環境を構成しはじめると生じる悩み ― 2025/11/27
熊の出没で外で遊べない園の先生方、大変にお疲れ様です。心労はいかばかりかと思います。
熊は地域差がありますが、研修会場で保育者の皆さんから受ける相談は、本当によく似ています。
今日は、一斉保育から主体的な活動を中心とした保育へ変えはじめた先生方からよく受ける質問と、私の回答をご紹介します。
〇食事も午睡もお部屋で行うためコーナーを常設できない
保育室のほかにレストランや午睡室がある園はごく一部であり。環境を構成している園の多くは食事と午睡が同じ部屋です。食事と午睡の時間には棚と机を移動する、食事のテーブルは机上遊びのテーブルとして使う、各コーナーの中で午睡する、廊下やテラスで食事をする、廊下も保育室にする、0歳児は運動遊び、1歳児は操作遊び、2歳児はごっこ遊びなど各クラスにコーナーを設置し移動が自由にできるようにするなどの工夫があります。
保育室のほかにレストランや午睡室がある園はごく一部であり。環境を構成している園の多くは食事と午睡が同じ部屋です。食事と午睡の時間には棚と机を移動する、食事のテーブルは机上遊びのテーブルとして使う、各コーナーの中で午睡する、廊下やテラスで食事をする、廊下も保育室にする、0歳児は運動遊び、1歳児は操作遊び、2歳児はごっこ遊びなど各クラスにコーナーを設置し移動が自由にできるようにするなどの工夫があります。
〇すべてのこどもにぴったりの環境がつくれない
とくに012歳のこどもは発達の差が著しいため、月齢の高い子に合わせると月齢の低い子には危険などとても迷うことと思います。こどもが10人いれば、10人とも発達欲求が異なります。どの子にもOKの玩具や環境を見つけられればよいですが、難しい状況も多いと思います。10人のこども全員に良い関わりをしようとか、全員に良い環境をつくろうと思う必要はありません。半分のこどもがよく遊ぶ環境がつくれていたらよしとしましょう。環境づくりは100点満点中30点で十分です。012歳の異年齢でも事故が起きず、よく遊ぶ玩具については「子育て支援の環境づくり」をご参照下さい。
〇ケガをしそうでこどもを止めてしまう
0歳が登ると危険なすべり台があるとか、大きなけがをしそうな場所が園内にある場合には、まずはその環境を変えましょう。危険の発見と改善は木村歩美先生の「ワクワクと安心の保育づくりへ」ひとなる書房2024が参考になります。
0歳が登ると危険なすべり台があるとか、大きなけがをしそうな場所が園内にある場合には、まずはその環境を変えましょう。危険の発見と改善は木村歩美先生の「ワクワクと安心の保育づくりへ」ひとなる書房2024が参考になります。
他の保育者が止めないような行為でも止めてしまう保育者は、発達の勉強をすることで、”ダメダメ率”が下がります。とくに012歳児は発達を理解すると、こどもを止める、叱る率が下がります。「どうしてそんなことするの」、「だめでしょ」が口癖の保育者は、発達の勉強をしてみましょう。こどもの行動を理解し、こどもの発達欲求が見えるようになると、こどもを見守ることができるようになります。
〇部屋が散らかり、これでいいのと感じる
手は”突き出た大脳”と言われます。散らかったお部屋は、子どもたちが脳を発達させた証拠です。
手は”突き出た大脳”と言われます。散らかったお部屋は、子どもたちが脳を発達させた証拠です。
部屋が散らかるとイライラする方は、「子育て支援ひだまり通信」をご覧ください。
0歳、1歳は秩序を壊すこと自体が遊びになります。歩き始めた1歳児は物をもって移動することが遊びです。記憶力がついてきた2歳児は物を移動させてどこかに”巣”をつくるために行ったりきたりします。このような発達に伴う姿が分かっていると、子どもが物を移動させることを不安に感じません。
環境の工夫としては、遊びの空間ごとに色の異なるじゅうたんを使うと物が移動しにくくなります。また床に玩具が散らばると子どもは遊ばなくなりますので、012歳児クラスでは保育者は常に遊んでいない玩具を棚にさりげなく並べ続けましょう。
ブロックやままごとを大きなケースの中に入れている場合、ケースをガラガラとひっくり返す行動も起きやすく、散らばりやすくなります。こどもがお家の空間やお出かけの空間の中でイメージをもって遊んでいる場合には、部屋中に玩具が散らばることは少ないと思います。
玩具の質も散らばる原因になります。こどもを楽しませてくれるだけのお菓子のような玩具が多いと、こどもはすぐに飽きるため、あちらこちらに玩具が散らばることが起きやすいです。
保育者の悩みは、たいていどこかの本にヒントがあります。
悩んだら本の目次を見ることを習慣にしてみてくださいね。

