宮古島で保育士募集ツアー2020/07/30

沖縄タイムス(2020年7月28日)の記事に、気になるツアー募集がありました。
各回5名限定らしいですが、保育士の新しい募集方法としておもしろいですね。
ちなみに、沖縄移住相談会を開いている「おきなわ島ぐらし」なんてサイトもありますよ。

「保育士さん 宮古島に来て」 9月移住体験ツアー、参加者募る



以下記事より転載します。

宮古島市法人保育連盟(金谷福代会長)は、慢性的に不足している保育士の確保を目的に「第1回保育士移住体験ツアー」を924日~26日に実施する。対象者は保育士資格がある(または取得予定で)宮古島での生活や離島での保育に関心のある人。現地での移動や宿泊、体験費は無料。県内外から幅広く参加者を募集している。応募締め切りは810日。第2回ツアーは1217日~19日に実施予定で、応募締め切りは111日。応募方法はいずれも同ツアーのホームページで申し込みフォームに必要事項を入力して申し込む。金谷会長は「この機会に多くの人に参加してほしい」と呼び掛けた。(沖縄タイムス 2020.7.28)


感染リスクを下げる行動のチェックリスト2020/05/13

保育園では、感染防止対策は常日頃から行われていますが、休園措置が行われる感染症は初めてのため、改めて厚生労働省の通知を読み直した人も多いと思います。私もそう。「保育所における感染症対策ガイドライン」(2018)を土台に保育の視点を加え感染防止の行動をチェックリスト形式で作成してみました。

 

【保育所・認定こども園の感染拡大を防止する行動のチェックリスト】 


 A 園長・副園長による環境づくり

o  クラス、トイレ、職員室等、各場所で換気の時間や、状況(~の後等)を決めて掲示し実施している。又はいつも窓を開けている。

o  各クラスには温度計・湿度計があり、季節による適切な気温や湿度が掲示されている。

o  口に入れる乳児の玩具は、洗浄交換用に同じものを複数準備している。

o  固形石けんは共有となるため、液体石けんを使用している。

o  子どもも保育者も、紙タオルまたは個人持参のタオルを用いている。

o  オムツ交換は一定の場で行えるようにオムツ交換台等が整えられている。

o  交換は段取りよくできるように物が整備され配置されている。

o  交換後のオムツは密閉できる容器に保管し保育室内のロッカーには持ち込まない。

o  マスク、消毒薬等、感染防止に必要なものが確保されている。

o  嘔吐物や排せつ物等の処理等を行う際に使える使い捨て手袋が準備されている。

o  保育者は、感染症流行時にはマスクをして保育をすることができる。

o  保育補助者や短時間職員にも感染拡大防止行動を文書で説明している。

o  必要に応じて、部外者の保育室、園内への立ち入りを制限している。

o  外部の人と接する事務職員等は、感染症流行時にはマスクをつけている。

o  行事は子どもに必要な行事にとどめ、保護者に見せるための行事は行っていない。

o  保育者は壁の飾りつけ、必要性の低い計画や記録、報告等で残業や持ち帰りを行っていない。

o  職員は、休日出勤や残業の振替休日、時間休をとることができる。

o  職員は、体調が悪いときに休みをとることができる。

o  園長・副園長と職員は、感染リスクの高い場所や行動を共有し、情報を更新している。

□保育室は、保育者がゆとりをもちていねいな指導ができる物的環境を整えている。

□保育室でも、園庭でも保育者と子どもが水分補給を行える環境を整えている。

 

