親子の会話は最高の教育2023/01/29

昨年、半年間の休日を費やした本が、年末に完成しました。
単行本とkindleの電子版も同時に出していただきました。

親子の会話は最高の教育

風鳴舎の青田恵社長は、子育て中の現役ママ。
風鳴舎は、営業も編集も子育て中のママたちが多いのだそうです。
Amazonの本の紹介ページも、とてもユニークです。

応答的に話すこと、子どもが話すことが大事なの

この本は、ほめない、叱らない、声をかけない、親子の会話の本です。
「ほめ方、叱り方、声のかけ方」は、大人が子どもをどう動かすかの話。
「会話」は、一人の人間との応答的なコミュニケーションです。

赤ちゃんは言葉を話せなくてもコミュニケーションはできます。
そして、その人生最初の会話が、運動と社会性と知性の基盤となります。
人の発達は、コミュニケーションからはじまります。

現代には、スマホもゲームも動画もあるので、
保護者がよほど意識しないと、どの家庭でも「会話」は乏しくなりがちです。
心と体と知性の土台をつくる乳幼児期に、親よりも体験と会話が貧しい子どもは、
残念ながら、親より学力も、運動能力も、コミュニケーション能力も低くなる可能性が大です。

こんなに親がわが子の教育に関心をもっている時代なのに、
最も効果的な教育をおろそかしていることはもったいない。

編集者が「レシピ」と名付けて下さった通り、
日本の文化に合わせた具体的な会話の方法を解説しました。
「言葉が遅い」という育児相談の回答も後半に入れています。

メディア漬けの子どもたちに心を痛めている保育者の皆さん、
ぜひご活用ください。

子育て支援の環境づくり2018/06/25

エイデル研究所から、本が出ました。

高山静子「子育て支援の環境づくり」エイデル研究所、201806
子育てひろばと、一時預かりの環境づくりがメインです。

これまで冊子や報告書として出してきた原稿をまとめました。
冊子でもいいんじゃないか、と思っていましたが、
エイデルの長谷さんが「必要です。出しましょう!」とキッパリ。
未就園の親子のための子育て支援の場(ひろば・一時預かり)の
空間づくり、玩具選び、スタッフの役割
等、冊子のエッセンスを、コンパクトにまとめました。
(一部の冊子は、浜松の未来を育てる会、ここみ広場で購入できます)。

子育てひろばは、かつての道ばたのような
子どもを遊ばせながら親同士がおしゃべりをする場です。
一つ違うのは、スタッフがいること。

スタッフがいることで、
赤ちゃんを育てはじめた保護者が、
自然と人間のなかで子育てをして、
わが子とほどよい関係をつくり、
場と仲間と情報を得て、
子育ての環境をよりよく変えていく、
そういった方向性をもたせることができます。

今全国に、地域子育て支援拠点(ひろば)が、
7千箇所ほどありますが、
物理的な環境が不十分な場が多いと感じています。

環境が不十分な場では、
赤ちゃんとその保護者の利用が少なく、
イベント以外の日の利用者が少なくなります。

子育て支援の機能を果たせているかどうかは、
赤ちゃんがどれだけ利用しているか、
イベント以外の日の利用者数、
地域の未就園児童の何割が登録利用しているか、
で確認できます。

空間や玩具が適切に準備されていると、、
子どもの自然な遊びを知ってもらうことができ、
子どもを安心して見守りながら、親同士で情報交換をすることができます。
適度な距離感があることで、、
やりとり(二項関係・三項関係)も生まれます。

反対に、環境が不十分だと、
支援者は、対応に忙しくなり、
ちょっとした相談を受けたり、
親子関係の支援をすることができません。

環境構成が行われていない園では、
保育者が、子どもへの指示や指導に忙しすぎて、
ていねいな関わりが生じにくいことと同じです。

保育園も、子育て支援センターも、
まずは、物理的な環境づくりを。

これで、環境構成がひとまず終了しました。
次は、関わりの総まとめに入りたいと思います。

3000万語の格差2018/04/28


ダナ・サスキンド3000万語の格差:赤ちゃんの脳をつくる、親と保育者の話しかけ』
翻訳 掛札逸美 明石書店 2018(のチラシ)
             

