美しさに心惹かれるということ2014/07/09

保育者をしていたときに、赤ちゃんが美しい色や形に惹かれる姿を不思議に感じていました。
1歳の子どもが、道端にしゃがみこんでいるので、何をしているのだろうと横にしゃがんでみたら、小さな黄色い花を見つめていました。3歳の子どもがじっと階段に座っているので横に並んで座ってみたら、「お月様がきれい」と、月をながめていました。生物には美しさに対する感性が埋め込まれているのだろうか。美しさに心惹かれるって、どういうことなのだろう、とずっと不思議でした。

環境心理学では、人が美しいと感じるものには、調和と、新奇性の量が関係していると考えられているようです。
不調和なもの、新奇性が高すぎるものは、人は汚いと感じやすく、ごくわずかに新奇性があるときに、多くの人が「美しい」と感じやすいそうです。自然は互いに調和し合っていますが、人工的な環境では不調和な環境を作りやすいともありました。

この美しさを保育に活用したのが、マリア・モンテッソーリです。モンテッソーリは貧民教育に尽力した人としても知られています。モンテッソーリは、家庭で十分な教育を受けられない子どもたちを集め、環境を通して生活に必要なスキルや認識の学習を促しました。モンテッソーリ教具は、美しくシンプルであることが、特徴の一つです。
汚くそっけない石鹸ではなく、「私で手を洗ってみない?」と子どもたちを誘い、思わず手を洗ってみたくなるような石鹸。ほうきも子どもが思わず使ってみたくなるようなほうき。道具が示すアフォーダンスのなかに「美しさ」という要素を見出し、子どもが美しさに惹かれることを活用した人でした。

先日お伺いした園でも、美しさを活用した実践を発見しました。
埼玉県松伏町にある幼保連携型認定こども園 こどものもり まつぶし幼稚園・こどもの森保育園
見学者も多く、その実践が、全国の園へと影響を与えていらっしゃる園です。

園庭は子どもたちが自然と出会えるように作られています。(写真が下手で申し訳ないです)
多様性の美、調和の美が、各所から感じられます。


     
子どもたちが調理をする空間です。
どの空間も、「うわあ」と思わず声を上げてしまいます。子どもたちへの思いが随所にあふれています。



この廊下に置かれた園庭用の玩具を見つけたときには「これ、これがポイントですね」と思わず叫んでしまいました。

園庭用の玩具といえば、不調和な多色づかいのお砂場セットだったり、カニやクマの抜き型だったりと、遊びが広がりにくい玩具が多かったりします。こちらの園では、園長先生、副園長先生を中心に、インテリアや雑貨のお店で、子どもたちの遊びの素材や道具を選んでいらっしゃるそうです。


綺麗な足つきワイングラス! 「容器や道具が違うと、遊びが変わるんです」と説明して下さった若盛圭恵先生。
(先生方の「笑顔」も、「美」であり、「調和」ですね)。


美しいと感じる感性が、数学や科学の発展を支えたと言われます。
また、物を含めた環境が子どもの行動を規定し、子どもの習慣をつくります。
子どもたちを取り巻く環境は、その子どもの原風景となり、無意識の部分に生涯残ることでしょう。
たとえ狭くて古い保育室であっても、保育者の思いがあれば、あたたかさや、調和や、美を配置することは、きっとできるはずです。

一つひとつの物選びが大切なことを、改めて感じさせていただきました。
若盛正城先生、清美先生、圭恵先生、そして園の先生方、ありがとうございました。


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