這う、立つ、歩く2015/07/07

0歳児の保育や、0歳児の子育て支援では、人への信頼、注意を向ける力、腰を中心とした動き、この三つが要。

これらは、すべての発達の基礎となりますが、ふつーに子育てをしているとなかなか獲得が難しい。テレビベビーシッターさんや便利な育児用品を使いすぎると、人間よりもテレビ好き、人の声や動かないものには注意を向けることが難しい、腰が安定しないまま歩き始めてしまったなど、入園後に乳児期の発達の取戻しが課題となる場合も少なくありません。

今回はこのうち、脳の成熟と腰を中心とした動きの成果として現れる「ハイハイ」について書きたいと思います。
発達の道筋を細かく理解していると、子どもの姿もよく見えるし、援助もしやすいですね。

高山静子「ひだまり通信」チャイルド本社、2009より。イラストレーターさんが絵を描いて下さいました。
ハイハイから立ち上がるまで


私が書いた子育て支援の元の通信はこちら。このイラストはかなり頑張って書いた方です。
ハイハイから立ち上がるまで2


赤ちゃんは、べったりとしたうつ伏せの姿勢から、重心が胸から腰へと下がり、後ろずさり⇒回転⇒ずりばいで前進⇒四つ這い⇒高這い⇒床からの立ち上がりへと発達します。そのため、うつぶせで目の前のおもちゃに手を伸ばす段階の赤ちゃんには、おもちゃを前に置くよりも体の斜め横に置く方が、発達の足場かけになります。

広い場所で十分にハイハイできるようにすることや、つかまり立ちの段階の子どもには広い場所で床からの立ち上がりが経験できるようにすることは、子育て支援センターや保育所のような広いところでは考慮しやすいですね。手のひらが十分に開いて、親指を床をけるようにして這う頃には、スピードも増し、這うたびにバタバタと大きな音がします。床からの立ち上がりを何度も繰り返し、自分でバランスをとって立つことを獲得した子どもは、立った姿勢からバタンと倒れてしまうことがありません。

(足の親指が立ち始めた子ども。ここから高這いに入ります)

まだ体の準備が整っていない段階で歩く練習をさせられると歩行が安定するまでに長い時間がかかります。ずりばいから、あるいは四つ這いでも、手のひらが丸まっていて足の親指も使っていない段階で、大人に歩く練習をさせられて歩いてしまう場合、なかなか安定した歩行にならないので、2歳をすぎてもすぐに疲れて抱っこを求めることがあります。転んだときに手が出ない場合は、顔のけがをする可能性も高くなります。

1歳をすぎて入園してきた子どもさんは、パラシュート反射で頭を守るように手が出るか、遊びのなかで確かめてみましょう。手が出ない場合には、ハイハイ遊びや、斜面や階段を登る機会を増やして、手の開きや足の親指のけりを促すことができます。1歳児クラスだから1,2歳児の環境、と決めてしまわず目の前の子どもをよ~く見ると、0歳児の環境が必要な場合があります。腰が安定していない子どもがいる場合には、1歳児クラスでも斜面板や階段、トンネル、ごろごろと転げ回ることができる広いマットなど、腰を中心とした動きが経験できるようにしてみましょう

運動の根幹は様々な運動能力の基礎を培う0歳児の保育では、
〇新生児期~4か月の間に、仰向けで手足をバタバタと動かして遊ぶこと。
〇2か月~5か月の間に、機嫌のよい時間にうつぶせで遊ぶこと。
〇保育者が発達の先取りをして、赤ちゃんをお座りさせたり、立たせたり、歩く練習をさせないこと。
〇床からの立ち上がりが経験できるようにすること。
これらを意識してみましょう。

ハイハイのほうが歩行よりも難しい協調運動のため、脳の機能が影響します。低体重や早期産の場合には発達はゆっくりになるので、そこを加味して考えることも専門家としては大事なポイントですね。
また、先生方はよく聞くお話だと思いますが、乳児期の夜更かしや昼間外へ出ない(光を浴びない)生活の場合にも、協調運動の発達に影響が出ると言われています。(詳しくは早起きサイトをご覧ください)

コメント

_ 高山静子 ― 2015/07/18 08:34

コメントをありがとうございます。お尋ねの私が講師をしている講座ですが、日本保育協会さんのような各保育団体の全国研修会などで講師を担当させていただくこともあります。また大学のホームページをご覧いただくと単位履修生や聴講生の申し込みについては調べることができます。保育士科目は人数制限があり、後期の「乳児の生活と遊び」選択科目は可能です。

実践研究会はこちらの大学では、まだ現場の先生方とのつながりが少ないため開催していません。以前は行っていたのですが。

日本保育協会さんの保育e-leraningは無料で私を含め多くの先生方の講座を動画で見ることができます。

私以上に、子どもたちのために人生を使った素晴らしい方たちが多くいらっしゃいます。その方々の知見を学ぶためには、本を読むことが一番だと思います。
ブログ⇒左側のカテゴリ⇒本の紹介・保育⇒一番古い記事(2010年4月)「専門性を高めたい先生へお薦めの50冊」をぜひご参考になさってください。

このブログの記事を過去の記事を全部読むだけでも、私の講義、数十回分に相当すると思いますよ~。

ご参考まで。

_ (未記入) ― 2016/04/07 07:29

Rさん、コメントをありがとうございます。
>先月まで在籍していた大学院で、四つ這いの研究を行っていました。日本では、はいはいが大事だといわれていても、お座りやひとり歩きの獲得が重要視され、保護者の中には、それらが早くできるほうがよいと思われている傾向にあると感じています。
>先生が書かれている記事のように、乳児期の身体発達の観察ポイントが母子手帳などでも記載されてほしいと願っているところです。

私もまったくRさんと同感です。古い身体発達の図がどこでも掲示されていますが、座らせたり立たせたりするのは、あの図の影響が大きいと思います。日本は、靴を脱ぎ、ハイハイできる環境が十分にあるので、もったいないことですね。「ベイビーズ」という映画はご覧になりましたか?運動経験とハイハイに着目してみると面白いと思います。

全国の子育て支援の場が、赤ちゃん連れの親子が行きやすい場となり、そこに乳児の発達がよくわかる支援者がいることで、育ちと親子関係を支えることができると思います。子育て支援の場と人が重要です。

また、どこかでお会いする機会がありましたらぜひ声をかけて下さい。

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