悩んでいる人は、伸びている人。悩みは成長の証です。
「望ましい経験を環境に置く」が分かる図 ― 2025/11/20
保育者の主体的・対話的な学びの支援が、今の私の関心事。
主体的な学びには、保育者が見る・読むだけで分かる良質な教材作成が欠かせません。

写真や映像は、具体的すぎて情報量も多いため、理論(原則)の伝達には向きません。
文章の理解は、読む人の読解力に左右されます。
図とキャッチコピーは分かりやすいけれど、省略するものがあまりに多くて、厳密さからは遠ざります。
これらを織り交ぜて教材化することが、今のところ有効ではないかと考えています。
ここ数年で環境の構成が広がった結果、”託児”のようなコーナーが増えていることに気づきました。
そのため環境構成の研修会では、誤解を解くための新しい言葉をつくる必要性が出てきました。
今、原則を伝えるために試行錯誤を続けているのが下の三種類の図です。

これだと絵本や歌、リズム活動など保育者が文化を提供する必要性が見えません。

この図だと、令和も一斉活動をしなくてはならない感が出てしまいます。
012歳児クラスでも一斉活動を行うと誤解されるとその弊害は大きい。
こどもの生涯にわたる意欲と学ぶ力に悪影響があるため、誤解を広げることはできません。

これだと、令和の保育は昭和の一斉活動でも自由遊びでもないことが表現できません。
保育者へのヒアリングを続けて最適な図を作りたいと思います。
昭和の自由遊びと令和の遊び ― 2025/11/12
昭和の時代の保育は、保育者が主導する一斉活動と自由遊びでした。
子どもに経験してほしい活動を一斉活動として行い、それが終わると保育者がブロックやままごとのケースを出して「はいどーぞー」、これを「自由遊び」と呼びました。
しかし、令和の保育所保育指針や幼稚園教育要領には、「自由遊び」という概念はありません。
令和は「遊びを中心とする保育」ですが、これは昭和の時代の「自由遊び」を行うことではありません。
子どもが一日中ブロックやままごとのコーナーで遊んでも、遊びが幼児教育にはなりません。
むしろ昭和の時代に行っていた「一斉活動」を常時保育室に環境として準備すると考えてはどうでしょうか。たとえば一斉活動として色画用紙でクリスマスツリーをつくる活動をしていたならば、令和の時代は、その活動をコーナーに準備し、子どもが何枚でも繰り返し作れるようにします。保育者が多様な素材や道具を準備すれば、子どもは毎日繰り返すうちに大きなツリーを作ったり、立体のツリーを作ったりするかもしれません。
繰り返すことで、子どもは一斉の活動よりも試行錯誤ができ、考え工夫する体験ができます。一斉活動よりも遊びを中心とした方が子どもの能力が伸びるのは、繰り返しを十分にできるためです。
昭和は望ましい経験を一斉活動とし、令和は環境に準備して自発的な遊びを中心とします。そして令和の保育でも、歌やわらべうた、絵本、季節の行事のように保育者は文化を提供しています。遊びを中心とした保育は、毎日が小学校でいうところの生活科や総合学習と考えてみてはどうでしょうか。

