保育内容を保護者に説明する2013/05/23

平成20年に改正された「保育所保育指針」では、保育所の社会的責任として、「保育所は、保護者や地域社会に当該保育所が行う保育の内容を適切に説明するよう努めなければならない」と、努力義務が示されています。

公立保育所の場合には、市町村のホームページに保育園情報があります。しかし以前こども未来財団にあった全国の保育所情報が例の仕分けで消えてしまって以来、保育内容の説明がないページが多くあります。市町村の担当課には、「保育所保育指針」を理解した保育の専門性を保持する専門官が必ずしもいるわけではないため、情報公開の程度は、市町村によって異なります。

これに対して、私立の保育園では、各園で、ホームページ等での保育内容の説明が行われてきました。最近、一段とその説明内容と方法が洗練されていることを感じます。社会福祉法人の園では、園長先生やベテランの保育者が数年で移動することがないため、各園で着実に実践を蓄積できることと、戦後の焼け野原のなかで保育所を始められた園では若い二代目、三代目の園長に交代しはじめていることも、関係あるのかもしれません。

いつも、園の先生方の実践には驚くばかりですが、最近とくに、これはすごい!と感心した実践をご紹介します。
まずは、浜松市のなごみ保育園の志賀口先生の実践です。

                  これが、保護者への保育園の説明ファイルです。本のような厚さです。

                  保育の内容や環境の意図が、写真とともに詳細に説明されています。

 各年齢の発達のポイントや保育なども説明されます。卒園の写真を見ることで保護者は見通しをもてるでしょう。

          保育者が参加する研修、園内研修の様子を含め専門性の向上のための努力が説明されています。

この冊子は、園長先生が二年ほどかけてまとめられたそうです。私が何より感心したのは、園長先生が、これだけの保育内容を説明できる保育の専門性があるという事実です。保護者が入園時にこの冊子を渡されたら、保育園に対する信頼が、一気に高まるでしょう。


福岡市の和光保育園でも、保育園では珍しい設備を発見しました。
プロジェクターが、公共施設のように天井に作りつけになっています。これは珍しいですね。
これは、入園式、卒業式の際に、保護者にDVDを見せるために取り付けをされたそうです。
和光保育園さんは、保護者支援で大変に勉強させていただいた園です。保護者を共感的に理解しようとしていらっしゃる先生方だからこそ、保護者への説明には口頭に加えて視覚的な補助が必要だと気がつかれたのでしょうね。


入園式では一年間の保育の流れを写真で見せます。保護者に見通しと期待を、持っていただけるそうです。

卒園式では、0歳からの子どもたちの姿を編集し流し、保護者にはDVDを焼き増ししてお渡しされるそうです。卒業式の保護者の様子が目に浮かびます。


こちらは、浜松市のこまつ保育園。保護者が自由にみることができる保育内容のファイルです。
    
今日の保育、今週の保育といった保護者向けに壁に張った報告を、ファイルにまとめています。
時々しかお迎えに来ないパパやママ、祖父母も、保育の内容を見ることができます。


                  今年の造形展の記録だそうです。今年こそ行きたい。

                      作品の制作のプロセスが説明されています。


保護者に対する写真を使った保育内容の説明資料は、保育者同士が実践と理論を共有し合い、高め合うためにも効果的ですね。

実践を見せていただくたびに、保育現場の進化のスピードは本当に早いと感心します。
カメ(私)も、全力疾走でついていきます。

コメント

_ 高山静子 ― 2013/10/27 06:25

石代先生、コメントを入れていただきましてありがとうございます。「保育では一本釣りばかりをやらない」と園長から良く言われていました。問題が発生した後に対応する前に子どもたち全員に何をどれだけ行ったかが大事ですよと。保育者は予防育成にかかわるため、心理専門職とは違ったアプローチができるのが保育者の強みですね。保育の専門性と特性を生かした支援方法をとると、保育者は、保育の専門性を同時に高めることができるという利点もありますね。お役にたてて幸いです。

トラックバック