人生ではじめて、解説、というものを書いてみました。

いつも掛札先生の「保育の安全研究・教育センター」の

ホームページを読んでいたのですが、

http://daycaresafety.org/

あるとき、たまたま掛札先生と近くの席に座り、

「いつも読んでます」と挨拶に行ったことがきっかけで、

この翻訳本が生まれました。編集は、明石書店の深澤さんです。

 

この本には、012歳の子どもが大人と豊かな会話を交わすことの重要性と

その時期の関わりを豊かにする方法が、

臨床、研究を織り交ぜて書かれています。

 

「3000万語の格差」は、

3歳の終わりまでに、家庭によって

保護者が子どもと話す言葉にはこんなに差があるんだよ、

という「家庭による言葉の格差」を象徴する言葉です。

 

本のなかに、子どもとたくさん話をした親が、

「今日も私は子どもの脳を育てたわ」話すシーンがあります。

「親の話しかけが赤ちゃんの脳をつくる」ことを知れば、

みんなこぞって赤ちゃんに話しかけるのではないかしらと思います。

でも、子どもにただ一方的に話しかけたり、

テレビを見せたりCDを聞かせたりと

言葉のシャワーを浴びせても、効果は薄い

大人が、子どもの心と体に注意を向け

子どもが関心をもっていることに対して

応答的に、バラエティに富んだ言葉(豊富な語彙)で

あたたかく肯定的な内容を話すことが大事である

とポイントや具体例が示されています。

            

今回、はじめて掛札先生と一緒に仕事をさせていただいて、

そのスピード感に圧倒され、仕事の緻密さに本当に驚きました。

掛札先生は、この本の参照文献等のリンクを貼ったウェブサイトも公開されるそうです。

http://www.kodomoinfo.org/

本は、Amazonで予約受付中。


保育を変えてみようと思っている人に2015/12/06

千葉県富津市の和光保育園さんの実践が
ひとなる書房さんから本として出版されました。

「子どもに学んだ和光の保育 希望編 育ちあいの場づくり論」
鈴木まひろ・久保健太著、ひとなる書房、2015
「子どもに学んだ和光の保育 葛藤編 響き合ういのちの躍動」
鈴木秀弘・和光保育園職員・森眞理著、ひとなる書房、2015


鈴木真廣(まひろ)先生が書かれた希望編を先に読了しました。
私には、とてもこの本の奥深さを表現することはできないので、
帯の言葉をそのまま載せます。

「子どもは、その主体性の発揮を存分に保障され、
生活と遊びの主人公として尊重された時、
私たちの想像をはるかに超えた豊かな学びの物語を
自らの内に紡いでいきます。
そのために、子どもたちの可能性を信じて葛藤する
和光の大人たちの姿は感動的です」。

今、保育を変えてみたいと思っている先生方は、
まず1章「子どもが主人公になる保育への転換
 保育見直しの中の私たちの葛藤」
から
読み始めるのも良いかもしれません。
保育園を継いだ鈴木真廣先生と先生方が、
保育者主導の保育を
子ども主体の保育へ変えるために
試行錯誤された33年間が描かれています。

子どもとは?、保育とは?、
保育者の役割とは?と
授業を聞きながら混乱している学生さんは、
2章の「新たな教育観と保育の『真』と『深』」から。

園から地域へと子育て文化を発信したい、
地域コミュニティの再生につなげたいと
今様々な取り組みを行っている先生方には
3章「わこう村『子ミュニティー』育ち合いの場をつくる」
から読み始めることをお勧めします。

そして最初から読み直すことで
鈴木先生の深い哲学が染み入ってくるかと。

理論と哲学することが好きな方には
序章からぐいぐい読める本です。

余談ですが48ページに、
遊びから食事への切り替えに
選択の幅を持たせる保育を、
研究大会で発表すると、助言者から
「この園の躾はいったいどうなっているのか」と
厳しく指導を受けたエピソードがあります。

ちょうど今月の雑誌『げんき』の連載「保育かわらなきゃ」でも
レストラン形式で食事をする園児を見た指導者から
「こんなことをやっていたら食事の躾はどうなるんですか」と
見直しと報告を指導されるエピソードを読んだところでした。