遊びを中心にした保育は、放任でも、託児でもありません。
保育者の意図やねらいがあり、環境の構成があることで成り立つ教育方法です。
保育者の意図やねらいがあり、環境の構成があることで成り立つ教育方法です。
乳児クラスの遊びの素材と道具選び ― 2025/10/26
012歳の遊びは、発達欲求のあらわれ。
まず、乳幼児の遊びとは何か、「改訂環境構成の理論と実践」p52,53で確認しましょう。
そして参考資料を選ぶ際は、子どもの発達欲求を遊びと捉えている書籍を選ぶようにします。
子どもを喜ばせる菓子のような玩具を掲載する本も多いため、書籍選びには注意しましょう。
以下の本は、発達の道筋に合わせて市販のおもちゃを紹介しています。
オールカラーで、市販のおもちゃと子どもが遊ぶ姿を同時に見ることができる本です。
瀧薫「新版 保育とおもちゃー発達の道すじにそったおもちゃの選び方」エイデル研究所 2018

以下は後半に手作りの玩具が掲載されています。文庫版になって内容は減りましたが、文章の部分を読むと玩具をつくる、選ぶ基本が分かります。今はkindle版は無料期間でした。
相良敦子「モンテッソーリ教育は子を育てる、親を育てる お母さんの「敏感期」2013(文庫版)文藝春秋
上記に限らず、モンテッソーリの考え方に基づく本には、発達に合った玩具が多く紹介されています。

上記に限らず、モンテッソーリの考え方に基づく本には、発達に合った玩具が多く紹介されています。
モンテッソーリは子どもの発達欲求をとらえて環境をつくることを理論化した環境構成の元祖です。
関わりの技術を習得できる養成課程を ― 2025/10/26
下書きで不適切保育について書いているときに、またもや不適切保育が発覚しました。
14人の内、10人の保育士が虐待を行っていたとの報道です。
実は私も似たような園で働いたことがあるため、園内の雰囲気が想像できます。
優しい先生は辞め、怖い先生だけが残っていく園だったのでしょう。
保育士による虐待や不適切な行為は、個人の性格の問題だと考える人が圧倒的のようです。
(ニュースのコメント欄の”いいね”を比較してみてください)。
しかし、もしも5つ子を一人で育てている保護者が子どもを怒鳴ったり叩いたりしたら、保護者の性格が悪いと考える人はいるでしょうか。この日本で、5つ子を一人で育て、食事や排せつや午睡の世話をし、毎日公園へ連れていき、笑顔で子育てできる人は何人いるものでしょうか。
まして日本のクラス規模は大きく、1歳児で20人、30人以上のクラスもあります。10人の1歳児クラスは少人数の方ですが、それでも一人の保育者がオムツを交換している間、一人で9人の子どもを見ることがしょっちゅうです。個人の資質や人間性で、集団の保育を行える人はいません。