B 保育者(クラス担任)による時間的な環境づくり、子どもへの指導

o  子どもを一斉にトイレに行かせ、並んで待たせるなどの混み合う方法をとらずに、子どもが排せつしたいときに排せつができるようにしている。

o  保育の合間に、子どもを壁に並ばせて待たせたり、立って並んで待たせたりしていない。

o 一人ひとりに丁寧に指導ができる物的環境と時間の環境をつくり、ゆとりのある保育を行っている。

o  012歳児は一人ひとり排せつを誘い、手洗いまでていねいに指導を行っている。

o  子どもに感染症や病気について分かりやすく説明している。

o  子どもに免疫力や抵抗力を高める生活習慣について説明している。

o  子どもに咳エチケットの必要性を説明し、やり方を見せている。

o  子どもに鼻水の意味を説明し、かみ方をていねいに見せたり指導したりしている。

o  子どもに手洗いの意味を説明し、適切な手洗いの方法を見せ、個別に指導している。

o  オムツ交換は、交換後の消毒も含めて手順が保育者同士で共有化されている。

□子どもがのどが渇いたときにいつでも水分がとれるようにしている。

 

C 保育者・保育補助者の手洗い、身支度等

o  保育に入る前後、食事前、調乳前、配膳前、トイレの後、おむつ交換後、嘔おう吐物処理後、子どもの鼻をかんだ後等には、液体石けんを用いて流水でしっかりと手洗いを行う。

o  母乳は血液を取り扱うと捉えて慎重に取り扱っている。

o  オムツ交換や鼻をかんだ後など手を洗う前に、髪の毛や顔、洋服をさわらない。

o  髪の毛をかきあげるなど髪をさわる必要が生じる髪型は、ゴム等でまとめている。

o  爪は短く切っている。保育中は指輪をしていない。

o  調乳時、食事介助時は、遊びで着用していないエプロン等を着用している。

o  保育者は咳エチケットを理解し、マスクをつけている際にも遵守している。

 

D 保育者と保育補助者、清掃担当者による清掃

o  遊具は、水(湯)洗いや水(湯)拭きを行う。

o  乳児がなめた遊具は、湯等で洗い流して干す。

o  尿、糞便、嘔吐物、血液等で汚れた箇所、その他必要な個所は消毒を行う。

o  トイレは、ドア、ドアノブ、蛇口、サンダル等も清掃する。

o  砂場は、定期的に掘り起こす日を決め、砂全体を日光によって消毒する。

o  感染症が流行している時期は、職員や外来者が共通して使用する場所・物を消毒する。

 

E 園長・副園長・主任等による保護者との連携

o  入園前に、ケガや感染症のリスクについて保護者に説明している。

o  入園前に、発熱等体調不良時の利用はしないように保護者に文書で説明している。

o  代わりの保護者がいない家庭に、ファミリー・サポート・センター等を紹介している。

o  SNS等で緊急連絡網を整備し、保護者に速やかに連絡ができるようにしている。

o  保護者からの相談を受けている(=保護者から信頼されている)。

o  感染症防止に関する国、市区町村の通知等の情報を分かりやすく保護者に伝達する。

o  感染症流行時には、園長より保護者に感染防止行動についての文書を出している。

o  休園、登園自粛等に関する文面を準備し、必要なときに保護者に出している。

 

とはいえこの全部ができていても、保育園の感染リスクはゼロにはできません

お母さんは勤務でお父さんと1歳、3歳の子どもは自宅待機の家庭で感染リスクをゼロにできないように、保育のプロ集団でも感染リスクを下げることはできても、ゼロにすることは不可能です。


子どもが育つ、子育てしやすいまちってどんなまち?2019/05/10

事故に胸が痛みます。2006年にひだまりの会で作成したパンフレットを掲載します。
このブログはPDFをアップできないため、ダウンロード用ホームページにパンフレットをおきました。

子どもが育つまち

子どもが育つまち

子どもが育つまち

子どもが育つまち

子どもが育つまち


科学ショップでの大人買い2018/05/27

教材研究のために、科学ショップをネットで探していますが、なかなか掲載が少ない。
二子玉川にあるショップに直接見に行こうと電車にのり、お店の場所を確認していたら、
数日前に閉店していることを発見・・・。すごすごと帰りました。

保育学会では、仙台駅前にある科学ショップに行く時間を確保し、
SーPALというデパートにあることも確認。
駅前で、偶然研究でお世話になっている園長先生とお会いして、一緒に行くことになりました。

