人形の選び方2025/05/04

「環境のアドバイスを下さい」と園へ呼ばれて、園で必ず見るポイントの一つに「人形」があります。
人形選びには、発達の理解と、玩具選びの原則の理解が見えやすいからなんです。
玩具選びの原則は、「子どもの姿に合わせて玩具を選ぶ」です。

園で人形を選ぶポイントには
1.大きさ
2.硬さ
3.手足の動きやすさ
4.精巧さ
5.表情
6.耐久性
があります。

その年齢の子どもが扱いやすいかどうかは、大きさ、硬さ、手足の動きやすさによって変わります。
たとえば1歳児クラスに小さくて手足が動く人形を置くと、子どもが抱いたり寝かしつけたりしにくくなります。1歳児クラスには、子どもが抱きやすい大きさで綿の詰まった人形を置くと、子どもは人形を抱いたりおんぶしたり、ミルクを飲ませたりの世話がしやすくなります。

写真は手作りのお人形です。綿をしっかりめに入れると1歳児、2歳児に扱いやすくなります。
輸入玩具の定番、くまちゃん・うさちゃんも、大きさを選ぶと1,2歳児には扱いやすいですね。
1,2歳児クラスは、一人遊び、平行遊びの時期です。同じが嬉しい時期のため、同じ人形を複数体置くようにします。

洋服の着替えをさせることができる年齢になると、手足が動く人形だと遊びが広がるでしょう。
本物らしさを求める5歳児以降には、指がある、鼻や耳があるなどの精巧な人形があるとお医者さんごっこ等の遊びが広がりやすくなります。


集団保育の玩具選びでは、耐久性も重要です。
保育カタログには、大きすぎる人形や耐久性の低い人形もありますのでよく確認して購入しましょう。

表情については以前書いたので以下をご覧ください。

ごっこ遊びの人形は、以下にも写真を掲載しています。

ちなみにぬいぐるみとキャラクター人形が置かれている園で、「なぜこの人形を選びましたか」と聞くと、たいてい「寄付です」と言われました。う~ん残念!

子どもの経験と絵本2025/05/11

こどものとも社の丸山さんから復刊した絵本を教えていただきました。


石川県輪島の朝市を描いた1980年に刊行された絵本だそうです。
海でとれたもの、山でとれたものを持ち寄る市場。
ある園長先生が、「祖母の店が描かれているんです」と教えてくれました。
市場のにぎやかさを知る子どもたちにも、スーパーしか知らない子どもたちにも読みたい絵本です。
能登半島地震の復興への願いを込めて収益は寄付されているそうです。


「エスカレーターとエレベーター(かがくのとも)」福音館書店、2023
こちらは、都会の子どもにとってなじみ深い経験を描いた科学絵本です。
エスカレーターはある子どもにとっては身近ですが、ある子どもにとっては、ものがたりのような世界かもしれません。

絵本やごっこ遊びの環境
は、子どもたちの地域や家庭での経験もふまえて選びます。


たとえば下の絵本はサッカースタジアムが身近な園やサッカー大会などに出る園で、置いておきたい絵本です。
こちらは月刊絵本のため、駒込の福音館書店本社まで買いに行きました。
福音館書店のかがくのともシリーズは、綿密な取材と時間をかけた作成が知られていますが、どのスタジアムを取材したのかを想像するのも楽しいですね。(赤いユニフォームです)


こちらも月間絵本です。こちらも綿密な取材を感じる本です。
保育者は、モンシロチョウが飛び交う頃になるとチョウの絵本を置き、園庭にテントウムシが出てくと、テントウムシの絵本を置きます。その園で子どもが出会える花や虫の絵本は、担任が変わっても必ず揃えておきたいものです。

季節と、地域と、子どもの経験に合わせて絵本の入れ替えを行う保育者の皆さん、いつもお疲れ様です!