昔も今も保育を変えようとしたときの批判の質は似ていますね。
皆さんはどのように考えますか。

便利な保育園が奪う本当はもっと大切なもの2013/05/19


長田安司 「便利な」保育園が奪う本当はもっと大切なもの 幻冬舎 2013年1月
 読まなくてはと思っていた本を、思いがけずいただきました。

この本のタイトルは、保育者が日頃感じている不安を、ズバリ現わしています。
私自身も、保育者として感じてきましたし、「長時間保育や病児保育が本当に親のためになるのか」という疑問は、多くの保育者が感じていることでしょう。親の労働支援と、子どもの健やかな育ちや保護者の幸せとの狭間で、良識ある保育者たちは心を痛めています。

長田先生は、
●三歳児神話は神話ではない。
●母親が働くと出生率が上がるのはまやかしである。
●保育に競争原理が導入されると、保育の質の格差が広がる。
●待機児を解消しても少子化は止まらない。
等の論拠を示しながら待機児童解消政策に真っ向から議論を挑みます。

そして、
○待機児童対策よりも子育てひろばの充実を。
○保育園は子どもの成長・発達を保障する場にしよう。
○親が子育ての喜びや幸せを感じ親の役割の大切さを学んでいく場にしよう。
という提案がなされます。

後半では園長の役割と実践が、具体的に説明されています。

「保育園が真の役割を果たすことができるようになれば、日本の社会は、これから遭遇する絶望的な混乱から救われる(「はじめに」より)というメッセージ、確かに伝わってきました。
本書は振れ過ぎた保育政策を揺り戻すきっかけとなりそうです。
ぜひ全国の園長先生に読んでいただきたいと思いました。


長田先生が提案されている、保育園が「親が子育ての喜びや幸せを感じ親の役割の大切さを学んでいく場」になるためには、長田先生も指摘されているように、保育者が、「子育て支援」という言葉を用いる際には、「親の子育ての支援」と、「親の就労支援」の区別を意識して使うことが必要だと思います。

長時間保育や病後児保育、駅前保育は、親の就労支援であり親の子育ての支援にはなりません。
子育て広場を拡げてきた「地域ぐるみの子育てをすすめるひだまりの会」では、「男性も女性も、親が子どもと関わることによって得られる喜びや人間的成長を支援すること」を「子育て支援」と呼び、母親の自己実現支援は、他のやりたい団体に任せましょうと言ってきました。
男性が仕事で自己実現しても「子育て支援」とは言われないのに、女性が子どもから離れて仕事や自己充実を図ることは、「子育て支援」と呼ばれます。(そんなのおかしいし)


ただ、子どもが家庭で育てば、自然に親子の関わりが生まれ子どもが健やかに育つというのは、日本では現実的ではありません。家庭で育つことで、テレビベビーシッターに子守をされ、一日に一回も外へ遊びに行かず(犬でも一日に一回は散歩に連れて行ってもらえるのですが)、3歳までに不可欠な親子の関係と運動や遊びを経験できないまま入園する子どもが増えてしまう可能性もあります。また、子どもをのびのびと遊ばせたいと思っても、マンションの室内では子どもが走るだけで苦情を受け、公園もなく安心して歩かせる場所はショッピングセンターしかないという地域もあります。

012歳の子どもの健やかな育ちを保障するには、子育てひろばの推進と同時に、子どもが育つ環境としての地域(ハード)の作り直し、保健政策として乳幼児期の愛着形成と遊びや運動の確保の推進を進めていくことが必要です。表面的なニーズに振り回されずに真のニーズを把握することは、保育でも施策決定でも同じかもしれません。志の篤い行政職員の皆さんを応援しています。。。私には何ができるのだろうか。


共励保育園 長田安司先生のブログ
まんさく博士ブログ


保育園の苦情対応~困難事例2013/01/19

お茶の水女子大学の青木紀久代先生より、先生が監修された貴重な本を御紹介いただきました。
東京都社会福祉協議会保育部会調査研究委員会による調査結果をまとめたご著書です。


青木紀久代監修 東京都社会福祉協議会保育部会調査研究委員会「保育園における苦情対応~対応困難事例とワーク」東京都社会福祉協議会 2012 
保育園における苦情対応
                    