ありました。THE STUDY ROOM ザ・スタディルーム
ザ・スタディルーム


テンションがあがるディズプレイ。


大人がワクワクするものがいっぱいです。
いやいや、幼児向けを探さねば・・・。


店長さんに写真とブログ掲載の許可をいただきました。

一緒に行った園長先生が、
「あ~これもいいかも~」、「これ貼ったら子どもがちょうちょに興味をもつかな」と
嬉しそうに選び、大人買いをしていました。
園の子どもたちは、幸せですね。

豊かな自然が目の前にあっても、
自然物に関心をもつ大人がいないと、
散歩でも、「電車バイバーイ」「イヌがいるよ」で、終わってしまいます。
自然に関心がない大人には、
子どもがしゃがみこんで、草を眺めている意味がわかりません。

保育者が自分の好みで教材を選ぶと
絵本は、物語絵本ばかり、
園庭は、花壇ばかりになってしまうこともあるでしょう。

子どもたちは、多様な能力をもっています。
理数系に強い保護者に協力を依頼したり、
園長や教頭主任が選択したりして、
理数系に強みをもつ子ども向けの
絵本や教材、園庭環境の充実を図ることも、
子どもの経験を広げる一つのしかけとして考えられます。

2019年3月2日は東北福祉大学で、
日本保育者養成教育学会が開催されます。
お店への再訪を楽しみにしています。

子どものための駅ナカ施設2018/04/17

最近、駅、空港などの公共施設内に、子どものためのスペースの充実が図られています。

大人は座りたい人たちですから、カフェが休憩や居場所になりますが、
動きたい赤ちゃんや幼児は、まちなかの居場所が、なかなか見つかりません。

乳幼児は動き回ることによって脳のシステム(心と体)をつくる時期です。
長時間体を動かすことができないと、泣いてぐずり、ときに叫びます。

とくに駅や空港など、長時間じっとする乗り物に乗る前には
体をうんと動かせる場があると、子どもも大人も本当に助かります。
乗り物にのったとたんに赤ちゃんが「ことり」と寝ると、親もうれしいですね。

空港は比較的歩かせる場所がありますが、
駅には、人に迷惑をかけずに体を動かす場がなく、
待つ時間、子どもと一緒に階段を登ったり降りたりするぐらいしかありません。

ところが、博多駅、軽井沢駅で、こんな駅ナカ施設を見つけました。

しなの鉄道 軽井沢駅から入場料を払って入ると・・・
しなの鉄道軽井沢駅

駅のホームに子どもの遊び場が。
右側が電車が入るホームです。

ブランコにのったり、電車に乗ったりする場もあります。

ハイハイやねんねの赤ちゃんがすごせるスペースもあります。
森の小リスキッズステーションという駅ナカ施設だそうです。
しなの鉄道、すばらしい!

設計は、あの豪華列車「ななつ星」などの設計に携わった水戸岡鋭治さんだそうです。
こちらは博多駅。同じ設計者です。

博多駅駅ナカ施設ちゃちゃくらぶ
ここなら、列車を待つまでの間、赤ちゃんを下ろして遊ばせることができますね。
ここへの入場には、駅への入場料プラスわずかな入場料がかかります。
JR博多シティの施設です。


次は、どこにできるのでしょうか。楽しみです。

赤ちゃんの運動発達と育児用品2016/04/08

標記の研究について、アフォーダンス研究者の細田直哉先生から教えていただきました。
8か月の赤ちゃん(N=43)を対象に、赤ちゃん用品の使用と運動発達との関係を調査した研究です。

赤ちゃん用品として使われるジャンパー、スウィング、シート、チェアーなどは、使用時間と運動発達には負の相関がある。明確な相関が見られなかったのは、ベビーサークルと歩行器。正の相関が見られたのはソーサーという赤ちゃんが動くように作られた用品だったという研究です。
(Abbott,A.L. and Bartlett,D.J.(2001),Infant motor development and equipment use in the home,ChildCare,Health and Development,27,pp295-306)

