一時預かりの玩具2013/09/29

「保育室には、どの人形を置きますか? その根拠は何ですか?」
これは環境構成の研修でよく行うグループワーク。正解があるわけではなく原則を理解するために行います。

授業で使用する人形の写真を印刷したカード

授業であれば、各グループにカードを配布して考えますが、人数の多い研修の場合にはパワーポイントで写真を写しグループで話し合う時間をとっています。300人でもペアワークやグループワークができるのは、研修の対象がコミュニケーションの得意な保育者だから。全てのグループに発表してもらうのは無理なため、数グループにのみ発表していただきます。提示された人形を実際に保育で使っている保育者も、改めて「なぜその人形なのか?」と問われることで、実際に子どもがその人形でどうやって遊ぶかを説明しながら、選択の根拠を言葉にし、人形の特質を再認識することもあるようです。

その際、グループで意見が分かれるのが、「ア○パンマン」の扱いです。ア○パンマンは、「大学で教えているのですか?」と、保護者に尋ねられることがあるほど、保育現場に浸透しているキャラクターです。
テレビで放映されるキャラクターは、キャラクターの固定による見立てにくさや感情移入の難しさ、世話遊びへの発展性の低さなど、保育で使用する根拠は見つかりにくいのですが、キャラクター人形があるといい場として意見が出るのが、「一時保育室」と「個別面談相談室」です。

とくにその日だけの一時預かりの場合、不慣れな場で親と離れて不安な気持ちの子どもを、どうやって安心させることができるかは最大の課題です。子どもは、不安な状態のときには、お人形の世話をすることや積木で創造性を発揮することができません。情緒が不安定なときには、自分で遊びをつくりだすことは難しいのです。
そんなとき、場になじむための装置として、家庭でよく遊んでいる玩具や、子どもに遊びを指示しているタイプの玩具を置く方法があります。
遊びを指示するタイプの玩具の典型はパズルです。情緒が不安定な子どもや、想像力が未熟な段階の子どもでも、うまくできたという感覚が味わえます。モンテッソーリ教具には、操作を指示するタイプの教具が数多くあります。相良敦子さんの著作には、操作を中心とした魅力的な手作り教具が紹介されています。

3歳児には簡単なんだけれども、1歳児には難しいパズル

赤いぽっちが、「つまみなさい」と子どもに行動を指示しています。


マグネットボードも操作の遊びでもあり、慣れてくると想像遊びにも広がる魅力的な玩具ですね。
和久洋三さんの玩具がたっぷりと準備されたアリスチャイルドケアサービスさんにて撮影


不安な状態の子どもには、玩具を間に置いて安心をうながすのも一つの方法です。保育士が、直接話しかけても泣き続け、「この人誰?いやだ、話しかけないで」という状態の子どもには、人形を使って話しかけると、じっと聞く場合があります。その人形を使って、保育者やお友達や場の紹介をしてみてはどうでしょうか。

とはいえ、一時保育室は、保護者にとっては玩具や絵本のモデルルームでもあります。一時保育を利用して、「家庭でのビデオ視聴が増えた」、「家庭にテレビ文化の玩具が増えた」とならないように配慮したいものです。子ども自身が遊びを生み出すための素材や道具を、保護者から見える位置に配置しておくなどの方法もあります。

*この内容は、一時保育に携わる先生からのリクエスト企画でした。

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