人形の表情2017/01/05

あけましておめでとうございます。


あるクラスで、「動物の人形で戦いをするんです」と、聞きました。
その動物を見ると、「ガオーッ」、「ギャオーッ」と、闘う顔をしていました。

子どもが、人形にうれしい、さびしい、悲しい
といった感情を「投影」するには、
人形は中立的な表情がよいと言われます。

大隅さんありがとうございます
たとえば、こんな感じ。


しかし、先の事例で気づいたのは、
ネガティブな感情を吐き出せない子どもには、
怒ったり泣いたりしている顔の人形やペープサートがあると、
セリフとして怒ったり泣いたり、感情の「吐き出し」ができるかもしれないということでした。

子どもは、遊びを通して受け入れられない現実を消化します。
人形に怒鳴ったりつねったり無理やり食べさせたりしている子ども、いますよね。
保育では、1歳児クラス以上には「抱き人形」を置きますが、
可愛くニコニコ笑っている人形よりも、様々な感情を映しやすい人形を選びます。


また木製やプラスチック製で、積木と組み合わせて使ったり
机上でお話をつくって遊ぶ「小さな人形」も、各園で使われています。

子どもたちの会話を引き出し、
ファンタジーの世界を広げるときには、
扱いやすい大きさと形であることも大切です。

人形によって、イメージがふくらむ人形と、そうでない人形があります。
お話がふくらむ人形の代表、
オストハイマー社の人形が、保育実習室に年末届きました。
(今年度は、シュタイナー思想に基づく玩具を収集しています)。

授業で学生に紹介した後、教室に残って撮影。

「あれ、なすちゃん、どこ行くの?」の図。
右端の子は、学生たちからすっかり、「なすちゃん」と呼ばれていました。
花の妖精のはずなのですが・・・。


思わず、ストーリーをつくってしまいます。


学生が並べた人形たち。心の純粋さが構図に現れますね。

今年もよろしくお願いいたします。

片付けに困っています2016/12/13

初めて環境を通した保育へ変えたとき、
最も保育者が悩むのは、「片付け」のようです。

そこで、初めて子どもの手の届くところに玩具を置く園に向けて
日野の森保育園さんの玩具棚をご紹介したいと思います。

「保育とおもちゃ」「保育と絵本」の著者である瀧薫先生が、園長をお務めです。



このように、かごを使って棚を区切るようにすると、
0、1、2歳児クラスの大人は、片付けがしやすくなりますね。

積木や人形の数を子どもの様子を見て調整する
具材の大きさや数を調整することで
大人の大変さも変わるでしょう。

子どもは、最初は秩序を壊すことが仕事ですから、
その時期の大人は、適度な秩序感を環境につくることが仕事になります。
(決して砂漠や体育館のような完璧な秩序にすることではありません)

片付けを面倒がらない心の癖と、
秩序に対する感性は、幼児期までに着実に育みたいものです。

また、片付けで子どもは
数や大きさ・高さ・長さなどの数量感覚や
物の種類や名前を学習します。
分ける・並べる・順序づけるといった思考力の基礎も
片付けで、日々培うことができます。

片付けは、幼児にとって学習の時間。
「お片付け~」と号令をかけて、
ポイポイとごみのように箱に投げ込んで
あっという間に片づけてしまうのではもったいない。

効率的だけど、学習にならないゴミ箱型お片付け。
こんな状態は、子どもに「物は大切にしなくていいですよ」と
毎日メッセージを送っている感じがしますね。


ちなみに、日野の森保育園さんでは
345歳クラスになると、こんなに細やかに片づけていました。

マルチ能力理論と環境の構成2016/11/17

保育者のもつ専門性を理論化するのが私の研究テーマ。
環境構成に続いて、対人援助の原則の理論化を進めています。
今は研究成果をモデル研修によって保育者が活用しやすい理論へと
洗練しているところです。

研究は、子ども・保護者・実習生や同僚との関わりがテーマなのですが、
なぜか環境構成についての意見が集中するのが、このスライド。

参考: トーマス・アームストロング、マルチ能力が育む子どもの生きる力、小学館、2002、ハワード・ガードナー、多元的知能の世界、日本文教出版、2003

自分とは違う他者を援助するのが保育者の役割。
子どもたちは、それぞれが保育者とは違う人生を生きていく。
人は、それぞれが異なる能力をもち、異なる強みをもっている。


