アフォーダンスと保育の環境2014/05/26

アフォーダンスの研究者、細田直哉先生(聖隷クリストファー大学)と、保育環境について対談しました。

「保育における環境構成とアフォーダンス」『げんき』No143、エイデル研究所、2014
143号のテーマは、「子どもの育ちと保育環境」


対談は、研究会の前に教室で行いました。対談を読んだ家族からは、細田先生の真摯で誠実な姿勢に対して、私の座り方が「偉そう」と批判が。え~そうなの~? 私は、自分の写真を見たときに(肩が上がって胸をすぼめて、えらく緊張した姿勢をしているな。いくつになったら人と話をするのに緊張しなくなるんだろうか)と、思っていたのに。「知らない人が写真を見たら偉そうな人に見える」と言われてびっくり。


でもまあ写真は抜きにして、中身はとても濃い内容です。
「子どもは『心』だけで生きているのではありません。『心身』まるごとで『環境』にかかわり、『環境』を自分の一部としながら発達しています』といった珠玉のような細田先生の言葉が並びます。
18ページに渡る対談の内容は、環境構成に長く取り組んでこられた先生方にもきっと満足いただけるのではないかと思います。普段、研究会でおしゃべりしている内容を、アフォーダンスの理論と保育の実践とをつなぐ対談として、公にできてとてもうれしいです。

またこの号では、色彩の専門家である宮内博実先生(静岡文化芸術大学名誉教授)も登場。
「子どもの育つ環境と色の世界」と題して、保育環境の色彩について語られています。




色の違いを見分ける弁別力は、4歳でほぼ大人と同じに
幼児期に豊かなカラーボキャブラリーを。
子どもらしい色は、ほとんどが大人の思い込み。
民族性・エリアによって、好まれる色は変わる。
幼稚園・保育園の色彩環境は家庭の延長であるべき、といった内容が並びます。

保育環境や教材を、色彩の観点から見直すヒントが満載です。

エイデル研究所の出版物案内はこちら


わこう村のDVDが付録!?2014/05/12

6、7月号の小学館『新幼児と保育』が届きました。
今月の子どもの育ちを支える保育環境のテーマは砂遊び。川和保育園さんの砂場の写真が満載です。

表紙は長新太さんです。


驚きなのがその付録。ドキュメンタリー映画『わこう村 和光保育園の子どもたち」、60分のDVDがついているのです。宮川編集長、60分映画のDVDつけていいんですか~?と驚きました。
企画は「日本児童教育振興財団」。監督は、「こどもこそミライ」の筒井勝彦氏です。


60分ドキュメンタリー映画が付録って・・・。私、「こどもこそミライ」は映画館に見に行ったのに。本屋に走りましょう。

わこう村のおだやかで生き生きとした日常と環境。
子どもたちの自然のなかでの遊びや毎日の生活のシーン。
一つひとつの環境に鈴木先生や先生方の思いが埋め込まれています。

おやじの会のシーンもいい。(筒井監督、ワンシーンだけ掲載をお許しください)


お父さんたちが、園庭を掘って土台を組んでプールを作ります。
完成したプールの中ではしゃぐお父さんたち。
なんだか涙が出ちゃいます。

豊かな自然と、子どもが自分たちでふつうに遊ぶ姿が、ぜいたく品のように感じる今日この頃。自然や人とつながりのある生活やていねいな暮らしは、一部の恵まれた子どもにしか享受できないものなのでしょうか。保育園や幼稚園は、ほんとうの豊かさを子どもや保護者に提供できるはず。報告書や講演では伝えることが難しい保育園や幼稚園の可能性を、筒井監督が見事に映像にして下さいました。

「子どもにとって豊かな環境とは」、このDVDを見て話し合うことで多くの気づきが得られると思いました。
また「子育て支援とは何か?」、その本質を考えるためにも、ぴったりのDVDです。
映像のチカラは大きい。学生たちに見せて一緒に話をしてみたい、と思いました。

授業でも使ってもよいかお尋ねしたところ、小学館の宮川編集長はもちろんのこと、日本児童教育振興財団の担当者の方も、「ぜひどうぞお使いください」と、許可をいただきました。ありがたいことです。こういう思いと行動が重なりあって、保育も、社会も少しずつ少しずつ良くなっていくのですね。