30人でも落ち着いた食事ができるのは保育者に環境構成や関わりの技術があるからです。
現場は努力を重ねていますが、保育者の養成は、まだ集団で保育を行うために必要な技術を習得できる課程ではありません。養成課程は、まだまだ昭和感が満載なのです。
不適切保育を根本から改善するには、保育者の養成課程を改善することが一つの方法だと考えられます。
保育士養成課程には行政指導としてモデルシラバスがあるため、その内容を変えることです。
現在の保育者養成課程には、環境を構成する技術も、子どもと関わる技術も習得できる科目がありません。
私はこれらを研究していますが、教えられる科目がないため、授業ではとても苦心していました。(授業のシラバスはモデルシラバスに基づいて書かなくてはならず、環境構成や関わりを授業で教えようとするとシラバスとは違ってしまい学生との契約違反になってしまうのです)。
たとえば「子どもの理解と援助」という科目はありますが、教授内容を示すモデルシラバスでは、心理中心の内容が示されています。ほぼすべてのテキストが、その行政指導に従って記述されます。そのためテキストには、記録と話し合いによる子どもの「心理」の理解と、抽象的な援助方法が並びます。事例はあっても具体的な技術を習得できる内容がありません。
保育者は、心理の理解と言葉による援助だけで子どもの育ちを支えることはできません。保育では心理の他にも生理、器質(形質)、環境などを把握し、生活全体で援助を行います。保育者は、子どもの心を癒すカウンセラーではなく、育むことが中心の職務です。しかしモデルシラバスには、その方法の教授内容がないのです。
うん十年前、専門学校で教員をしていたとき実習から戻ってきた学生が、「保育者たちは体罰を使っていたが、私は先生に言われていたので絶対に体罰はしなかった。けれど他の大学の実習生は実習の終わりごろには体罰を使っていた」と聞いたことがあります。実習生の立場で、先生たちと違う関わりをするのは勇気がいったことでしょう。
誰でも、聞いたことがない言葉は話せません。知らないことはできません。本能や心がけで、大勢の子どもに食事を食べさせたり午睡をさせたりできる人はいません。
私自身、日常的に体罰を使っていたベテラン保育者が、私の口真似をして体罰を使わなくなった体験をもっています。心や性格を変えなくても、知ることができれば、言葉と行動を変えられる人は多くいるはずです。
研修で、抽象的に「人権を尊重しましょう」と聞いても、新しい言葉と行動の習得はできません。
保育士と幼稚園教諭の養成課程の内容を改善すれば、現役保育者の研修の質改善にもつながります。
養成課程の改善は、予算も不要で、すぐに取り組めることではないでしょうか。
幼児クラスの遊びの素材と道具選び ― 2025/10/20
遊びが幼児教育になるためには、遊びの素材と道具選びが肝。
子どもが遊びを広げる素材には、砂や草花等の自然物、玩具(市販・手作り)、紙などの人工的な素材、廃材等があります。素材に働きかけるための道具には、玩具、生活用品、用具・工具等があります。(「改訂環境構成の理論と実践」p58)
しかし、保育カタログから、子どもが遊びを広げることができる玩具を選ぶことは至難の業です。
そこで、保育室の環境を充実させる具体的な方法を提案します。
まず準備するのはこの本です。同僚と一緒に検討できるとよいですね。
高山静子「学びを支える保育環境づくり」小学館、2017

(準備 第2章の「保育環境で保育が変わる」は環境構成の基礎知識ですので、各自で読んでおきます。
基礎が分かっている場合にはここは省略でかまいません)。
1 第1章の「保育環境最前線」の写真と見出しをざっと見ます。
2 p38のコラムを交代で声を出して読み、実践を振り返って意見を交換します。
3 第3章の「幼児期の学びを支える保育環境」を一緒に見ながら、一つひとつの項目(話し言葉、数量感覚など)の見出しと写真を見ながら自分のクラスに加えた方がよいものに付箋をつけたり、書きだしたりします。
4 第4章の「遊びを豊かにする保育環境」の見出しと写真をながめながら、クラスの子どもの遊びが豊かになるための玩具や空間づくりを考えます。
5 コラム(「遊びで自己制御を育む」等9つある)は、一つのコラムを交代で読みお互いの意見を聴き合う、幼児教育の意義を保護者に説明しやすくなります。言葉での表現力を高めるために声に出して読む、意見を話すことがポイントです。
これらを自分たちのペースで、できるときにできるだけ積み重ねてみましょう。
きっと子どもの姿が目に見えて変わってくると思います。
保育は人間の能力をはるかに超えている!? ― 2025/10/13
看護師を対象とした研究では、仕事の達成感が低い(看護ができていないと感じている)人ほど「辞めたい」と考えている率が高くなる結果がありました。保育も退職者を減らすには、保育者が有能感を感じられることが大切でしょう。
しかし、子どもを大切に考えてよく学び、メタ認知(客観的に見る力)が高く、質の高い保育を行っている保育者ほど有能感や達成感を感じにくのが、保育という仕事ではないでしょうか。
保育は、乳幼児期という病気やけがをしやすい時期の子どもの命を守る仕事です。乳幼児期は、保護者がたった一人の我が子でさえ子育てが難しいと感じる時期です。保育者はその難しい時期の子どもを集団で保育します。幼児教育は、小学校の生活科や総合学習のような複雑な展開方法を用います。保育所と認定こども園(連携型・保育所型)の保育者は、教育機能に加えて食事と午睡も行い、保育時間も長時間のため長時間の緊張が続きます。また福祉ニーズも加わるためより高い専門性が必要になります。

高山静子「子育て支援の環境づくり」2018 P98 幅広く高度な専門性を求められる保育者
上記のイラストの下書きを書いたのが2016年、その後障害・貧困・外国籍・メディア漬けの子どもと保護者は増加し、保育者の職務は困難を増しています。