サンプルは少ないけれども結果は実感と一致。能力は練習の機会があればあるほど伸びるのは、誰でも体験的に知っています。能力を獲得した大人でさえ、使わなければ能力は落ちます。まして、日々爆発的に運動能力を発達させていく赤ちゃんが自発的な運動をしない時間が長ければ長いほど能力の獲得に影響が出るのは、ナイーブな感覚と一致しますね。


乳児の前期は、仰向けが最も全身を自由に動かすことができる姿勢。声をかけられ全身で喜びを表しています。
人間だけが、子どもを仰向けに寝かせて、目を見つめ、手に物を持たせます。 すごいことです。



うつ伏せで動けるようになると、全身を使って環境を探索。ずりばいで動くときには、全身の皮膚や筋肉から脳へと刺激が送られているのでしょうね。頭のあたりを見つめると、感覚運動野がスパークしているのが見えるようです(笑)。

この時期、環境を探索している子どもは、(おっ!)(あれ!?)と常に新しい発見をしているので、目がキラキラと輝いています。乳児クラスの保育者は、学びのファシリテーターとして、どもが、おっ!と、思わず這い出していくように環境をつくります。

どんなに豊かな物的環境や自然環境があっても、赤ちゃんをお座りさせる大人がいると、とたんに子どもは探索活動ができなくなります。乳児クラスの保育者が運動の重要性を意識していることが大切ですね。
家庭は家族みんなの生活の場ですから育児用品を使うことはあります(家庭では大人の都合だって大事です)が、子どもの教育と養護(ケア)の場である認定こども園と保育園では、育児用品や育児DVDを使用しなくてもよいように時間と空間の環境をつくっていきたいものです。

保育の内容・方法科目の教授内容2016/01/10

新年の富士山。


大学を移ってもうすぐ3年を迎えようとして、気づいたことがあります。
朝、駅から大学へ向かう道は太陽に向かう道。朝日を体一杯に浴びながら歩きます。なんだか運が良くなりそうって学生に話したら笑われました。

さて、保育士や幼稚園教諭の養成では、保育の内容と方法を学ぶ科目として、健康・人間関係・言葉・環境・表現の5領域と保育内容総論が設置されています。これらをどのような科目編成にするか、またどんな科目名にするかについては、各養成校に任されています。

たとえば、子どもが環境の認識と関わりの観点から発達をとらえそれらを育む保育を学ぶ領域「環境」では、その科目名は「保育内容演習環境」「子どもと環境」、「保育内容の指導法・環境」「「保育内容研究・環境」「保育内容・環境」など様々。「保育と環境」となんて科目名も。「保育の内容と方法:環境」とのそのものズバリの科目名はありません。
環境の領域には、自然、季節の事象、数量、図形、記号、道具、行事など様々な内容が含まれていますが、虫の生態ばかり、環境汚染のお話ばかりと単なる環境つながりの授業内容も見られます。他の領域でも健康の領域で「小児保健」のテキストを使用していたり、内容表現で保育者の基礎技能を教えていることも…。養成教育の質の課題は、厚生労働省の養成検討委員会の中間まとめ報告でも指摘されていましたが、対応は行われていないままです。

そこで、保育内容科目の教授内容について新しいミニマムスタンダードを作るべく研究をしました。(2014年大学紀要で発表)。教授目標と教授内容との整合性を図りました。