ただし研修などの「上映会」は、有料、無料にかかわらず不可だそうですので、どうぞご注意ください。


議員さんの一日保育士体験2013/10/11


黒目川は、日差しも風も秋の気配。

全国保育研究大会に参加される皆様、そして準備に携わる皆様、大変にお疲れ様です。本日は最終日ですね。
これまで大学の仕事を休めずお断りさせていただくことが多かった大会ですが、今年は「保育の社会化に向けて~保育の営みをいかに社会に発信するか」の分科会に助言者として参加することができました。学びの多い三題の発表でしたが、なかでも北九州市保育士会の発表は圧巻でした。

20年間の研究をまとめた本の発刊。保育所を理解するためのDVDの作成と各園への配布とユーチューブへのアップ、駅前の大型ビジョンを使って保育のCMを流すなど、保育にかける情熱に圧倒されました。
なかでも議員さんや学校の先生、民生児童委員さんなどを招いての一日保育士体験は、何と昭和58年から続けていらっしゃるのだとか。一日体験をした方を集めて振り返りと交流の会も開いているそうです。
保育所での保育士経験がある議員さんは、「国の最低基準以上の人的配置でないと子どもの最善の利益を守れない」、「保育は人が重要」という訴えがあったときにもその意味がありありとわかるでしょう。


八木義雄監修 北九州市保育士会編著「自我の芽生えとかみつき」蒼丘書林、2013
待井和江監修 北九州市保育士会編著「感性を育てる保育実践①~④」ミネルヴァ書房、1999
北九州市保育士会作成の認可保育園のパンフレット

それにしても、議員さんの一日保育士体験のような素晴らしい実践が30年近く続けられてきているというのに、それが全国に知られていないことが本当に惜しい。「各地域・園で保育者が積み上げた貴重な保育実践を保育者の共有財産とする仕組み」を、みんなで考えていく必要があります。


久しぶりに参加した全国保育研究大会でしたが、発表者や参加者の真剣さに触れながら、研究の助言や指導にあたる保育者や研究者は、公立と私立では保育者の労働条件が異なることをふまえて、保育者が実践研究によってバーンアウトすることがないように配慮する必要性についても、改めて感じて帰ってきたのでした。

保護者への通信に使える!育ちとかかわり方辞典2013/08/11

またまた小学館の雑誌の紹介です。『新幼児と保育 特集 0・1・2歳児の保育』
家庭に届けたい保育のスキル「子育て」と「保育」をつなぐ保存版だそうです。
この表紙だったら、小脇に抱えて歩いても、恥ずかしくない。保育雑誌には珍しいシンプルさです。


私は、複数の出版社の方から、「保育雑誌や保育の本は、幼稚で派手な表紙でないと売れません」と言われたことがあります。専門職の雑誌で、表紙にくまちゃんやうさちゃんが並ぶのは保育雑誌だけ。保護者向けの育児雑誌の方が、心理学や教育学が盛り込まれ、専門的な内容であったりします。
保育者の聡明さを信じ、保育雑誌界の常識にチャレンジする雑誌を、みんなで応援したいものです。

さて、「乳幼児の育ちとかかわり方」事典。
睡眠や食事場面でのよくある悩みから、三項関係の成立と言葉の発達、自我のめばえと、折り合いのつけ方、だだこね、かみつきとひっかきなど、保護者も保育者も同じように困り、悩みがちなことをテーマにした特集です。
懇談会や連絡帳の回答、お便りの参考にもなりそうです。



時々、若い先生から、「私は子育ての経験がないので、保護者から相談を受けても自信がなくて」と、言われることがあります。でも、相談をされること自体が、保護者から信頼をされている証拠。保護者は信頼していない先生に相談したりはしません。若くても、保育士としての専門知識と経験に信頼をおいて、話をしていらっしゃるのでしょう。
0・1・2歳の行動は、初めて子育てをする親にはわかりにくい行動ばかりです。乳児の行動の意味を、専門知識に基づいて、説明・代弁できるといいですね。