それをわかりやすく説明するために、
子どもって興味が違いますよね、と図に例を一つ二つ書いています。
すると最後のアンケートで、
「多様な能力に合った多様な環境を準備したい」という
意見が多く見られます。

そこで、授業でマルチ能力理論図を使った環境構成の演習をしてみよう
と思いつきました。
学生時代に、発達に合わせた環境構成に加えて
興味関心に合わせた環境構成を体験しておくことで
教材研究の幅が広がるかもしれません。

保育実習室にある玩具や遊具、素材、
そしてカタログから
強みを伸ばす環境を考える演習がいいかも。


ああ、でもどの授業内容を削ることができるか、そこが問題です。
時間には限りがあり
何かを入れると何かを削らないといけない。

保育と同じですね。


玩具と関わりの質2016/03/01

フルスピードで自転車操業を続けていたら、転んで骨折しちゃいました。さすがに反省中です。
掛札逸美先生のブログで、電気仕掛けのおもちゃ(光や音楽や言葉が出る)で遊ぶ時は、従来のおもちゃ(木のパズルやブロック)や本で遊ぶ時に比べて、親子の会話の量と質が落ちるという研究が紹介されていました。

現場にいらっしゃる先生方は、遊びの素材や道具によって関わりの質と量が異なることを体験的にご存知だと思います。これらを言語化して共有化できるとよいですね。

遊びの素材と道具(自然物、素材、廃材、玩具等)選びによって変わると考えられるもの
・遊びへの集中度
・遊びの継続性とひろがり
・友だちとの関わりの質と量
・大人(保護者・保育者)とのやりとりの質と量
・トラブルの発生頻度、けがの重症度
・維持管理にかける時間、コスト
・空間全体の雰囲気
・経験と学習
・感性
思いつくものを書き出してみると、けっこうありますね。

玩具には、個人で活動に没頭しやすいものと、友達との関わりが生じやすいものがあります。
「個人で没頭しすぎるので使う場と時間に悩む」と、先生方に伺うのがラキュー。逆に没頭しやすいタイプの子どもが好きな玩具とも言えます。昔ならば昆虫採集に、はまるタイプの子どもかも。

光保育園にて。

ある先生から、夕方の早い時間の異年齢保育では、友達との関わりが生じやすいものを選び、遅い時間は個人で遊ぶ玩具を準備していると聞きました。
先生方の工夫には、いつも驚かされるばかりです。

机上ゲームあれこれ2015/10/27


トランプ、カルタやすごろく、メモリーゲーム、しりとりカード、バランスゲームなど机上ゲームあれこれ。

先日、このブログでお話づくりのサイコロを紹介したところ、さっそく購入して大学のゼミで使ったとコメントをいただきました。
私たちも、研究会の終了後にやってみました。大学教員ばかりだと大盛り上がりになりましたが、緊張を感じる学生もいるかもしれません。そこで補足として、緊張感なく盛り上がることができる机上ゲームも紹介します。

保育内容の環境領域を教授する「保育内容演習環境」では、机上ゲームをグループで遊び、「そのゲームで子どもが体験すること」を考える授業を行っています。(指針や要領の当てはまる内容をすべて抜き出させる先生もいらっしゃるようです)。大騒ぎになりますので、窓は完全に閉めて授業を行います。

とくに学生が盛り上がるのが、「ハリガリ」です。あらかじめ同じ果物が出たとき、同じ数字が出たときなどベルを鳴らすルールを決めておきます。そして一人ひとりが持ち札をめくっていって同じものが出たら「チン!」とベルを鳴らします。たった4人でも大騒ぎになります。

保育園では、年下の子どもの方にベルを近づけて置く、優しい年長さんを見ました。また自分の方に近づけて置く、賢い年長さんも見ました。(笑)

幼児の真剣勝負。(龍雲寺保育園さんにて)。幼児の記憶力とスピードには大人もタジタジです。

以前は、雨の日や朝夕にテレビを見せている園がありましたが、最近は本当に減りましたね。それは、この机上ゲームのような教材研究が進んできたためだと思います。保育環境に対する意識が変わり、室内でも意図的な環境が整えられるようになってきました。