                 読み込みすぎて、ちょっと本が開いた状態ですみません・・・。

                 担任の立場から書かれた内容と、園長の立場から書かれた内容があります。

                 それぞれの事例にワークとワンポイントアドバイスがあります。

対応困難度が大きく、保育者のバーンアウトリスクも高い事例
対応困難度は中程度だが、保育者のバーンアウトリスクは高い事例
対応困難度は大きいが、保育者のバーンアウトは回避されている事例
対応困難度が中程度で、保育者のバーンアウトが回避されている事例の
4つのタイプに分けて事例が説明されます。

たとえば、
子どもの同士のけんか:保護者が賠償金を要求
威圧的な雰囲気に保育者が緊張
「発達障害だなんて・・・」
「うちの子に限って!そんなことはありません!」
など、15の事例が紹介されています。

一つひとつの事例は、保護者の様子、対応と職員のサポート、事例のその後と丁寧に説明。
その事例に対して、話し合いができるようにワークが設定されています。
各園で、または各クラスで、日常の研修に活用できる内容です。
また、大学での「保育相談支援の授業」でも活用できそうです。
わたしも読みながら、自分ならどう対応するだろうと考えました。

東京都社会福祉協議会ホームページから購入することができます。
青木先生、ありがとうございました。

保育所の機能を縮小化させない仕組み2011/12/29

柏女霊峰先生の『子ども家庭福祉・保育の幕開け: 緊急提言 平成期の改革はどうあるべきか』(誠信書房)を読了しました。柏女先生は常に高所から子ども家庭福祉政策について提言を続けていらっしゃいます。幼稚園保育所の一体化が議論されるなか、本書は、「子ども家庭福祉機能の分断」という重要な課題を提起しています。

柏女霊峰先生の緊急提言



たまたま同時期に読んでいた山野良一氏による「子どもの最貧国・日本」(光文社新書)も、ソーシャルワーカーの視点から見た日本の子ども政策の課題を、現場から描き出した本でした。

子ども子育て新システムの中間報告では、すべての3歳以上児に「学校教育」を提供し、保育士を保育教諭にという案が提起されています。一体化では、保育所に「幼児教育機能」を入れる(元々入っているにもかかわらず)という議論が中心で、保育所の「子ども家庭福祉機能」を、どのように総合施設に組み込むのか、あるいは幼稚園に拡大するかが不足しているようにみえます。幼児教育という船の上に、子ども家庭福祉を載せることができるのだろうか・・・。これらの本を読みながらすっかり考えこんでしまいました。(このブログの下書きを書いてひと月以上・・・)

これまで、保育所が果たしてきた福祉機能は、保護者の就労支援だけではありませんでした。保育所は、幼稚園よりも福祉ニーズの高い家庭の子どもを多く預かり、障がいのある子どもの割合も幼稚園より高いにもかかわらず、幼稚園と遜色のない学力のある子どもを輩出してきました。これは保育所が子ども家庭福祉の機能を発揮して、保護者の支援と、生活と遊びを通した教育によって、子どもの生活全体を守った保育所の努力の証といえます。

ここ数年、保育士研修や養成で、格差拡大を続ける日本の状況から、「保育士は福祉の専門職であるという自覚をもち、苦しい状況にある保護者を支援し、保育の専門性を発揮して貧困の連鎖を保育で断ち切ろう」、と訴えてきました。しかし総合施設になった後でも、私はそう訴えることができるのか、保育士は「福祉の専門職」であり続けられるのか。総合施設の根底に「児童福祉法」をおいても、総合施設の保育者が「幼児教育者」と意識するようになれば、子ども家庭福祉に関する本は、手にしなくなるのかもしれません・・・。

一体化は、保育士にも研修時間を確保し、保育士の職務を軽減する上では望ましい部分があります。しかし、3歳以上児の保育を、「学校教育時間」+「預かり保育」という考え方で行う市町村がある場合には、保育士の意識の部分から子どもと保護者に対する考え方が変わっていくでしょう。
将来、幼保の一体化と市場化により、子どもの格差が拡大し、子ども家庭政策が後退したと言われないようにしなければなりません。総合施設では、これまで保育所が担ってきた福祉機能をどのように補完していくのか、福祉と教育の機能を一体化するにはどのような仕組みを組み込むのか、ていねいに考える必要がありそうです。