高山静子 ここ最近の研修資料より
保育者は”人間をはるかに超えた能力”を求められています。
「一人の子どもと関わりながらも全員に注意を配りなさい」・・・人間にはそんな能力はありません。
「子どもにずっと注意を向け続けて安全を見守りなさい」・・・人間にはそんな注意の持続力はありません。
「集団の子どもたちを相手にしながら一人ひとりを受け止めなさい」・・・無理です。
「一人ひとりの子どもをよく理解しましょう」・・・人が他者を理解することは困難を極めます。
「子どもにずっと注意を向け続けて安全を見守りなさい」・・・人間にはそんな注意の持続力はありません。
「集団の子どもたちを相手にしながら一人ひとりを受け止めなさい」・・・無理です。
「一人ひとりの子どもをよく理解しましょう」・・・人が他者を理解することは困難を極めます。
長時間の集団保育を行ったことがない”専門家”から机上の空論を言われ、
行政からは、保育を見ずに書類ばかりの監査と指導をされ、
質の高い保育を行おうと努力を続けている園や保育者ほど、無力感を感じやすい状況があります。
保育者は、もっと自分のハードルを下げてよいのです。
今日、一人の子どもにぴったりの環境をつくれたら、「いい保育ができた」と喜びましょう。
今日、一人の子どもと上手く関わることができたら、「よかったよ」と自分をほめましょう。
100点満点の保育をめざさなくていい。30点で十分です。
保育者を、「ただ子どもを預かっているだけ」という目で見る人がいるかもしれません。
研修では、「もっと人間性を高めなさい」と言われるかもしれません。
「保育の質を高めるために文章を書きなさい」という、とんちんかんな指導があるかもしれません。
しかし保育は、個人の資質や人間性で行える職務ではありません。
保育者の職務は、専門知識を学び実践を重ねて修得する専門性で行うものです。
保育者の職務は、専門知識を学び実践を重ねて修得する専門性で行うものです。

保育者の専門性は幅が広く深い(研修資料より)
保育者自身も、保育は専門性の修得が必要な難しい職務だと自覚していないと、
「上手くできないのは、自分が保育者に向かないからだ」と誤解してしまいかねません。
高い専門性をもち何十年も経験があるベテランでも、子どもは一人ひとり違い、子どもの家庭環境も変わるため、日々悩むのが保育という職務です。
書店には「人間関係」に関する本が並んでいます。それだけ人は人に悩んでいます。
小さな子どもたちを一人の人間として大切に考える保育者ほど、悩みが生じるのではないでしょうか。
「上手くできない」と感じているあなたは、よく頑張っています。
毎日、子どもたちに笑顔を向けているだけで、あなたは素晴らしい保育者です。
ままごとと、ごっこ遊び ― 2025/10/05
幼児のおもちゃとして誰もが思い浮かべるのは、ままごと、ブロック、パズル、電車。
これらは、保育士資格や幼稚園教諭免許がなくても、誰もが知っているおもちゃです。
専門家がつくる保育室が、ままごと、ブロック、パズルコーナーでは残念ですよね。
保育者が心理学で学ぶのは、「ままごと」ではなく、「ごっこ遊び(虚構遊び・想像遊び)」です。
子どもの想像遊びは、一人での見立て・つもりから、平行遊びへ、そしてイメージを共有するごっこ遊びへと変化していきます。ごっこ遊びには、「ままごと」といわれるお家ごっこの他に、お店やさんごっこなど仕事のごっこ遊び、絵本等の物語のごっこ遊び、お祭りや運動会など印象的な出来事のごっこ遊び等があります。

ごっこ遊びの共通イメージには、子どもたちが地域でよく行くお店での経験、地域のお祭りなど印象的な体験、園で繰り返し読む共通の絵本、消防署見学などの園での共通体験があります。保育者は、それらの子どものイメージから、そのごっこ遊びのきっかけとなるシンボルを準備したり、子どもがシンボルを作れるように素材を準備したりして、遊びの広がりを助けています。
4,5歳児クラスでままごと用品しかないのはちょっと残念。
お皿とスプーンとプラスチックの食材しかない、人形もいないとなると、「どうぞ~」「いただきます」のやりとりばかりになります。木製の小さなお鍋やフライパンでは、お料理も作れません。
しかし残念ながら保育カタログには、遊びが広がりにくい玩具が掲載されていることも多いのです。