また、「わたしの保育 実践記録およびエッセイ」の募集も載っていました。締め切りは9月10日(火)だそうです。今年も入賞作品を読むのが楽しみです。

「飾らない保育環境」を連載中2013/08/01

小学館「新幼児と保育」で、今年は、「飾らない保育環境」を連載しています。
とはいっても、私の書き下ろしではなく、実際に記事を書いているのは小学館のエディター、神崎典子さん。
神崎さんが私にインタビューをして書き、それを私が校正します。「○○先生監修」と書かれている記事や本は、その先生が直接書いていないことを示しています。聡明な編集者の方がまとめてくださった内容は、私が書く文章よりも読みやすいことが多いものです。
4・5月号から並んだ「新幼児と保育」。今月、池袋のジュンク堂書店では、平積みになっていました。


「飾らない保育環境」は、4・5月号の環境構成とは何か、環境の要素の説明から始まりました。


6・7月号は「感性を育てる色彩の調和」。8歳頃までの環境で育つと言われる色彩感覚。保育室内の色彩環境に、こだわりました。色彩分析で、色の調和が良いと評価された園の写真を使っています。


8・9月号は、「子どもだからこそ、本物を」

保育室には、遊びの素材と道具があふれ、子どもたちの遊びが残り、絵本が並べられていれば、それだけでもにぎやかで、壁に飾りは不要なはずです。しかし、どうしても飾りたい場合には、本物の季節飾りや、野菜や果物や木の実などの自然物や、絵画や写真などの本物を飾りましょうと、具体的な提案を行いました。

乳幼児の環境は幼稚でいい、と誰がいつから考えるようになったのか。
色画用紙の壁面飾りから、子どもたちは季節感を本当に感じとっているのか。
色画用紙の飾りは、子どもたちの豊かな感性を本当に育むのか。
幼稚な環境で育った子どもたちは、将来どのようなものを志向するようになるのか。
多忙な保育者が、貴重な時間を使って、飾りに時間を割く必要があるのだろうか。
さまざまな園で先生方から環境構成の意図について話を伺い、認知心理学、環境心理学などを読む中で、これらの疑問が大きくなりました。

壁面製作を環境構成と呼んでいたり、保育者の技術と言われることがあります。しかし、雑誌を真似して壁面を作ることは、子どもの発達や保育の原理などを知らなくてもできます。保育者の技術と呼べる環境構成は、子どもの活動を想定したものであり、その前提に、保育の専門知識があるものを指します。


次回の予定は「自然をとりこむ」。まち中の保育所、駅前保育所などが増え、子どもが育つ環境は貧しくなるばかりです。しかしビルのなかでも、屋外の豊かさの要素を取り込むことはできます。屋外へ出られない、自然物をさわれない地域がある今だからこそ、屋内に自然物と自然の要素を取り込む提案をしたいですね、と神崎さんと話しています。

環境構成の理論については、園と家庭をむすぶ「げんき」エイデル研究所で、連載中です。次号には、保育士のコンピテンシー(力量)リストを掲載します。

げ・ん・きに連載、松井和氏の「親心を育む」2013/05/10

園と家庭をつなぐ げ・ん・き 137号 (エイデル研究所)が届きました。



ありがたいことに、「げ・ん・き」には、環境構成の「理論」を連載させていただいています。

先日の授業でも学生に、「保育には正解はない。けれど原則はあります。理論は、実践の骨組です。理論という軸をもつことで、保育者はより自由な実践をすることができるのです」と熱く語ってしまいました。(学生たち、なんか堅物の教員がやってきたと思っているだろうなあ・・・)

私が理論を書けるのは、「げ・ん・き」が読み物中心の雑誌だから。園でこの雑誌を見かけると、(おっ、この先生は本が好きだぞ!)と思ってしまいます。


さて、私が「げ・ん・き」で、いつも一番最初に読むのが、松井和氏のエッセーです。
松井和氏は、こどものともを創刊された松井直氏のご子息であり音楽家です。

実は私、松井和氏の講演を、福岡で三回、聞いたことがあります。その内二回は、講演の主催者側として。
主催した一回目は、専門学校の学生たちが「ぜひお話を聞きたい」と手紙を書き、実現した講演会でした。