*現在福音館書店の販売コーナーでは月間絵本が販売されていますが、「サッカースタジアム」や「テントウムシのいちねん」は、ない可能性もありますのでご注意ください。

乳幼児期の運動は、食事や睡眠と同じ2025/05/18

最近2つの園の保育者から、「公園が危なくて子どもを遊ばせることができない」という話を聞きました。

車道へ子どもが飛び出すことが予測される公園の例

共通していたのは公園の隣が道路なのに子どもが飛び出さない仕組みがないこと。
それでは保育者も保護者も安心して子どもを見守ることができないでしょう。

こういう話をすると、「親や先生がちゃんと子どもを見るべきだ」と言う人がいますが、
元々人間には、複数の子どもを同時にどこで誰が何をしているかを見る注意力は備わっていません。
10人、20人の子どもの行動を一人で見守ることは元々無理なのです。
そのため幼稚園や保育園では、門に鍵を二重にかけて子どもが道路に飛び出さない仕組みがあります。
車道に飛び出す公園はプールと同じ。人の注意に頼って安全を守ことには限界があります。

園庭が狭く、公園でも遊ばせることが危険となると、子どもの育ちには不利益が生じます。
乳幼児にとって、体を動かすことは発達に不可欠であり、
食事や睡眠と同じように毎日欠かすことができない生理的欲求です。
「昨日は公園で走り回ったから、今日は静かにすごそうね」なんてできません。

乳幼児期の子どもに、「じっとしていなさい」と言うことは、
「あなたは脳を発達させていけません」
「あなたは能力を獲得してはいけません」
と言うことと同じ
です。

乳幼児は動くことによって新しい能力を獲得します。
1歳の子どもは高いところに繰り返し登っては、高いところに登る能力を獲得し、
2歳の子どもは走り回って、走る能力を獲得します。
大人は登る能力を獲得しているため、高いところを見つけても、いちいち登りません。
人間の子どもは、複雑な脳のシステムをつくるために、起きている間中、活動を欲しています。

昔は「放っておいても子は育つ」と言われ、子どもが動き回れる地域がありました。
しかし今地域は車中心のまちづくりであり、
多くの親は子どもを遊ばせるためだけに公園へ連れていきます。

まちのハードは、子どもと大人、両方の行動に影響を与えています。
まちと子育てについてはまたつぶやきたいと思います。


高温化と園庭の環境2025/05/25

5月ですが、すでに真夏のような暑さの日がありますね。
先日伺った園では、もう園庭中にタープが張られていました。
暑い日も寒い日も、子どもたちと一緒に遊ぶ先生方、本当にお疲れ様です。

真夏になると高温注意情報や、熱中症特別警戒アラートが発表されます。
しかし警報は出ていなくても、5月から熱中症の救急搬送は起きています。
5月であっても水分補給活動内容などに留意したいですね。

気候が変化しているのに例年通りの保育を行う、が一番危険

とくに私立の保育園やこども園では、
気温に合わせて、例年より早く園庭にタープを張る。
気温に合わせて、水遊びを行う。
室内、園庭では、例年より早く水分補給コーナーをつくる。
例年通りの園庭・ホールでの運動会の練習はさける。
気温や湿度が高い日にホールで例年通りの活動をしない。
など、子どもの命を守る柔軟な対応が多く見られます。

園庭にも工夫がほどこされています。
園庭を森にしたながかみ保育園さんの園庭 

高温化と大気汚染から子どもを守るために、
今、運動場のような園庭から、
森のような園庭へと改善している園が増えています。

園庭に木陰がもっとほしい。
落ち葉プールができるほど木を増やしたい。
チョウや虫や鳥が来る園庭をつくりたい。
そんな願いを実現するための補助金もあります。

今、自然はある意味ぜいたく品と言えます。
子どもが歩いていける範囲に森があるのはごく一部の地域だけです。
園長先生か市長さんは、どんな地域にも新しい森をつくることができますね。