思考メモ 福祉機能を守るには・・・
〇総合施設は、学校教育時間に対する考え方をいくつか提示する。
〇学校教育時間の捉え方については多様性を重視することを明示する。
〇総合施設には相談員を配置。社会福祉士資格をもった保育士、あるいは社会福祉士等を配置。
〇総合施設職員(幼稚園教諭)への子ども家庭福祉研修を実施。
〇総合施設の目的と理念に子どもと家庭の福祉を明示化する。
〇子ども家庭省創設の前に、「児童福祉法」を抜本的に改正し、子ども家庭政策の理念と方向性を明確にする。
〇教育と福祉を兼ねあう人の養成の仕組みを先に構築する。

保育者のバーンアウト2011/11/30

尾木まり先生が監訳された本が出版されました。

保育者のバーンアウト
     ジェフ・A・ジョンソン著「保育者のストレス軽減とバーンアウト防止のためのガイドブック」
      尾木まり監訳、猿渡知子・菅井洋子・高辻千恵・野澤祥子・水枝谷奈央訳 福村出版



筆者は、自分も妻も、バーンアウトした経験から保育者のストレス軽減やバーンアウト防止の研究・啓発活動を行っています。保育のエピソード、家庭でのトラブル・・・国が違っても、保育者のストレスって実に似ているなあと納得。

ちょっと長くなるけど引用します。

「いずれにせよ、私たちには皆少なくとも一つの共通点があります。それは保育者であるということです。それは職場においてだけではありません。私たちのほとんどは、習慣的に他の人のケアをしています。共感し、愛情を注ぎ、思いやりをもって養育しています。そして、私たちはケアを必要としているどんな人にも『できません』と言うことができません。子どもの保育だけではく、子どもたちの家族、自分たちの家族、近所の人々、宗教的な集まりや市民グループ、知らない人、迷子の犬、そして巣から落ちてしまったひなの世話もします。それが私たちの姿です」
「多くの時間とエネルギー、そして自分たち自身のとても多くのものを他人に与えてしまうため、自分自身の欲求を無視する傾向があります」
「あなたが行くところはどこにでも、保育する子どもたちとのかかわりがついてきます」「休暇中でさえ、あなたは、子どもにみせるために光る石や、まつぼっくり、はがきを持ち帰りたいと思ってしまいます」

筆者は、バーンアウトの一番の要因は、「自分よりも他の人のケアに (多分はるかに多く) 時間とエネルギーを使う習慣」 だといいます。また、仕事に対して良いフィードバックを受けることが少ないこと、社会的な評価の低さと低待遇、仕事量が多いこと、過度の身体的負担などを挙げます。
保育という職務の大変さを理解してもらえるうれしさと、保育者へのあたたかいメッセージの数々に、涙ぐんだり、励まされたりしながら読み進めると次第に元気がわいてきます。後半は、ストレスを軽減するためのヒントが満載です。


この本を読みながら思い出すのは、私自身もう保育を続けるのは無理だと思った日々のこと。日中の子どもの保育で心も体も遣い尽くした後に、お迎えに来られた保護者の話を心をこめて聴き、ぼろぼろになって自宅の玄関で倒れこむ毎日を送っていました。まじめにカウンセリングなどの本を読み、保育に加えて保護者の心理支援までやろうとしていました。私の過労状態に周りの人が気づき「仕事を辞めなさい」と強硬に勧められ救われました。
在職中は、子どもと保護者の気持ちをうけとめきれない自分の非力を責めてばかりでしたが、退職して冷静になってみてから、「過酷な保育体制のなかで乳幼児の保育を行うことだけでも過重労働であるのに、加えて保護者のカウンセリングもなんて無理!」、「保育士は心理の専門職ではない」と、やっと怒りを感じることができました。(保育の条件が揃っていて10人の3歳以上児に3人の保育者がいる園ではできるのかもしれません)
子育て支援を経て保育の専門性を生かした無理のない保護者支援の方法にたどりついたところです。