【保育の内容・方法に関する科目】 保育内容演習(演習・5単位)現行

<目標>

1.養護と教育にかかわる保育の内容が、それぞれに関連性を持ち、総合的に保育を展開していくための知識、技術、判断力を習得する。

2.子どもの発達を「健康・人間関係・環境・言葉・表現」の5領域の観点から捉え、子ども理解を深めながら保育内容について具体的に学ぶ。  

<内容>

以下の観点から、総合的に保育内容を理解する。

1.子どもの生命の保持及び情緒の安定を図るために保育士等が行う援助やかかわりである「養護」

①子どもの生理的欲求を満たし、子どもが健康、安全、かつ快適に過ごすための生活援助

②子どもを受容し、子どもが安心感と安定感をもって過ごすための援助やかかわり

2.子どもが健やかに成長し、その活動がより豊かに展開されるための発達の援助である「教育(健康、人間関係、環境、言葉及び表現の5領域)」

①健康な心と体を育て、自ら健康で安全な生活をつくり出す力を養う「健康」の領域。

②他の人々と親しみ、支え合って生活するために、自立心を育て、人とかかわる力を養う「人間関係」の領域。

③周囲の様々な環境に好奇心や探究心を持ってかかわり、それらを生活に取り入れていこうとする力を養う「環境」の領域。

④経験したことや考えたことなどを自分なりの言葉で表現し、相手の話す言葉を聞こうとする意欲や態度を育て、言葉に対する感覚や言葉で表現する力を養う「言葉」の領域。

⑤感じたことや考えたことを自分なりに表現することを通して、豊かな感性や表現する力を養い、創造性を豊かにする「表現」の領域。

 

【保育の内容・方法に関する科目】 保育内容演習(演習・5単位)改訂試案

<科目名>

保育の内容と方法(演習・5単位)

<目標>

1.「保育所保育指針」、「幼稚園教育要領」の各領域のねらいと内容を理解する。

.養護と教育にかかわる保育の内容が、それぞれに関連性を持ち、総合的に保育を展開していくための知識、技術、判断力を習得する。

.子どもの発達を「健康・人間関係・環境・言葉・表現」の5領域の観点から捉え、子ども理解を深めながら保育内容について具体的に学ぶ。

<内容>       

1.各領域の「保育所保育指針」「幼稚園教育要領」のねらいと内容

2.各領域の観点による子どもの発達過程

3.発達過程に即した具体的な活動の理解

4.内容の遊び・生活場面への具体的な展開

5.環境構成

6.保育者の援助・指導

7.内容の取扱いと配慮事項

8.個別の事例における保育内容の具体的な展開


保育内容の科目で、各領域の観点から、子どもの発達と、発達に関連した活動を学び、保育者としての援助方法を重ねて学び演習を行えば、保育の質は着実に高めることができるでしょう。また厚生労働省の通知内容が変われば、出版されるテキストの内容が変わります。5領域すべてのテキストに、活動に関連した発達と保育者の意図的な援助が含まれるようになれば、子どもを急がせ待たせる保育が減る可能性があります。保育は人。養成教育の質を高めれば、子どもたちの暮らしの質と経験の質を高めることができます。

とはいえ、指針や要領が抜本的な改革が行われて、観点の構造が変わると、科目名も変わりますね。
保育者養成教育の質を高めるべく、今年も研究会他で学びを続けていきます。


子ども観・保育観・遊び観2015/11/07

保育環境の研修会では、
まず子どもの遊びをどのように捉えるか、
からスタートします。

(今さら遊び?)と思われることもあるようですが、
保育環境には、その保育者のもつ子ども観、保育観、遊び観が現れます。
またそれらは、どんな絵本を選ぶか、
どのような行事をするか、
どのように子どもと関わるかなどにも現れます。
保育者養成に関わる仲間たちと
この中核の部分を育む授業を模索しているところです。




たとえば、子どもを幼稚な存在だと考え、
子どもの遊びを大人と同じような楽しみや気晴らしだと考えていると、
子どもを喜ばせるタイプの玩具が置かれます。
保育者の役割を子どもに何かを教えることや楽しませることだと考えると、
シアターや壁面の製作が優先され、
テレビの話題や真似を保育に取り入れることも多くなるでしょう。

