各国の子どもに対する職員の数とクラス規模2012/02/24

OECD編著(星三和子・首藤美香子・大和洋子・一見真理子訳)OECD保育白書 人生の始まりこそ力強く:乳幼児期の教育とケアの国際比較 明石書店、2011には、研究参加国の保育の概要が掲載されています。

この白書は、乳幼児期の保育(教育とケア)が、効果的な人的投資として注目されていることを報告しています。
乳幼児期の質の高い保育への投資は、「乳幼児の発達上のメリット、女性と家庭への経済的利益、生産性と税収の増大によるプラスの社会経済効果、労働市場の規模と柔軟性、社会福祉および社会的結束と地域社会の発展、最後に学習の基盤がうまく築かれた場合の子どもの学業成績の向上など」をもたらすことが、これまでの研究により明らかになっています。反対に劣悪なケアを受けた場合には子どもへの悪影響があることも明らかです。

OECDの報告書を読むと、日本が乳幼児の保育への投資がいかに少ないか、また税の再配分により子どもの貧困を減らすことにまだ成功していないか考えさせられます。(私たちの責任です。政治家を選んでいるのも投票に行かないのも私たちですから)

子どもたちが人として尊重にされ、交通事故や虐待や犯罪に遭う子どもが少なく、ほんとうの意味で幸せに暮らせることが文化的な国の証といえるでしょう。事故に遭わずに無事に生きている子どもたちも、早期教育に駆り立てられ、かわいくと飾り立てられ、早くもっとと急がされ、親と教師から受験戦争に送り込まれている・・・なにかさびしいですね。 幼児教育も、35人に1人の保育者という構造の質は、あまりに貧しすぎです。地方分権の今こそ、成熟した地域社会をつくりたいものです。

そのためにも資料編から各国の職員一人あたりの子どもの数と、クラス当たりの最大人数を抜書きしてみたいと思います。(根性) 「 」内は報告書をそのまま抜書きしたもの。( )内は報告に書かれた内容の補足です。ご参考に。


 〇〇子どもの数に対する職員配置数〇〇
〇オーストラリア(州により異なる)
長時間ケア施設:0~2歳は、子ども4~5人に対して職員1人、2~3歳は子ども10~12人に対して職員1人、3~5歳は子ども10~15人に対して職員1人。(以下同じく、前の数字が子どもの人数、後が職員数)
プリスクール・幼稚園:3~5歳は20~26人に対して教師1人と補助職員。
〇オーストリア
保育所8.7人対1人。
幼稚園16人対1人。
〇ベルギー:フランス語圏共同体
保育所:7人対1人。(子どもの年齢によって異なる)
エコールマテルネル(幼児学校):15人対1人。
〇ベルギー:フラマン語圏共同体
施設型デイケア:6.5人対1人
プリスクール:17人対1人、初年度(2歳半から)は、17人対2人。
〇カナダ(州により異なる)
1歳児:3~8人、3歳児7~10人、5歳児8~15人
〇チェコ
公立幼稚園:12人対1人
〇デンマーク
0~2歳は3.3人対1人、3~5歳は7.2人対1人、0~9歳の混合クラスは6人対1人。
〇フィンランド
3歳未満は4人に対して1人、3歳以上は7人に対して1人。
〇フランス
チャイルドケア(推奨):0~2歳は5人対1人、2~3歳は8人対1人(0~3歳は家庭型ケアが中心)
エコールマテルネル(幼児学校):3~5歳は25.5人対1人
〇ドイツ
報告なし。
〇ハンガリー
保育所:12人対2人。
幼稚園:22人対2人。
〇アイルランド
就学前教育クラス(4,5歳):25人対教員1人。(24%が30人以上補助員なしの学校で学んでいる)
就学前教育の場以外0~3歳:報告なし。3~6歳は8人対1人。
アーリースタートクラス(不利な子どもを対象、半日制):15人に2人。
〇イタリア
保育所:7人対1人。(0歳児はほぼ親がケアし、3歳以上児の98%が幼児学校)
幼児学校:通常25人対1人。例外28人対1人。障がい児がいる場合20人対2人。加えて教師補助員と宗教の教員がいる。
〇韓国
保育施設:1歳未満は3人対1人。1歳児5人対1人。2歳児7人対1人。3歳児15人対1人。4~6歳児:20人対1人。特別なニーズがある子どもがいるチャイルドケア施設は5人対1人。
幼稚園(推奨):3歳児15~25人対1人、4~6歳児は25人~30人対1人。異年齢混合は20人~30人。
〇メキシコ
公的規制なし。教育省が推奨する比率は25人対1人。「都市部のクラスでは職員1人当たりの子どもの数が30人、時には40人をはるかに越える場合も見受けられる。」
〇オランダ
「新チャイルドケア法では決められていない」が、報告には、0歳児4人対1人。(1~2歳児5人対1人。2~3歳児6人対1人。3~4歳児8人対1人。4~12歳10人対1人とある。
〇ノルウェー
0~3歳で一日6時間以上いるときには7~9人対1人。(0歳児はほぼ家庭養育)。3~6歳児は14~18人対1人。
〇ポルトガル
保育所:0~3歳児子ども10~12人対2人。(90%が家庭養育)
幼稚園:25人対1もしくは2
〇スウェーデン
地方自治体が決定し、「施設型ECECと家庭的では職員1人につき子ども5~6人が典型的である」(18か月未満の子どもはほとんどが家庭養育)
〇イギリス
施設型ケア:2歳未満児は3人対1人、2歳児は4人対1人、3~7歳児は8人対1人。
ナーサリー・スクール、ナーサリー・クラス(3~5歳児):13人対1人。
レセプション・クラス(4歳児):30人対2人。(教員とレベル3以上の補助職)
〇アメリカ
州により異なる。一般的に乳児4~6人対1人。プリスクール:10~20人に1人。2,3歳児はこの中間くらいの比率


