自然素材のみで遊ぶ乳児保育園 ― 2014/09/12
済生会松山乳児保育園へ行ってきました。一度自分の目で確かめてみたいと思ったのは、「げんき」(エイデル研究所)の長谷光城氏の連載で、その実践内容を読んだことがきっかけでした。長谷氏は芸術家であり児童の絵の専門家です。この園では、長谷氏から指導を受けて、園庭から人工的な遊具をすべてなくし、自然素材だけの遊びをしているとありました。私自身、斉藤公子氏のさくらんぼ保育を学んでいたので、子どもが水、砂、土で遊ぶことは、なじみ深い実践です。しかし、最近保育者の体力が落ちてきていることや、けがや汚れに対する保護者の許容範囲が狭くなっていることから、どのような工夫をされているのかに関心がありました。

済生会松山乳児保育園の園庭は、0、1、2歳児だけの園庭です。異なる種類の砂、土を園庭に入れ、人工物を使わずに、複数の砂場・泥場を作っていました。スコップやバケツなどの道具は一切使わせず、手と体を使って素材に働きかけることを大切にしているそうです。「2歳児が水や土をどうやって運ぶのか?」・・・それは、想像してみてください。
自然物、とくに砂と土は、常に手入れと補充が必要な素材です。園庭から砂が流れ出ないようにしっかりとした塀がありました。しかし、どうしても非常口からは流れ出てしまうそうです。土や砂の補充は、その性質を指定して購入されているそうです。園庭で十分に遊べるように、広葉樹を植え、タープを使って夏の日差しをカバーする工夫も行われていました。
朝の受け入れは室内で、おやつは外で食べるなどの工夫をして、午前中に何度も着替えなくてよい生活の流れになっていました。1歳児までは、園の共用パンツを使い、園で洗濯をします。2歳児は水着で遊びます。汚れた服は、園で洗濯機にかけてからお返ししているそうです。見学して園の方針を理解してから入園するので、保護者とのトラブルも起きにくいそうです。なるほどと納得することが多くありました。
園庭で遊ぶ子どもたちを見て新しい発見がありました。「泥は抵抗があり重い」ということです。

自然物は、複雑で多様性が高く、子どもたちの行為に対する応答性が高く、見立てやすく、子どもたちが遊びを作りだせる非常に優れた素材です。それに加えて、抵抗があり重いものは、子どもが力いっぱいの体験をしやすく、得られる効力感が大きいと考えられます。
1、2歳の粗大な運動が育つ時期には、重くて抵抗感があるものが大切ですが、室内の遊びの素材で、重くて安全な素材を保育カタログでは見つけることができません。そのため牛乳パックを重く詰め込んだ積木や、豆袋や、あずきで重くしたお手玉など、重さを確保することを苦心して手作りをしていました。またリズム遊び等で力いっぱい体験を入れていましたが、泥の場合、素材自体が重いので、普通にお団子を作っていても運動量が高そうです。
遊びの素材には、①水・砂・土・草・木などの自然物、②新聞紙、ダンボールなど自然物から作られた素材、③遊びを目的として作られた見立てやすい素材玩具があります。それらの素材をどのような割合で活用するかは、その地域と気候、園庭・保育室やホールなどの広さ、人的配置など、園の条件によって選び方が異なります。
大事なことは、自然物であれ、人工物であれ、子どもの発達と保育の目標・方法原理という根拠に基づいて、現実的制約に合わせて選択することだと思いました。
済生会松山乳児保育園の先生方、勉強させていただきました。ありがとうございました。