次号の小学館「新幼児と保育」の連載テーマは、「数量感覚を育む環境」ですが、そこでふれることができなかった内容が、上記の机上ゲームです。すごろくやカードゲームには、比べる、分ける、順序づける、数える、対応づける、順番を待つなど、数量の体験が詰まっています。悔しい、嬉しいなどの感情体験も豊かです。
外での全身を使った遊びによる連続量の理解や、室内の机上ゲームを使った分離量の理解、抽象的な具体物を使った遊びによる連続量・分離量の理解など、幼児教育として意図的に教材や活動を活用したいものです。


また、こういったゲームを子どもに貸し出して、家族のコミュニケーションづくりに一役買っている園もあります。子どもが鼻をふくらませながらゲームのルールをお父さんやお母さんに説明している姿が目に浮かびますね。

貸出用のゲームと絵本。浜松市の愛恵保育園さんにて。

一人遊び・並行遊びの保障2015/10/13

最近、1歳児、2歳児クラスの人数が増え、先生方がとても苦心されているお話を伺います。
「えー、2歳児が一クラス30名ですか!」と、驚いていたのは数年前のこと、今は1歳児が35名以上という話も聞くようになりました。人間は一度に一人、多くても二人ぐらいしか子どもを産みませんから、同じ年齢の子どもが、10人以上で生活する空間は、生物としては特異な空間です。

そのため、今担当制や、グループ保育などで、子どもの生活を少しでも安定できるものにしようとする試みが広がっています。先日乳児の全国研修会で、担当制を行っている保育者に手を挙げていただいたところ、会場の四分の一ぐらいの手が上がりました。全国研修に参加する先生方は熱心とはいえ、増えましたね。

クラス規模が大きいにも関わらず、個人差がとても大きい1、2歳で、4、5歳児のように一斉に食事をし、一斉にトイレに行かせていると、子どもを長く待たせる保育、無理に急がせる保育になってしまいます。
また、一人遊び、並行遊びの発達段階の子どもたちに対して、一斉に同じ玩具で遊ばせる保育や、一斉に同じ活動をさせる保育を行うと、これも子どもに無理をさせることになります。

心優しい先生は、発達に合わない活動をさせることや、子どもを急がせることや待たせることを、とてもつらく感じます。またクラスの人数が多いと、子ども同士のトラブルも増えますので、保育者の不全感(うまくできない感)は高まり、いい先生が辞めてしまう原因にもなりかねません。

そこで今回は、1歳児の一人遊びの保障、2歳児の並行遊びを保障する環の工夫をご紹介します。

まず、012歳の親子を対象とする子育てひろばの事例です。

最初は体育館のような空間でした。元気な子どもは走り回り、おとなしい子どもは遊べなくなります。
ここにブロックやままごとを出すと、子どもが集まりトラブルが起きやすくなります。玩具が室内に散乱する空間です。


数か月後です。テーブルを置き、じゅうたんを置くだけでも、空間がいくつかに分かれました。
ブロックなども、じゅうたんの上に置くだけで、部屋中に散乱することが減ります。


数年後です。色の異なるじゅうたん、たたみ、テーブルや棚によって空間を複数に分けています。
保護者が利用するため、一つひとつの空間は、保育室よりも広めです。
牛乳パックの枠、段ボールの仕切り、大型積木など、空間を仕切るために使えるものが置かれています。


次は、空間の混み合いを防ぎ、一人遊びや平行遊びを保障するヒントです。
パネルじゅうたんは、つい、市松模様に敷きたくなりますが・・・。


色を分けて敷くと、空間を分けたり、遊びのイメージを助けることができます。(保育実習室での実験)


牛乳パックの手作りの仕切りで、空間を分ける園もあります。(裾野市公立保育園)


段ボールの枠は、高さや長さを変えてつくることで、一人遊びのになったり、一人遊びや平行遊びを保障する敷物になったりします。 (三鷹駅前保育園)


段ボールや枠も、パーソナルスペースを守ることを助けます。狭い空間を設計に組み込む園も多いですね。(まちの保育園六本木)



一人遊びを保障できる小さなじゅうたんもありますが、パネルじゅうたんも広さを小さくすることで、一人遊びや平行遊びの保障ができます。(愛恵保育園)

ご参考まで。

お話づくりをするサイコロ2015/10/01

秋ですね。




9月にこどものとも社の社員研修会で、一緒に最新玩具の勉強をさせていただきました。
そのなかで特にこれは学生に紹介したいと思ったものを注文していたのですが、昨日一つ届きました。