 ●●クラス当たりの最大人数●●
●オーストラリア
行政区によっては上限なし。プリスクールおよび幼稚園は一クラス30人まで。
●オーストリア
最大人数は28人(多くの地方では25人)
●ベルギー:フランス語圏共同体
3~6歳は最大32人。
●ベルギー:フラマン語圏共同体
デイケアスクール共に施設・学校が決定する。
●カナダ(州により幅がある)
1歳児クラスは6~18人。3歳児クラスは14~25人。5歳児クラスは16~25人。
●チェコ
28人。
●デンマーク
クラス定員に関する法律はない。一般に1,2歳では12人を越えない。3~5歳では22人を越えない。
●フィンランド
保育所は大きさの要件がない。
就学前教育(6歳)は最大グループ人数は20人が推奨。13人を越えたグループには補助職員がつく。
●フランス
報告なし。
●ドイツ
一般的には、幼稚園の一クラス集団は25人を超えない。
●ハンガリー
保育所:12人。幼稚園:25人。
●アイルランド
0~3歳は20人。3~6歳は29人。
●イタリア
保育所は10人。幼児学校は最大25人。
●韓国
幼稚園:3歳児は15~25人、4~5歳児は、25~30人、異年齢混合クラスは20~30人。
●メキシコ
報告なし。
●オランダ
登録チャイルドケア施設の一クラスの平均人数は0~4歳が12人。初等教育の平均人数は4~7歳が20人。8~12歳が27.7人。
●ノルウェー
上限は定められてらおず、地域レベルで決められる。
●ポルトガル
保育所は最大人数は10~12人。幼稚園は25人。
●スウェーデン
統計による最大のクラス集団は17人。認可学校外施設の最大のクラス集団は30人(教員と補助教員)
●イギリス
報告なし。
●アメリカ
国立幼児教育研究所は3歳児、4歳児クラスのベンチマークとして最大10人を設定。37州がこの基準を達成。


p151には、「OECD調査の経験によれば、3~6歳児についての職員1人当たりの子どもの数は、北欧諸国の7人から、フランス、アイルランド、韓国、メキシコの25人まである」 ・・・日本はOECD調査の20か国よりも低い基準なのです。

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