母親への支援は本当に難しいものです。従ってスタッフの意識と技術は高度なものが要求されます。一期一会のような日々の中で、地に足の着いた寄り添うことのできるスタッフでなければなりません。と偉そうに言っていますが、一生懸命考えていることが毎日の出来事に追いついていけていないのが現状です。同時に、ママたちに優しく寄り添ってくれているスタッフが疲れきってしまわないように、より働きやすく整えることにも沢山の工夫が必要で簡単ではありません」

本当におっしゃる通りだと思います。

_ 榊原久子 ― 2013/11/07 20:05

高山先生。この「一時預かり保育事業」の研修は、急務と感じております。
実際、各自治体において、一時預かり保育は通常保育の「オプション」としてとらえられている傾向があるといっても過言ではなく。一般的な保育者の抱く、一時預かり保育に対する意識の低さも否めません。一時預かり保育は「託児」ではありません。正規保育のオプションでもないのです。しかしながら「一時」という言葉から、その保育内容については、保育検討を行う場さえない状況です。
また、一面では、在宅子育て家庭に向けた大切な保護者支援でありますが、紛れもなく「児の発達の保障」をおこなう場でもあります。母親の育児負担や育児不安の軽減を行うのみならず、児の発達に必要な「経験」を可能とする場として、一時保育という保育についての研究・検討をおこなっていける場が欲しいと、願っております。

_ 高山静子 ― 2013/11/08 11:02

榊原先生、コメントの許可をありがとうございます。本当におっしゃる通りで毎日が4月状態、そして保護者にも不安が強い一時的な保育では、保育者には通常以上の専門性が求められると思います。場によっては、保育園の国の最低基準に則って1歳児6人に一人というところもあります。また養成講座の内容も、これで預かったら事故が起きる、という内容を見聞きします。保育の専門性を言語化し、保育者の社会的地位の向上が必要です。ぜひお力添え下さい。一時保育の研究は不足していると思います。大学院で一時保育の研究をされるのはいかがでしょうか。

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