『環境構成の理論と実践』増刷決定2014/07/01

うん十年ぶりに、ぎっくり腰をやってしまいました。腰を曲げると痛いのですが、もっててよかった中腰力。
常日頃、中間、中庸に耐える力をもちたいと、歯磨きを中腰でやっています。(関係ないとの指摘もありますが)。
足の筋力があると、腰をまっすぐにしたまま落ちた物を拾うことができたり、スクワットで立ち上がれたりと、けっこうぎっくり腰のときに便利なことを発見しました。すばらしき中腰力!


さて、『環境構成の理論と実践』ですが、おかげさまで増刷となりました。



日本保育学会で、高山先生、表紙が惜しかったね、保育の本に並んだら地味で埋もれちゃうよと、保育書専門の本屋さんに言われ、その通りだよなあと、派手な表紙の本の群れの中に、じみーに並ぶわが本を、さびしく見つめた私でした。でも、一枚一枚の写真の豊かさは、きっと保育者の方には伝わるはず保育者であれば、この一枚の写真にこめられた保育者の専門性と、子どもたちへの思いが一目でわかるはずだと思っていました。

表紙は地味ですが、「こんな保育の本は初めてなのでたくさん送って下さい」という書店もあったり、園の職員全員で購入して下さる保育園も続出。アマゾンも楽天もずっと品切れ。わずか一か月で増刷となりました。大変にありがたいことです。


「はじめて環境構成で使えるテキストが出た」と言っていただきました。
知性派の園長先生からの評判が良いです。それがうれしい。




研究者の方からは、「『日本にも世界に誇る保育がある!』そんな気持ちにさせられました」と感想をいただきました。
 
そうなんです。先生方の実践が、すばらしいんです。


『環境構成の理論と実践』 目次
1環境構成の必要性

 乳幼児期の特性と環境構成の重要性

 子どもの人格形成と保育環境

 保育の専門性に基づく環境構成

2環境構成とは何か

 環境構成の基礎理論

 環境構成を支える知識と技術

 環境構成の両義性

3遊びと環境構成

 乳幼児期の遊びの意義

 子どもの遊びと環境構成

 遊びの素材と道具の理解

 遊びのイメージを生み出す文化の理解

 遊びにおける空間の構成

 園庭の環境

4生活と環境構成

 生活場面での環境構成

 生活用品の選択と空間の構成

 養護(生命の保持と情緒の安定)の環境

5子どもの発達と環境構成

 子どもの姿から環境を構成する方法

 各ステージ別の環境構成の実践例

 第一ステージ 0 7 か月頃

 第二ステージ 8 か月~ 1 歳前半

 第三ステージ 1 歳後半~ 3 歳前半

 第四ステージ 3 歳後半~ 5 歳頃

 第五ステージ 6 歳頃

6感性を育む保育環境

 環境心理学から学ぶ環境構成

 保育室を飾る


本は時代を動かす。理論は実践を変えると信じている私です。
全国の先生たちの思いがたっぷりつまったこの本が、日本の隅々まで届いて、子どもたちの暮らしの質がわずかでも変わることができますように。保育者がもつ専門性を、多くの人に知ってもらえますように。

美しさに心惹かれるということ2014/07/09

保育者をしていたときに、赤ちゃんが美しい色や形に惹かれる姿を不思議に感じていました。
1歳の子どもが、道端にしゃがみこんでいるので、何をしているのだろうと横にしゃがんでみたら、小さな黄色い花を見つめていました。3歳の子どもがじっと階段に座っているので横に並んで座ってみたら、「お月様がきれい」と、月をながめていました。生物には美しさに対する感性が埋め込まれているのだろうか。美しさに心惹かれるって、どういうことなのだろう、とずっと不思議でした。

環境心理学では、人が美しいと感じるものには、調和と、新奇性の量が関係していると考えられているようです。
不調和なもの、新奇性が高すぎるものは、人は汚いと感じやすく、ごくわずかに新奇性があるときに、多くの人が「美しい」と感じやすいそうです。自然は互いに調和し合っていますが、人工的な環境では不調和な環境を作りやすいともありました。

この美しさを保育に活用したのが、マリア・モンテッソーリです。モンテッソーリは貧民教育に尽力した人としても知られています。モンテッソーリは、家庭で十分な教育を受けられない子どもたちを集め、環境を通して生活に必要なスキルや認識の学習を促しました。モンテッソーリ教具は、美しくシンプルであることが、特徴の一つです。
汚くそっけない石鹸ではなく、「私で手を洗ってみない?」と子どもたちを誘い、思わず手を洗ってみたくなるような石鹸。ほうきも子どもが思わず使ってみたくなるようなほうき。道具が示すアフォーダンスのなかに「美しさ」という要素を見出し、子どもが美しさに惹かれることを活用した人でした。

先日お伺いした園でも、美しさを活用した実践を発見しました。
埼玉県松伏町にある幼保連携型認定こども園 こどものもり まつぶし幼稚園・こどもの森保育園
見学者も多く、その実践が、全国の園へと影響を与えていらっしゃる園です。

園庭は子どもたちが自然と出会えるように作られています。(写真が下手で申し訳ないです)
多様性の美、調和の美が、各所から感じられます。


     
子どもたちが調理をする空間です。
どの空間も、「うわあ」と思わず声を上げてしまいます。子どもたちへの思いが随所にあふれています。



この廊下に置かれた園庭用の玩具を見つけたときには「これ、これがポイントですね」と思わず叫んでしまいました。

園庭用の玩具といえば、不調和な多色づかいのお砂場セットだったり、カニやクマの抜き型だったりと、遊びが広がりにくい玩具が多かったりします。こちらの園では、園長先生、副園長先生を中心に、インテリアや雑貨のお店で、子どもたちの遊びの素材や道具を選んでいらっしゃるそうです。


綺麗な足つきワイングラス! 「容器や道具が違うと、遊びが変わるんです」と説明して下さった若盛圭恵先生。
(先生方の「笑顔」も、「美」であり、「調和」ですね)。


美しいと感じる感性が、数学や科学の発展を支えたと言われます。
また、物を含めた環境が子どもの行動を規定し、子どもの習慣をつくります。
子どもたちを取り巻く環境は、その子どもの原風景となり、無意識の部分に生涯残ることでしょう。
たとえ狭くて古い保育室であっても、保育者の思いがあれば、あたたかさや、調和や、美を配置することは、きっとできるはずです。

一つひとつの物選びが大切なことを、改めて感じさせていただきました。
若盛正城先生、清美先生、圭恵先生、そして園の先生方、ありがとうございました。