保育環境の研究で聞き取ってきたのは、
「なぜその環境なのか」という環境の背景です。
環境を改善していくためには、
まず子ども観、保育観、遊び観の見直しからはじめ、
環境構成の原則と、多様な環境のバリエーションを知り、
状況に合わせて試行錯誤で工夫を重ねていくことが、
着実な方法ではないかと行きついたところです。
(これからもっといい方法が見つかるかもしれませんが)。

また、保育の環境は、
提供される文化とかみ合うことによって、
充実した遊びが展開
されます。



子どもはとても強い印象を受けると、
それを行為として表現
したくなります。
子どもたちのイメージを広げる絵本や詩、歌、
大人の仕事を見る機会、体験の機会、散歩で出会うもの、
本物の劇や演奏などに触れる機会など。
限られた保育の時間で、どんな出会いを最優先にするか。
保育者の悩みはつきません。

保育の教材研究は、室内・園庭の環境だけでは終わりません。
実に奥が深いですね。

子どもの権利条約を保育にいかす2015/06/22

P研(保育の専門性研究会)のメーリングリストで、喜多明人先生が、「子どもの権利~次世代につなぐ」を出版されたことを知りました。それでふと日本が条約を批准したときに、子どもの権利条約をテーマにブレーンストーミングをしたことを思い出しました。パソコンに検索をかけると、ありました。仲間たちと、「保育士として子どもの権利を尊重するってどんなことだろう」と、項目を出し合ったものです。
読み直してみると、現場のときにしか浮かばない項目が多くありました。今だと違う項目も浮かびますが、若かりし頃(いえ決して若くはありませんでしたが)に、現場の人間として考えたことが何か皆さんのヒントになるかもしれまないと思い載せてみます。

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子どもの権利条約を保育にいかす~子どもを一人の人間として尊重するって具体的にどんなこと?

 

食事など生活場面で

 □無理矢理食べ物を口にいれない。 

 □子どものペースを無視して離乳食を口に詰め込んだりしない。

 □泣いている間に口に食べ物を入れない。 

 □赤ちゃんを抱くときや、触る前には「おしりをきれいにしようね」と理由を話す。 

 □赤ちゃんの口をふくときに、口をふさぐようにではなく、口のまわりをふく。 

 □おむつは、ぬれたら替える。

 □子どもが選択できるようになったものに関しては、選択させている。

 □子どもができなくて困っていることに関しては方法を具体的にていねいに教えている。

 □洋服は、子どもが動きやすく着替えやすい服を選択している。 

 □抱っこするときには、話してから抱く。 

 □体に乱暴にふれない。肩や腕はつかまないようにしている。 

 □大人の動作には言葉をつける「さあ、片づけるわね」など。 

 □服を着せるときには、本人が着るのを介助するように意識している。 

 □赤ちゃんを抱き上げるときは正面から。後ろや横から抱きあげない。 

 

遊びの場面で

 □子どもが十分に体を動かして遊べる場を用意している。

 □子どもが自発的に自分で選択して遊べる遊びの時間を、十分につくっている。

 □大人の都合で抱っこしない。気分を立て直して、遊べるように援助して降ろすようにしている。

 □指さしで、赤ちゃんが訴えているときには「わんわんがいたね」など答えている。 

 □ひとり遊びをしているときには、あやさないようにしている。

 □遊んでいるときには横や前を横切らないようにしている。

 □遊んでいるときに大声を出してじゃまをしないようにしている。 

 □子どもが遊んでいるときに、「これをして遊びなさい」と遊びを指示しない。 

 □子どもが探索の主導者と思い、大人は探索につきあうようにしている。 

 □泣く子に対して「もううるさい」とか「この子よく泣くよね」と言わない。

 □子どもに芸をさせない。ものまね、はやりことばなど。

 □こわい人形でおどしたり、こわがる言葉でおどしたりしない。 

 □おもちゃを出すときに、箱をひっくりかえして出したりしない。 

 □一人用の散歩ロープは使わない。

 □水遊びのときにいやがる子どもに水をかけたりしない。 

 □子どもの未熟さによることばや動作を、何度もさせて笑ったり、からかったりしない。

 □子どもの遊びをしらけてながめたり、からかったりしない。

 □子どもが休息が必要なときに、休息がとれる場所があり、それが許される。

 