もう一回はひだまりの会で企画した子育て中の親向けの講演会でした。中央市民センターの大ホール中が爆笑につぐ爆笑。講演が終わった後、ママたちが背筋をぴんと伸ばし、はれやかな顔で帰っていく姿が忘れられません。松井氏の講演は、社会から取り残されたような不安を抱きやすい専業主婦に、誇りと自信を与えてくれる内容なのです。私は、子どもを預けて外で働いた母ですが、やはり手をたたいて大笑いしました。(人によっては違うらしいです)

今月のエッセーも、松井氏が吹く尺八の音のように、腹の底にずっしりと響いてくる内容です。
私は、家庭養育の現状から、親が家庭で子育てをすれば、自然に親子がかかわりをもつというのは、もはや幻想にすぎないのではないかと思うことがあります。松井氏は、園による保育と家庭養育をつなぐ実践として保育体験を勧めておられます。

明日から保育学会。うれしいことに福岡市の中村学園大学です。

映画ベイビーズがDVDで発売!2013/05/04

埼玉県民になって、初のゴールデンウイークがやってきました。(拍手)
浜松では、たこが揚がっているだろうなあ。博多ではどんたくの季節ですねえ。

                   2010年の浜松まつり、初めて練りを見たときにはびっくりしました。




さてモンゴル、ナミビア、アメリカ、日本の4か国の赤ちゃんの育ちを描いた映画「ベイビーズ」が、DVDで発売されました。アマゾンで今、2,953円。
仲間たちとおしゃべりしながら見たいDVDです。
http://babies-movie.net/

アマゾンで、外国映画のドキュメンタリーベストをながめていたら、購入したいDVDばかり。
「キング・コーン」(タイトルだけで中身が想像つきますね)、「フード・インク」など、食の問題に関するドキュメンタリーがかなりベスト50に入っていました。マイケル・ムーア監督のアメリカの医療保険制度を取材したドキュメンタリー「シッコ」も、今見たい映画ですね。
若い人たちと話していると、けっこうオカルト、恐怖映画好きがいますが、ドキュメンタリー映画もかなり怖いですよ。だって現実だもの。ポテトチップスとコーラを準備して、怖さ倍増にしながら見るのがいいかも。

私は原稿書き中。日曜日の夜までワード以外は絶対に開けないぞ!と決めると、なぜかブログを書きたくなります。ほんと悪い癖です。。。

新年から環境構成の連載がスタート2013/01/13

                
1月から、環境構成の理論を解説する連載が始まりました。


「園と家庭をむすぶげ・ん・き」135号  エイデル研究所 2013

ここ数年、さまざまな園で学びをいただきました。
そして、その多様な保育に共通する実践の骨組みを研究してきました。
このコラムで、先生方へ少しずつ理論をお返ししたいと思っています。

環境を構成する技術は、前提となる専門知識と技術が多い技術です。
平成22年にまとめられた保育士の養成課程の改正では、環境構成の技術を、「保育表現技術」、「乳児保育」、「障がい児保育」で教えることが養成校に通知されました。(保育の内容と方法を教授する科目には、ほかに「保育内容総論」「保育内容」がありますが、残念なことにそれらの科目には示されていません)

今後、各大学・専門学校で「環境構成」を学んだ学生たちが卒業していきます。
日本保育学会や全国保育士養成協議会でも、養成校の環境構成の授業実践が出てくることでしょう。楽しみです。

専門知識という根拠に基づく実践へ。
はいまわる実践から、骨のある実践へ。
保護者に対しても小学校の先生方に対しても、堂々と保育を語ることができる保育者に。
そして本当に誇りと使命感をもった保育の専門職集団へ。

保育のナイチンゲール運動は、はじまったばかりです。

多様性の尊重は指針にはなかった?2012/08/23

 
ひざしは夏で、風は秋。 もう8月が終わりそうです。ああ原稿の締め切り・・・。


ある保育の本を読み返していると、ふと写真に目がいきました。壁に張られた子どもが描いた絵が同じです。
またか、といつもなら見過ごすところですが、昨今のご時勢からか気になります。

