なぜキャラクターが保育に必要なのか2011/11/27

「園から帰ってくると、子どもの手にアンパンマンが書かれているんです。子どもがうれしそうにしているから、一応『よかったね』と言いますけど、ほんとは先生に、『手に書かないで下さい』と言いたい」
「園の行事で、ウルトラマン音頭を踊るわが子を見て情けなくて涙が出ました」
「うちのクラスには、ディズニー絵本と昔話のアニメ絵本しかありません。参観に行くと腹が立って仕方ありません」
「なぜ先生たちってあんなにアンパンマンが好きなんですか?」

・・・・厳しいけれど、これは以前子育て支援をしていたときに保護者から直接聞いた声なんです・・・。


保護者は、「幼稚園や保育園の先生は専門家」と期待を抱いています。熱心な保護者ほど、保育の内容が「素人っぽく」感じてしまったときの失望感は大きいようです。でも、保護者は、先生には遠慮をして何も言いません。

テレビ番組やDVDになってしまったキャラクターは、子どもが想像をつけくわえる余地が少ないもの。キャラクターは、どの子どもも同じ声、同じ話し方、同じ行動を想像します。幼児はとても想像力が豊かですが、それでもさすがに
ウルトラマンやアンパンマンを赤ちゃんに見立ててごっこ遊びをする子どもはいません。シンプルな大型遊具の場合には、子どもたちの想像によってお家になったり船や消防自動車になったりと変化します。しかしキャラクターがついていると、とたんに子どもたちは想像力を発揮しにくくなります。
映像の再現行為は、類推や人とのかかわりが育っていない子どもにもできます。一方、ままごとや絵本のごっこ遊びは、子どもによって想像する内容が異なり、イメージのすりあわせが必要になります。「こういうことにしよう」と話し合ったり、意見のぶつかり合いでけんかが生じることもあります。
遊びのなかでさまざまな能力を獲得する幼児期には、完成されていて子どもを楽しませるタイプのおもちゃではなく、子どもが想像力や思考力を発揮することで遊びが生まれるような、シンプルな素材と題材を選ぶ必要があります。



子どもを楽しませてくれるタイプの文化は家庭で十二分に与えられています。保育者は、消費文化を園には持ち込まず、市場から子どもを守り、子ども自身がつくりだす遊びを優先したいですね。
キャラクター玩具やキャラクター絵本は、相談室や一時保育で、うまく活用してみましょう。

保育の専門職の場合、専門知識という根拠に基づいて、玩具や絵本の選択を行います。
以前、研究である園へインタビューに伺った際、先生方に「なぜこの人形ですか」、「なぜこの玩具はこの高さですか」とお尋ねすると、「それは・・・」と、そのクラスの子どもたちの発達段階とその玩具の特性とを合わせて、選択の根拠を説明されるのが実に見事でした。家庭では、玩具や絵本を「子どもが喜ぶこと」を基準にすることも多いと思いますが、園は家庭のモデルでもありますので、保育の原理に基づいた選択を行い、それをわかりやすく保護者にも説明できるとよいですね。





原賀隆一さんよりいただいた色紙
             草は子どもが想像力を発揮できるシンプルな素材。絵は原賀隆一「ふるさと子供グラフティ」
         

コメント

_ (未記入) ― 2014/03/26 05:02

古賀先生、訪問ありがとうございます。どうぞご自由にお使いいただければと思います。心ある保育者養成に携わる教員が、保育の原理や子どもの発達に沿った保育内容を教えていけば、現場も少しずつ変わることでしょう。ここに掲載した保護者の声は、城南区でも何度も聞きました。5月に「環境構成の理論と実践」を発刊予定です。発刊しましたら、またブログでお知らせいたします。

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