基本的なこと

 □赤ちゃんであっても、意志と感情をもった一人の人間であると感じている。

 □赤ちゃんであっても、一人の人間として尊重しようと思っている。 

 □赤ちゃんの前で、その子どものことを言わない。

 □子どもの前で、親のことを言わない。

 □たたく、押す、閉じこめるなどの体罰は使わない。 

 □子どもの目線にあわせて話をする。

 □子どもと目をあわせてから話をする。

 □子どもが理解できるように、年齢に応じた短くわかりやすい言葉を選んで話しかけている。

 □いきなりひっぱったりしないようにしている。

 □子どもを叱るときにはなぜいけないのか、わかりやすく話す。

 □親のことや、家庭のことなどを興味本位で、子どもに聞き出したりしない。





保育士が働き続けられるために2015/04/07

保育士不足が深刻です。その最大の原因は、職務内容に比べて待遇が低すぎることだと言われています。

命を預かる責任は重く、肉体的にも重労働でありながら記録や計画といった頭脳労働も多い。幅広い知識、教育とケアの専門性と自己研さんが求められる福祉の専門職です。毎日が総合学習であり、個々の保育士の裁量の幅が広い仕事。創造的で自律的な人が、やりがいを感じられる仕事です。
保育所の場合、福祉ニーズの高い家庭が利用するため、特別な支援を必要としている子どもと保護者もいます。保育士に求められる職務内容と専門性は高いけれども、記録と準備の時間は幼稚園のように確保されていません。夏期休暇や年度末休暇も交代制です。保育士の待遇は職務内容とは見合わず低いものです。

保育士の待遇は、今後わずかに改善される見込みがありますが、過重な仕事量は、各園で工夫して減らす必要があります。保育所は長時間保育になり、特別に支援を必要とする子どもが増え、計画や記録の量も増えています。1歳児でも20人以上などクラス規模も大きくなっています。この状況のなかで仕事を減らさなければ、保育士の負担は増える一方です。今回は、保育士が保育を続けることができ、就職希望者が増えるために、園長・主任が中心になって行っている各園の工夫を紹介してみます。

保育士の「しなくてもいい苦労」を減らす
〇保育室・園庭の保育環境を変える。物的環境は人的環境をカバーする。
〇子ども主体の保育に変える。子どもに指導をし続ける保育は、保育士の精神的・肉体的な疲労が大きい。
〇一人ひとりの差異を受け止められる流れる保育に変える。発達に合わない一斉保育は保育士の負担が大きい。
〇ゼロ12歳児の保育を、担当制にする。
〇ゼロ123歳のクラス分けを年齢別ではなく、その年度の子どもの様子に合わせて柔軟に変える。クラス集団の大きさが小さくなるようにする。
〇発達に合う行事に変える。保育士の過剰な指導が必要な行事は発達に合っていないため改善する。行事は、日常の保育を見せることを重視し、行事前に連日残業をして飾りや衣装を作ることを防止する。
〇計画と記録を省略化する。実践に使いやすい計画や記録を作る。前年までの記録や計画は閲覧可にする。
〇計画と自己研さんに必要な参考資料を貸出し、園での遊びや活動を蓄積、ファイル化する。
〇園に遅くまで残ることがいいこと、という雰囲気があれば、それをなくす。
〇作り物を減らす。壁面飾りは作らず本物の季節飾りを置く。準備が必要なお持ち帰り型の工作は減らし、準備が不要な日常的に使える造形の素材をたっぷりと準備し、日常的な造形表現を写真で残す。
〇国の最低基準以上の保育士を配置する。(そのため一人当たりの給与が低くなっている園もある)。
〇必要な計画・記録・製作時間の確保のために、パート職員を雇用する。
〇保育士の業務内容を減らす。製作や掃除等委託できる作業はボランティア希望者や無資格者の雇用で補う。
〇洗濯乾燥室など、保育士の労働が軽減できる機械を整備する。
〇職員会議で「残業を減らすには」、「就職希望者が増えるには」と、ブレーンストーミングで意見を出し合う。