幼児教育で、「みんな同じであることがいいこと」あるいは、「みんな同じでなければならない」という価値観を知らず知らずのうちに獲得させているとすれば・・・人の違いを見つけては、嫌ったりいじめたり排除しようとする行動の陰に教育ありとは考えられないだろうか。「違うことは悪いこと」という価値観は、どこで獲得したのだろう。

集団生活のなかで、お父さんがいない子もいるし、おばあちゃんがいない子もいるし、片足が短い子もいるし、行動がゆっくりの子もいるし、肌の色が違う子もいるし、食べていいものが違う子もいるし、という人間の自然な多様性に気付き、みんな違うのが当たり前に感じることができるようにと、意図的に保育内容を組んでいる園も多くあります。けれど違いに気付かせない、あるいは違いを許さない、全員同じ物でないといけないといった仕組みやかかわりも、実は多いのかもしれません・・・。


さて、私自身は海外で暮らしたこともなく経験がとても狭い人間です。自分の経験を補うために本を乱読しますが、ホームページで保護者や保育者のエッセーを読むのもまた勉強になります。

〇世界の多文化子育てと教育の充実したコラムを読めるのは、愛育ネット⇒子育て支援の実践⇒世界の多文化子育てと教育

〇保育園での異文化体験エピソードをホームページで紹介しているのは、全国私立保育園連盟。

〇外国人保育の手引、英語版、ポルトガル語版、スペイン語版等を、頒布しているのは日本保育協会。



                         ポルトガル語バージョンです。

                 保育者が保護者と連携をとるために必要な内容がまとめられています。


違いを直そうとすることから違いの尊重へ。次の指針や要領には「国籍や文化の違いを認める」を超えた「多様性の尊重」を入れたいものです。ああ、やらなくてはならないこと、やりたいことが多すぎる・・・まずは締切の原稿を書きます。

ベイビーズに描かれた日本の子育て2012/08/20

土曜日は、卒業生との飲み会でした。すっかり先生らしくなった姿がまぶしかったです~。

先日、社会人学生の松井さんに教えていただいて、映画「ベイビーズーいのちのちから」を見てきました。
アメリカ・アフリカ・モンゴル・日本の四人の赤ちゃんの一年間を、ギュッと1時間半に収めたドキュメンタリーです。
「ベイビーズ」公式サイト
またはユーチューブでは、予告篇を見ることができます。

「あり余るほどの可愛さが画面いっぱいに広がる赤ちゃんムービー」のはずだったのだけれど、ああ、専門家の性というか・・・複雑な気持ちで映画館を後にしました。

四人の赤ちゃんは、思わず声が出てしまうほど可愛いのです。
日本はごく普通の子育てでしたが、映画でピックアップされた場面は、
仕事の電話に夢中のお父さんが、ガラガラで赤ちゃんをいい加減にあやしている場面(笑)だとか、
ショッピングセンターの刺激の洪水の中をベビーカーに入れられて移動する場面だとか、
シースルー張りの動物園の檻の前にベビーカーを置かれ猛獣が近づいてくるたびに泣く姿だとか、
達成感が得られないおもちゃと格闘してかんしゃくを起こしている場面だとか、
マイクを使ったテンションの高い親子遊びの場面だとかで、
まあ見事に日本の特徴を捉えていました。芸術家の感性は実に鋭いものです。

日本の子どもたちは、不自然で強い刺激を与えられすぎている、この環境では子どもは自分を閉じないとやっていけないかも、とつくづく思いました。感受性の強いお子さんにはつらい環境ですね。

日本の子育て環境に、赤ちゃんの姿に合うおだやかで自然に満ちた環境(たとえば日本家屋や縁側、のんびりと時間をすごせる木陰のある公園、静かでゆったりとした子育て広場など)が少なすぎるのか、それとも大人が不安だから刺激を与えようとするのか・・・。自然や人とのつながり、かかわりで幸せを感じる次の世代を育てるには・・・。

この映画は、子育て文化や子育て支援の視点で、皆で見て話してみたい映画でした。
川崎や東京他ではこれから上映されるようです。

                   浜松ジオラマファクトリーにて(撮影許可作品)