こども指針は幼児教育の質を低下させる!?2010/10/14

先生方のご好意により、子ども・子育て新システムの勉強会に参加させていただきました。講師は、「遊育」編集長の吉田正幸氏。

とてもわかりやすくユーモアを交えたご説明をいただきましたが、新システムの内容になると、どうしても眉間にしわが寄ってしまいます。吉田さん、怖い顔で話を聞いてごめんなさい!

一番気になるのが「こども指針」です。
新システムでは、どうも、保育所と幼稚園を、家庭の代替機能を果たす場と考えているのではないか?と思う節がありますが、それが最も現れているのが、「こども指針」の策定です。

「小学校教育要領」と「家庭の子育ての手引き」を一緒にしようなんて、普通は発想しないですよね!?


家庭養育と、保育所・幼稚園の保育を一つの指針にすれば、幼児教育の質は下がり、専門職としての地域・家庭への支援の役割を盛り込むことが困難です。

保育所・幼稚園に共通する「保育指針」を検討するならば、家庭は含めるべきではありません。家庭の保護者と、教育施設職員の役割は異なります。一つの指針の作成は、「母親・父親の先生化」と「保育者の素人化」を促し、幼児教育の質の低下をもたらすことでしょう。またせっかく保育所が積み上げてきた保護者支援と地域支援の専門性を捨てることになります。それは専門職としての誇りを奪うものともなるでしょう。

平成20年に改訂された「保育所保育指針」は、保育の専門性が全面に押し出されました。ここまで60年以上かけて積み上げた専門性を、「こども指針」は戦後に戻すことになるのでしょうか。

下図(高山作成)のように、「保育所保育指針」には、「幼稚園教育要領」が、ほぼすべて含まれています。

保育士は、幼稚園の3歳以上児の教育に加えて、養護・乳児保育・保護者支援・地域の子育て家庭支援の機能を果たしています。 こども指針の総論を、機能をすべてふまえた内容(B)として書くのか、家庭・保育所・幼稚園に共通する内容(A)で書くのか、どちらにしてもこの3つを並列させて総論を書くことは、とても難しいと思います。

吉田さんは、子どもを取り巻く現状を、「育成環境の劣化」と表現しました。その通りです。
子どもが育つ環境として現状の正確な認識を促す「こども指針」、企業の責任、行政の責任、子どもにかかわるすべての機関と、すべての大人の責任を明記する「こども指針」が今の日本には必要です。「各論」には、家庭・地域・幼稚園・保育所に加えて小中学校、児童福祉施設、その他のこどもに関わる機関が含まれる「こども指針」の策定ならば大賛成なのですが・・・。

コメント

トラックバック