保育士の過剰なストレスを減らす
〇職員が辞める原因となる職員の行動がある場合は、園長と主任、園長と理事長など複数で対処し放置しない。
〇保護者の相談は、主任や園長が中心に受ける。
〇保護者には、入園時に国の保育士の配置基準を説明し、理解を得ておく。
〇お迎えの時間には、園長か主任が園内や園庭に出て保護者に声をかけていく。
〇保護者とのトラブルや事故対応は、主任や園長が責任をもって対応する。
〇人格障害に対する基本的な知識を学習し、職員集団が振り回されないようにする。
〇福祉ニーズが高い家庭の割合が高い園は、保育士の増員やソーシャルワーカーの配置を市に要求する。
〇それぞれの保育士が得意なことを発揮し、お互いに補い合い、助け合うことを推奨する。全員に一律の能力を求めない。ピアノが得意な人、手作りが得意な人、研修・研究が得意な人など強みを発揮できるようにする。

保育士がリフレッシュできる仕組みをつくる
〇まとめて休みがとれるようにする。4月~6月の間に一週間続けて休みを取る仕組みを作っている。
〇仮眠、休憩、保育中にお茶を飲むなど、保育士がリフレッシュすることは良いことだという文化をつくる。
〇保育士が、子どもと離れてゆっくり休憩ができる場所を複数作っている。
〇保育士の休憩室には、仮眠ができる機械が置かれている。(休憩室にマッサージ機があれば、肩こりによる頭痛がどれだけ減るだろう)
〇園長が落ち込んでいる職員に、ボケたりつっこんだりする。(状況と相手によっては逆効果の場合も?)
〇園の慰労会では、園長先生のポケットマネーでビンゴ大会を行っている。

保育士が、自分で自分の仕事をコントロールしている感覚をもてるようにする
〇保育士たちが最も保育に合った週日案、記録を考え、書式を柔軟に変更する。図を使う。マインドマップをそのまま計画にしている。文章に書き替えない。
〇保育環境は、知識を持った上で保育士たちが話し合って決め、変えることを推奨する。
〇絵本、遊びの素材等は保育士が購入できるようにする。カタログ等は保育士が閲覧する場に置く。
〇当番研究やテーマが固定された研究には希望者が参加し、自分たちが必要な園内研究をする。

自己肯定感や、やりがいを感じられるようにする
〇できるだけ多くの保育士が、質の高い研修に出られるように工夫する。
〇質の高い保育を行っている園を、保育士が見学する研修を組む。
〇外来者(研究者や小学校教員等)、保護者の前で、その保育士の良い面を話す。
〇手柄は、保育士のものにする。
〇職員の名前を書いた手帳に気づきを書き込み、いいところリストをつくっている。
〇子どもが日々幸せにすごせる保育への改善を推進する。
〇保育士が誇りをもてる質の高い保育への改善を推進する。

これまでの園訪問で、園長先生方や主任の先生方から教えていただいたことをまとめてみました。

いきいきと保育者が働いている園は、意外に園長先生が保育経験がない場合がありました。自分が経験がないために、本気で(大変だよね、頑張っているよね)と感じている、そして(どうすればもっと保育者が楽しく仕事ができるだろう)と試行錯誤されている園長先生方と出会い、経験がないことがプラスに働く部分もあると気づきました。
子どもの保育も、保護者の支援も、保育士の労働のマネジメントも、当事者の力量で考えることが基本です。現実の今の保育者集団の力量を捉えて、どこをどう変えればよいかを考えていく、また保育士が頭を突き合わせて考えていけば、その園にちょうどいいやり方が見つかるかもしれません。