著者はストレス防止という切り口から保育者を支援しています。私は専門性の確立による誇りと社会的地位の向上という切り口から、保育者をエンパワーすることをめざしています。
国は違っても、保育者の仕事を理解し力づける人がここにもいるといううれしさで胸がいっぱい。
尾木先生、翻訳者の先生方、ありがとうございます。


まだストレスよりも不安のほうが大きいであろう学生の皆さんには「新人保育者物語さくら」を、お勧めします。
研究室からこの本を借りていった人、返して~~。

保育相談支援2011/05/29

ミネルヴァ書房から、『保育相談支援』が出版されました。
編者は、柏女霊峰先生と、橋本真紀先生。
わたしは、第四章、「環境を通した保育相談支援」を、書かせていただきました。

この章では、こまつ保育園、なかぜ保育園、ながかみ保育園、なかよし第二保育園、船堀中央保育園、
川和保育園、愛恵保育園、蒲保育園、なごみ保育園、エミール保育園と、たくさんの園の写真を掲載させていただいています。どの園も、子どもへの愛、保護者への心遣いがあふれていて、とっても素敵です。
なかでも、なかぜ保育園の平野先生には、「お願いしま~す、先生、笑って!」と頼み込み、この本のためにモデルになっていただきました。

写真だけは自信あり。保育者の環境構成技術は素晴らしい!と感じさせられます。

柏女霊峰・橋本真紀『保育相談支援』ミネルヴァ書房、2011年3月


保護者のための閲覧・貸出ブックリスト2011/05/24

子育て支援センター、子育てひろばなど、子育て支援を目的とした場では、
子どもを健やかに育てるための情報を得られるように環境を構成します。

子どもを受け入れましょうとか、愛しましょうといった
「心理」や「親のかかわり方」を中心とした子育て情報はあふれていますが、
本当に子育てに必要な情報はなかなか手に入らないもの。


子育て支援の場では、
〇食事・睡眠・遊びといった基本的欲求の充足に関する本。
〇子育ての具体的なやり方がわかる本。
〇ながめるだけで、気持ちが「シャキ」として、
思わず掃除したり、運動したり、早起きしたり、
家庭の生活がスッキリ明るくなるような暮らしに関する本を保護者のために準備しましょう。

 

★保護者向け閲覧本・貸出本★

単行本
「子育て支援 ひだまり通信―遊びとしつけの上手なコツ」
高山静子,チャイルド社
(保育者が保護者に伝えたいことがたぶんほとんど入っています)

「きほんの遊び142―0~3歳」 中川信子,小学館

「脳をきたえるじゃれつき遊び」正木健雄,井上高光,野尻ヒデ,小学館 (父親向け)

「子どもが伸びる関わりことば26―発達が気になる子へのことばかけ」湯汲 英史,鈴木出版

「月刊クーヨン増刊モンテッソーリの子育て」 2010年 03月号 [雑誌]

「テレビを消したら赤ちゃんがしゃべった!笑った!」片岡 直樹,メタモル出版
(背表紙によって乳児のメディア漬けが予防できます)

「『早起き力』で子どもが伸びる!―早起き・早寝作戦で差をつける」神山 潤,廣済堂出版

「坂本広子の台所育児―一歳から包丁を」坂本広子,農山漁村文化協会

「冒険図鑑―野外で生活するために」さとうち藍,松岡 達英,福音館書店(父親向け)

「工作図鑑―作って遊ぼう!伝承創作おもちゃ」木内 勝,田中 皓也,福音館書店

ADHDさとるくんの場合―落ち着きのない子をどう育てるか」古沢 恭子,鈴木出版

「発達障害の子の感覚遊び・運動遊び」木村順,講談社

「2歳で言葉がない子・増えない子『様子を見る』のは危険です」金子保,メタモル出版

「ふるさと子供グラフティ」原賀隆一,クリエイトノア(祖父母向け:ホームページから購入)

「ふるさと子供ウイズダム」原賀隆一,クリエイトノア( 〃 )

 

情報本

 料理・掃除・運動・キャンプや外遊びに関する雑誌

 手作り:地域の保育園のパンフレットファイル

 手作り:地域の幼稚園のパンフレットファイル

 産婦人科情報誌

 遊び場ガイド

 幼稚園情報誌

           熊本の原賀隆一さんが描いた「ふるさと子供グラフティ」・・・子どもの頃を思いだします。