ローリーズストーリーキューブス。お話づくりのサイコロです。大きなサイズを一つと小サイズを二つ注文。


子どもがグループで遊ぶゲームとしては、新しい内容です。夕方や午睡時の室内遊びにもよさそうですね。
このゲームを見たときに、内気でおとなしいれども想像力豊かな子どもが、輝いている場面が浮かびました。
硬くなってしまった私たちの想像力開発にもよさそう(笑)。

標準サイズは、こんなに小さいのです。万が一飲み込んでしまっても後で出てくる大きさです。
これは、抽象度がとても高いタイプです。順番に転がして一人ずつお話を作っていったり、一人でお話を作ったり。おでかけのときに持っていくのにもいいですね。


ストーリーキューブにはいくつか種類がありますが、これはアクションのキューブ。動きを抽象化しています。
言葉の療育に使う動きのカードを裏返しても、同じゲームができそうです。
子ども用パネルシアターでも、同じルールのゲームを作ることができるかもしれませんね。


どんなお話をつくりましょうか。



手を使いたい子どもたちのために2015/07/23

このブログ、環境構成だけでも40近い記事になってしまいました。。。保育環境を変えてみたいと考えている先生には、まずは左のカテゴリ一覧から「環境構成」の記事を読み、次に「本の紹介・保育」の記事から、参考資料を読むことをお薦めしています。(古い記事ほど基本図書を紹介しています)。子どもの発達に合った遊びの素材や道具を、少しずつ揃えることから始めてみてはどうでしょうか。

物を意図的に操作する遊びは、8か月頃からはじまります。
1歳頃には立ち上がり、言葉を話し、次第に道具を使うようになります。子どもの発達の道筋は、人類の歴史を見ているかのよう。

手が著しく発達する時期のため起きている間中、物を触りたいという発達の欲求に満ちている1歳頃の子どもがいるクラスでは、室内の物的環境の充実が欠かせません。しかし、子どもの発達にピッタリと合った市販の玩具は、とても高価です。

先日お伺いした「未来のひろば」さんでは、先生方が手作りした玩具(教具)を、数多く見せていただきました。

これは0歳児クラスで撮った写真。1歳児クラスは数や高さを変えていました。


ファスナーを開く、閉じることを教材化した手作りの玩具(教具)。繰り返しできるようにしているところが市販品よりもいいですね。


2歳児のクラスでは、髪の毛をゴムで結ぶ、フェルトで作った洋服を洗濯バサミで干す教材がありました。
3歳以上のクラスは、三つ編みができるように髪の毛は三色に分かれていました。


こちらはスナップ止め。一人で繰り返しできる大きさで作られています。タッパやトレイを使い、棚などにも写真を貼ることで、自分で選び、机に座り、終わって片づけるまでの行為を、環境が助けています。1,2歳児の場合には、このように構造化した環境が適していますね。


ボタンをはめる、はずすと、バックルをはめる、はずす。


0歳児クラスで見つけたスイッチ。他にも数多くの手作りがありました。


自分の思い通りにコントロールすることができる器用な指先の獲得は、先生方が準備した物的環境に支えられています。「未来のひろば」の先生方突然おじゃまして申し訳ありませんでした。ありがとうございました。

生活を教材化した操作遊びの手作り玩具(教具)は、以下の本も参考にすることができます。
相良敦子「お母さんの敏感期」文芸春秋、2007(文庫版)
松浦公紀「0歳~3歳のちから」学習研究社、2005 

トーマ先生の遊具が市販品に2015/07/15

保育の研究大会会場で、おもしろい商品を見つけ、その場で写真撮影と掲載の許可をいただきました。


作っているのは、金沢市にあるMOKUMOKU工房さんです。
あの東間先生が本にされた牛乳パックなどでつくった大型遊具を、製品として販売されているそうです。

牛乳パックの積み木は、全国どこの園でもよく見かけます。
保育カタログに掲載されている玩具や市販の玩具には、大きさや形状、素材や色、重さなどがなかなか子どもに合うものがないため、保育者が子どもに合った遊びの素材を手作りすることがあります。

1,2歳児は粗大な運動を好む時期ですから、子どもが抱えることができる大きさで重量感のある積み木がほしいものです。しかし木製の大型積木では危険ですし、スチロール製の積み木は軽量すぎ、かつ形と色が複雑すぎます。そのため保育者が牛乳パックで積み木を作らなくてはならないのです。私もこれまで何十個作ったことか。。。