料理を作れず遊びが限られる保育用玩具

料理を作れない、料理を盛れない保育用玩具
以前ゼミで、上記の写真のような野菜やパンの玩具と、小さな木製ままごと用品を並べて、「これでできるだけ豊かに遊ぶ」という課題を出したら、学生たちは、「むずっ!!」と怒っていました・・・。(玩具が残念でも新聞紙や広告紙でバッグや財布をつくる、新聞紙の帽子をかぶり新聞紙を敷いたり、イスを使ってパン屋や八百屋になる、お店の看板や値札をつくる、スーパーのレジになる、実物カルタ遊びなど、できることもあります)
ごっこ遊びの環境を充実させるには、まず子どもと一緒に遊んでみましょう。
お家ごっこも、一緒に遊びに入ることで、お料理の具材がほしい、テーブルが狭い、人形を寝かせる場所がほしい、車に見立てられるものがほしいなどいろいろと発見があると思います。
研修よりも採用が大事 ― 2025/09/22
保育者の効果的な研修を研究していたとき、
「セレクションはトレーニングに勝る」、
「仕事が木登りであれば、七面鳥を訓練するより、サルを雇った方がよい」、
という言葉を知って、衝撃を受けました。
七面鳥だって、トレーニングを重ねれば木に登れるようになるかもしれません。
けれど七面鳥に向く仕事につく方が、七面鳥も幸せでしょう。
研修よりも、採用が大事。
となれば、競争率が出るぐらい応募者が集まらなくてはいけません。
そのためには、よい保育を行う必要があるのは以前書いた通りです。
保育者の職務に向くかどうかは、面接や小論文では判断しにくいものです。
面接や小論文よりも保育に入る方が、子どもや同僚とのコミュニケーションが分かります。
面接用のスーツよりも、私服と保育の服装の方がその人の個性は見えます。
ある園は、応募者には実習に入ってもらって保育者に採用したい人と理由を聞くそうです。
保育では、ここから2月に向けて求人数が増え、本格的な採用の季節がはじまります。
各園で保育という職務、そしてその園に合った応募者を採用できますように。

保育者も、それぞれが輝ける職場づくりを。
動物がくれる力 ― 2025/08/27
街頭でしか購入できない「THE BIG ISSUE」、久しぶりに販売者さんを見つけ4号まとめて購入しました。
VOL.506、7月1日号のスペシャル企画は、「スイミー」や「あおくんときいろちゃん」の作家レオ・レオーニ。
絵本の背景にあるレオ・レオーニの育ちや経歴を電車の中で夢中で読みました。
そして特集の「動物たちの力を借りる」があまりにも面白くて、満員電車の中で、「この雑誌知ってます?面白いですよ!」と周りの人に見せたくて仕方がない衝動にかられました。
特集では、アニマルセラピー(動物介在介入)の多様な実践、子どもたちが犬に読み聞かせを行う実践(三鷹市立三鷹図書館)、生きづらさを抱える子ども・若者に保護犬・猫のケアやトレーニングの機会を提供する実践(認定NPO法人キドックス)などのインタビュー記事があります。
アニマルセラピーの多様な実践では、
学校犬や図書館犬、
一時保護所で子どもに寄り添うセラピー犬、
重い病気の子どもの検査や、治療に寄り添うファシリティドッグ、
被害者の子どもが裁判所で証言する際に寄り添う付き添い犬、
少年院等で保護犬の訓練を行う実践など、
わずか数ページの記事のなかに様々な実践が紹介されていました。
加えて、「犬には、子どもの心を瞬時に開かせる力がある」、
「全面的に受け入れられていると感じることができる」、
傷ついた子どもたちが、「傷ついた犬の世話をするなかで生きる力を取り戻していく」、
(いずれも大塚敦子さんのインタビュー)
など、保育にも共通する示唆に富む言葉があふれていました。
も、ぜひ読んでみたいと思いました。
