保育の質を確保する自治体の独自基準2011/09/06

小宮山洋子氏が厚生労働大臣に就任。着実な保育の質の確保に向けての取り組みが期待できそうです。

各自治体でも、地方主権に向け質の確保が進められています。
さきに紹介した「遊育」 では、「都道府県等の保育所認可基準と条例化の動き」の特集が組まれていました。
特集には、保育所の独自基準を設けている自治体が詳細に紹介されています。

千葉県は、県として指針を設置。国に上乗せした基準設置を行っているのだとか。
「保育所の設置認可の基準等に関する指針」

横浜市では、保育士配置基準は、「1歳児4人につき一人以上、2歳児5人につき一人以上、3歳児15人につき一人以上、4歳以上児24人につき一人以上とする」とし、「保育所保育指針」に示された保育ができる保育士数を、市が確保しています。
「横浜市民間保育所設置認可等要綱」(18ページに掲載)

京都市は、1歳児5人に一人、3歳児15人に一人、4歳児20人に一人、5歳児25人に一人として、私立保育所に補助を行っているそうです。

国の保育所の保育士配置基準は、子ども1、2歳児6人に対して保育士一人、3歳児20人に一人、4,5歳児30人に一人です。どんなに優れた保育士であっても、この最低基準で「保育所保育指針」に示された保育内容を実施することは不可能といえます。35人に教員一人が基準の幼稚園も同様です。
30人の3歳児を一人の保育者が、一人ひとりの気持ちをうけとめつつ適切な援助をする・・・なんて人間技ではありません。日本の幼児教育の構造の質は先進国とはほど遠い観があります。

今でも厳しい配置基準ですが、認定こども園の基準では、短時間保育児は、3歳でも35人に一人となります。短時間保育児と長時間保育児が混在するクラスでは、預かり保育で子どもは残っていても、人的配置基準は保育所よりも低くなってしまうのです。また、幼稚園では、預かり保育の時間は、教員の規定がありません。実際に幼稚園では、無資格者が預かり保育の時間に子どもを保育しており、文部科学省の調査では、無資格者の割合は私立よりも公立の方が多いというデータが出ています。
一体化によって、一定時間のみが「教育」で、その時間以外の時間は「託児」、という感覚が広がることは大いに問題です。また「教師の指示により子どもが行う活動」が「教育」で、それ以外は「自由遊び」という誤解が拡がることも、危惧されます。

オムツをつけている3歳児が増え、家庭で食事や睡眠、排泄などの基本的生活習慣を獲得できずに園での支援が必要なお子さんが増加しています。「遊び」が教育という「幼稚園教育要領」の考え方では、基本的生活習慣の獲得を支援することは困難であり、遊び・食事・休息等、一日の生活全体を通して「教育と養護」を一体で行う「保育所保育指針」を保育内容の最低基準にする必要があります。

しかし、保育内容の質は「保育所保育指針」にあわせ、構造の質は、幼稚園と保育所の中間というのでは、今以上に規定された保育内容を実施することが難しくなります。一体化により、保育の質が下がることになっては、子どもの育ちにとってはマイナスですから、まずは構造の質の確保が必要。

「最初の1ドルは後の7ドルを節約する」。幼児教育で心身ともに健やかで聡明な人間を育てることは、問題発生に対応する税金を節約することにつながります。将来の税収も医療費も、人格の土台をつくる幼児教育の質にかかっているといっても過言ではありません。子ども第一主義の浜松市、子育て支援全国一を目指す静岡県にも大いに期待したいと思います。


                  美しい自然を残す心があるまち 浜松  (写真は浜名湖)

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