「パックパーツながいみじかい」は、牛乳パックで作った大きさと同じ。重さも、長いパーツと短いパーツが10個ずつセットになっているそうです。これだと丈夫で長持ちしそう。重量感もしっかりありました。


園庭用のシンプルなパーツもあります。
シンプルな自然素材は子ども自身が遊びを広げることができます。木ですからメンテナンスが欠かせませんね。


都内の某公立保育園。園庭に木材やお風呂マットやパネルじゅうたん、ござ、ビールケース等、子どもが遊びを広げるための素材を準備しています。私は、ビールケースにはハラハラドキドキするだろうなあ・・・。


市販の玩具には、子どもを遊んでくれる玩具と、子どもが遊びを作りだす素材的な玩具があります。
子どもを引きつけ楽しませてくれる「おもちゃ」の購入には、専門知識は不要です。
幼児教育の専門職として、子ども自身が想像し、試行錯誤し、工夫して遊びをつくりだすことができる遊びの素材を選べるようになりたいものです。

何も飾らないのはだめですか?2015/06/10

ブログへのコメントで多い質問に、「壁に、何を飾ればいいでしょうか?」があります。
「何も飾らなくてもいいと思います」とお答えしては、申し訳ないでしょうか。

保育者の残業や持ち帰り仕事のNo1と言われる「壁面飾りの製作」。
年度末や、毎月、書類が最も忙しい時期に、色画用紙で飾りをつくったり、季節の飾りを手作りするために残業したり…。
4、5歳の子どもたちと製作するものを話し合って時間をかけて製作して展示している園もあると思います。また、創造的で芸術的な季節飾りを作ることが大好きで、それが楽しみという保育者が、その力を発揮することは素晴らしいことだと思います。でも、壁面のために日本中の保育者が(何をつくろう)と頭を悩ませ、保育雑誌の真似をしたり、壁に何かを飾らないといけないから、そのための製作を考えるのは、もったいない気がします。

計画も記録も書く書類の量が増えました。支援が必要な子どもも対応が必要な保護者も増えています。保護者へ保育内容を伝達するために時間をかけている園もあるでしょう。顔から転ぶ子どもも、3歳でオムツをつけている子どもも増えています。人的配置は昔のままで保育者の仕事量は増える一方です。壁面の飾りはなしにして、代わりに本物の季節飾りや草花を置くだけではダメでしょうか。


自然物をそのまま飾りにしている園(ときわ保育園)。野菜を保育室に置いている園もありますね。


ねこじゃらしで子どもたちが作ったうさぎ。(こまつ保育園)

以前、新卒の先生が学校で学んだ通りにかわいい壁面を作って貼っていると、指導担当の幼稚園の先生から「何のためにこれを貼っているのか?」と説明を求められ、時間をかけて作った壁面をはがしたという話を聞きました。そのクラスでは発達障がいの子どもがいて、ほかにも視覚刺激に弱く集中できない子どもが多いのに、原色を壁一面に貼ることの問題点を指摘されたそうです。
親御さんから、「いつも近所の支援センターに相談したくて行くのですが、先生たちはいつも事務室で色画用紙を切っています。あの飾りってどうしても作らないといけないものなのですか」と真顔で聞かれ、答えに困ったこともありました。
子どもの遊びや生活に壁面飾りが必要不可欠で、壁面飾りがあると子どもたちの発想が豊かになるとか、飾りを真似して子どもが作るとか、何か根拠があればいいと思います。でも、子どもの遊びや生活にそれほど影響がないとすれば、無理につくる必要はないのかもしれません。

4,5歳児で協同的で継続的な活動をしている園では、保育者の壁面製作を見ることがほとんどありません。4,5歳児クラスの子どもたちは、今の関心事で何週間も遊びます。保育空間は子どもたちのイメージで、海の中や家になるので、壁には、その遊びに関連するものが貼られています。そういう園では、子どもたちが何かつくりたいと思った時に作ることができるように、子どもたちの手の届くところに素材が道具が準備され、子どもたちが作ったものが保育室に置かれています。


子どもの作品が飾られた造形表現室(ながかみ保育園)

壁に何も貼らないと、最初はさびしいと感じるかもしれません。でも保育室は子どもがいないときにはさびしいぐらいの方が、子どもがイメージを広げやすい空間です。子どもたちがその部屋に加わり、動き回り、遊びを広げることでイキイキする、子どもが加わって空間は完成すると考えてみてはどうでしょうか。

保育者の貴重な時間は、子どもたちのために使いたいものです。