保育の内容・方法科目の教授内容2016/01/10

新年の富士山。


大学を移ってもうすぐ3年を迎えようとして、気づいたことがあります。
朝、駅から大学へ向かう道は太陽に向かう道。朝日を体一杯に浴びながら歩きます。なんだか運が良くなりそうって学生に話したら笑われました。

さて、保育士や幼稚園教諭の養成では、保育の内容と方法を学ぶ科目として、健康・人間関係・言葉・環境・表現の5領域と保育内容総論が設置されています。これらをどのような科目編成にするか、またどんな科目名にするかについては、各養成校に任されています。

たとえば、子どもが環境の認識と関わりの観点から発達をとらえそれらを育む保育を学ぶ領域「環境」では、その科目名は「保育内容演習環境」「子どもと環境」、「保育内容の指導法・環境」「「保育内容研究・環境」「保育内容・環境」など様々。「保育と環境」となんて科目名も。「保育の内容と方法:環境」とのそのものズバリの科目名はありません。
環境の領域には、自然、季節の事象、数量、図形、記号、道具、行事など様々な内容が含まれていますが、虫の生態ばかり、環境汚染のお話ばかりと単なる環境つながりの授業内容も見られます。他の領域でも健康の領域で「小児保健」のテキストを使用していたり、内容表現で保育者の基礎技能を教えていることも…。養成教育の質の課題は、厚生労働省の養成検討委員会の中間まとめ報告でも指摘されていましたが、対応は行われていないままです。

そこで、保育内容科目の教授内容について新しいミニマムスタンダードを作るべく研究をしました。(2014年大学紀要で発表)。教授目標と教授内容との整合性を図りました。

【保育の内容・方法に関する科目】 保育内容演習(演習・5単位)現行

<目標>

1.養護と教育にかかわる保育の内容が、それぞれに関連性を持ち、総合的に保育を展開していくための知識、技術、判断力を習得する。

2.子どもの発達を「健康・人間関係・環境・言葉・表現」の5領域の観点から捉え、子ども理解を深めながら保育内容について具体的に学ぶ。  

<内容>

以下の観点から、総合的に保育内容を理解する。

1.子どもの生命の保持及び情緒の安定を図るために保育士等が行う援助やかかわりである「養護」

①子どもの生理的欲求を満たし、子どもが健康、安全、かつ快適に過ごすための生活援助

②子どもを受容し、子どもが安心感と安定感をもって過ごすための援助やかかわり

2.子どもが健やかに成長し、その活動がより豊かに展開されるための発達の援助である「教育(健康、人間関係、環境、言葉及び表現の5領域)」

①健康な心と体を育て、自ら健康で安全な生活をつくり出す力を養う「健康」の領域。

②他の人々と親しみ、支え合って生活するために、自立心を育て、人とかかわる力を養う「人間関係」の領域。

③周囲の様々な環境に好奇心や探究心を持ってかかわり、それらを生活に取り入れていこうとする力を養う「環境」の領域。

④経験したことや考えたことなどを自分なりの言葉で表現し、相手の話す言葉を聞こうとする意欲や態度を育て、言葉に対する感覚や言葉で表現する力を養う「言葉」の領域。

⑤感じたことや考えたことを自分なりに表現することを通して、豊かな感性や表現する力を養い、創造性を豊かにする「表現」の領域。

 

【保育の内容・方法に関する科目】 保育内容演習(演習・5単位)改訂試案

<科目名>

保育の内容と方法(演習・5単位)

<目標>

1.「保育所保育指針」、「幼稚園教育要領」の各領域のねらいと内容を理解する。

.養護と教育にかかわる保育の内容が、それぞれに関連性を持ち、総合的に保育を展開していくための知識、技術、判断力を習得する。

.子どもの発達を「健康・人間関係・環境・言葉・表現」の5領域の観点から捉え、子ども理解を深めながら保育内容について具体的に学ぶ。

<内容>       

1.各領域の「保育所保育指針」「幼稚園教育要領」のねらいと内容

2.各領域の観点による子どもの発達過程

3.発達過程に即した具体的な活動の理解

4.内容の遊び・生活場面への具体的な展開

5.環境構成

6.保育者の援助・指導

7.内容の取扱いと配慮事項

8.個別の事例における保育内容の具体的な展開


保育内容の科目で、各領域の観点から、子どもの発達と、発達に関連した活動を学び、保育者としての援助方法を重ねて学び演習を行えば、保育の質は着実に高めることができるでしょう。また厚生労働省の通知内容が変われば、出版されるテキストの内容が変わります。5領域すべてのテキストに、活動に関連した発達と保育者の意図的な援助が含まれるようになれば、子どもを急がせ待たせる保育が減る可能性があります。保育は人。養成教育の質を高めれば、子どもたちの暮らしの質と経験の質を高めることができます。

とはいえ、指針や要領が抜本的な改革が行われて、観点の構造が変わると、科目名も変わりますね。
保育者養成教育の質を高めるべく、今年も研究会他で学びを続けていきます。


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